詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
緑の葉陰に
赤い実と黄色い実。
赤い実は
元気のお守り。
黄色い実ば
幸せのお守り。
今年も
垣根に実った
おいしいお守り。
そっともぎ取りほおばれば
梅雨曇りの空の下
夏がにわかに愛おしく。
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待ちぼうけ
待ちぼうけ。
けれど夕焼け空は美しく
この空を
待っていたことを思い出す。
待ちぼうけ
待ちぼうけ。
けれどそよ吹く風は心地よく
この風を待っていたことを
思い出す。
待ちぼうけ
待ちぼうけ。
なんて幸せな待ちぼうけ。
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静かに目を閉じ
歩いてきた道のりを
振り返れば
道の途中が
陽だまりのように温かく…。
静かに目を閉じて
歩いてきた道のりを
振り返れば
そのありがたさが
少し深いところでありがたく…。
静かに目を閉じ
振り返えれば
薄闇の中で
心の窓が開いていく…。
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彼らの悲しみは
昨日の私たちの悲しみ。
彼らの悲しみは
明日の私たちの悲しみ。
彼は歌う
悲しみが癒されるよう。
彼は歌う
悲しみが喜びに変わるよう。
彼の歌が森に響く
神々の住む森に…。
彼の歌が大地に響く
血と涙に染まった大地に…。
「カンタ(歌え)! ティモール」。
世界に
新しい夜明けを
告げるために…。
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人間が言うところの太古に
父と母は5人の子どもを産んだ。
母はすべてを与え
父はそれぞれを導いた。
人間が言うところの
時が流れている間
木はいつも詩っていた。
父と母のことを…。
けれど木は切り倒されて
詩を忘れた者たちは
きょうだいたちに刃を向けた。
直接的にあるいは間接的に。
残された木は詩う。
「父はひとり、母はひとり」と。
だれもが
母なる海と父なる太陽から
生まれたきょうだいなのだと。
伝え聴いた男は詩う。
東ティモールの森のそばで。
「父はひとり、母はひとり」と。
それ以上はなく
それ以下もないという
澄み切ったまなざしで…。
傍らで子どもたちが
笑ながらその詩を聴く…。
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明るい笑顔と元気な声と…。
彼女がやってきて
みんなの心が輝いた。
彼女は
あふれんばかりのエネルギーで
自ら楽しみ
みんなを楽しませた。
通りの花壇の向日葵は
まだ固い蕾だったのに
もう向日葵を見た気がした。
太陽に向かってすくっと立ち
満面の笑みを向ける向日葵を…。
彼女は
確かに向日葵だった。
私の心に
夏の太陽を連れてきた。
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それは
一瞬の出来事だった。
彼は笑った。
取り繕う間もなく
気持ちを放って…。
初めて見る彼の笑顔は
完璧な笑顔だった。
どんな厳しい審査員も
10点満点を出すような…。
彼は笑った。
世界でいちばんの
幸せ者のように…。
心のシャッターを切った。
その傍らには
笑顔がもう一つ…。
今こそ言おう。
「おめでとう」と。
心よりの祝福を込めて…。
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互いが互いのそばに
たた佇む
庭の花たちよ。
心の笑顔を絶やさず
互いが互いのそばに
ただ佇む
人々のように…。
仰ぎ見れば
青い宇宙ときらめく光。
緑の草木も喜びぬ。
今ここにある奇跡を…。
互いが互いのそばに
ただ佇みながら…。
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山を離れた石は
勢いよく転がり始めた。
尖った角が山肌にぶつかると
思わぬ方向に転がり
違う角をぶつけた。
そしてまた思わぬ方向に転がり
また違う角をぶつけた。
石は飛び跳ねるように
転がっていった。
「なんて気まぐれなやつなんだ」
見ていた木が言った。
石は痛かった。
石はいろんな角を
何度も何度もぶつけた。
やがて角は角でなくなり
石はころころと
気持ちよさそうに転がった。
もう痛みを感じなかった。
あの夢のような日々が
そうさせてくれていることを
石は知っていた。
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早いもので
今日で1年の半分が終わる。
明日から後半の始まり。
「もう半分しか残っていない」。
「まだ半分残っている」。
“半分のグラスの水”に
想いを馳せながら
残りの時に想いを馳せる。
「もう半分…」。
「まだ半分…」。
注ぎ足すことのできない
グラスの時に思いを馳せれば
残りの時がゆらり輝く…。
ロンドン塔のダイヤモンドのように…。