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中村真生子の部屋  〜 投稿順表示 〜


[1] スノードロップ〜希望の花
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山桜の落ち葉を突き破って
芽を出しのは
スノードロップか。
   ◆
楽園を追われた
アダムとイブの苦しみに
追い打ちをかけたのは
降りしきる冷たい雪。
震えながら泣き悲しむイブに
天使は語りかける。
「いつまでも冬は続かない。
いつか春がやってくるよ」と。
そして天使が雪に触ると
白い可憐な花になったという。
二人の暗い絶望を
明るい希望に変えた花、スノードロップ。
   ◆
また降り出したボタン雪。
けれど、庭のかしこで春の息吹。
「いつまでも冬は続かない。
もうすぐ春がやってくるよ」と。

2012/01/30 (Mon)

[2] ロウバイの花
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ほんとうに久しぶりの青い空。

まだところどころに雪が残る

温泉街を抜けて

いつものカフェに向かう。

風は冷たいけれど

空は青く美しく…。

ふと見上げるとロウバイの花。

山茶花の赤や白ばかり目につく通りで

眩いばかりの黄金色。

咲いていたのは

廃業となった旅館の玄関先。

いつの頃から誰のためともなく

花弁をほころばせることが

常となってしまったロウバイたち。

今年もひっそりと

けれど楽しそうに咲き誇る。

美しい花を咲かせたことより

美しく咲こうとした自分を愛しむように…。

2012/01/31 (Tue)

[3] 響き
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風の怒りか。

海の嘆きか。

ゴーゴーと音が鳴り響く。

高みからか

地の底からか

ゴーゴーと音が鳴り響く。

けれど

こんな日にも

人はやってくる。

風の怒りと海の嘆きが

ひときわ激しく渦巻くここへ。

心の凪に

出会えるかのごとく…。

ゴーゴーと音が鳴り響く。

あなたの中で

わたしの中で…。

2012/02/01 (Wed)

[4] 嘆きの海
詩人:中村真生子 [投票][編集]

冬の海よ

なぜそんなに嘆くのだ。

白しぶきを天まであげて。

眩い光に満ちた

春が愛しいのか。

爽やかな風が走る

夏が愛しいのか。

思い出が静かにこだます

秋が愛しいのか。

冬の海よ

なぜそんなに嘆くのだ。

白しぶきを天まであげて。

いいえ、春が愛しいわけではあません。

いいえ、夏が愛しいわけではあません。

いいえ、秋が愛しいわけではあません。

こうして嘆かざるを得ない

冬が愛しいくてたまらないのです。

2012/02/02 (Thu)

[5] 想い舟
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空(くう)を漂う

小舟が一つ。

あてどもなく漂う想い舟。

ゆらゆら揺れて

導かれ…。

内(うち)を漂う

小舟が一つ。

行き場なく漂う想い舟。

ぐるぐる回って

ため息吐息…。

心の川を流れる想い舟。

揺られて笑い

回って泣き…。

心の川を漂う想い舟。

運ばれし先で出会うのは

自ら植えた想いの果実。

2012/02/03 (Fri)

[6] この道はどこへ
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吹雪いていた雪が

ぴたりと止んだ。

積もった雪の上を歩くのは

いつもより何倍も疲れるが

ありがたいことに

冷たいけれど穏やかな闇に包まれる。

暑くなってきて

コートの前を開ける。

町に入ると歩道の雪がかかれており

その上を導かれるように

そこへと向かう。

千回以上は通ったその場所へ。

初めの頃は建物をめざし

やがてそこにいる人をめざした。

今はただそこへと向かう。

すでにそこにいる自分を

体が追いかけていくように。

雪道をそこへと向かう。

膝近くまで埋もれ歩いたありし日を

懐かしく思い出しながら。

そこへと続くこの道は

それからどこへと続くのだろう。

2012/02/04 (Sat)

[7] 青空の千木(ちぎ)
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暖かな車内で
本を読みながらうとうと。
「ふぁ〜あ。ふぁ〜」。
隣のおじさんの大あくびに
目を覚まして
窓の外を眺めれば
二筋の飛行機雲。
神社の千木のごとく「X」を
青い空に描き…。
ここが神の住処と
言わんばかりに…。

2012/02/04 (Sat)

[8] 冬空の下で
詩人:中村真生子 [投票][編集]

カモメたちは
空に書かれた音符が
見えるに違いない。
ほら、なぞるように飛んでいる。
ススキたちは
風が振るタクトが
見えるに違いない。
ほら、リズムに合わせて揺れている。
子どもたちは
天からの白い手紙が
読めるに違いない。
ほら、嬉しそうにはしゃいでる。

2012/02/04 (Sat)

[9] ポケットの卵
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フリースのポケットから

卵を取り出して

「こんなところに卵が…」とキミ。

「いつから入れていたの。

もう食べられないかも」とワタシ。

「さっき入れたんだよ」とキミ。

「なあんだ、ウケねらい?」とワタシ。

おかしいと思えたのは

食事も終わって

食器を洗っているとき。

キミの一連の行動に思いをはせ

ワタシはクスクスと一人で笑う。

そんなふうにあとから気づくのだろう。

それがかけがえのないひと時であったことに。

思い出のアルバムをめくるように

時のアルバムをめくりながら…。

暦の上ではもう春。

けれど、体に届くまではまだもう少し。

今はまだポケットの中。

一個の小さな卵のごとく…。

2012/02/05 (Sun)

[10] 一瞬が旅のごとく…
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天を仰いで

地を仰いで

風を仰いで

人を仰いで

自らに戻る。

一日が旅のごとく…。

喜に煽られ

怒に煽られ

哀に煽られ

楽に煽られ

自らに戻る。

一瞬が旅のごとく…。

2012/02/06 (Mon)
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