詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
雪を、風を、日照りを
受け入れることで
大きくなっていく木よ。
振り返れば
その何一つ
無駄なことはなく…。
悲しみを、苦しみを、怒りを
受け入れながら
大きくなっていく人よ。
振り返れば
その何一つ
無駄なことはなく…。
互いが互いを
受け入れながら
大きくなっていく人よ。
振り返れば
そのすべてが
ありがたきときなり…。
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ギリシャのオリンポス山で
光を集めて作られし聖火。
手から手へと渡されて
ドーバーを越えてロンドンへ。
そして
選手たちの
支える人たちの
応援する人たちの
傍らで
燃え続けた聖なる火。
すべてが終わり
消えていく…。
一つのいのちが消えるように…。
けれど
新たな希望の火となって
それぞれの心に受け継がれ…。
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1年ぶりに会った友と
店を出ようとすると
車軸を流すような雨。
雷も鳴っている。
小降りになるのを待つ。
同じように待っている人と
言葉を交わせば
聞きなれないイントネーション。
熊本から旅行で来たのだという。
年の頃も近く
井戸端会議よろしく
扉の前で話が盛り上がる。
遠方に帰る友の時間もあり
三度扉を開けると
やや小降りに。
雨の中を縫って
互いの場所へと向かう。
数十年来の友との
初めて会う人との
つかの間の出会いと別れ。
雨の中に咲く花のごとく…。
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同じ頃
同じ所に生を受け
ともに学びて後
それぞれの道を歩み
今ともに集う。
あるものはすぐ近くから
あるものは遠く海外から。
語り合うもよし
歌うもよし
ただ一緒にいるもよし。
ともに過ごした
学び舎でのように…。
すでに旅立った友の
冥福を祈り
元気でリオの年に
再び集うことを誓い合う。
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入道雲、いわし雲、筋雲…
夏と秋がせめぎ合う空で
雲の遊戯に
魅せられし翌朝
目覚めると窓の外には
真っ青な空。
夕べの雲はいずこへ。
夕べの楽しみはいずこへ。
久遠の空に問えば
言葉が青にとけていく。
海に立てた
小さな泡(あぶく)のように…。
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その夜
確かに聴いた。
山に棲むものの声を…。
その夜
確かに触れた。
山に棲むものの体に…。
灯に導かれ山に入り
木立の中に佇みながら…。
その声は
山に響き渡り
心に響き渡った。
その体は
山を包み
心を包んだ。
夏の終わりの夜の山で
至福に出会う。
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お盆が終わり
それぞれが
それぞれの場所に還る。
一抹の寂しさの中に
それぞれが
あるべきところに
還ることができた
喜びを知る。
ツクツクボーシが
鳴いている。
季節の歯車を
回すように…。
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口で語る…
胸で語る…
腹で語る…
足で語る…。
口で語られた言葉は
耳に響き
胸で語られた言葉は
心を震わせ
腹で語られた言葉は
背中を押し
足で語られた言葉は
手を取る
ともに歩もうと…。
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風は教えてくれる
心にも風が要ることを。
時折、気持ちの良い風を
フーッと吹かせて…。
心の風はどうして起きる?
きっと相手の立場に
なろうとすることで起こる。
気圧の差が
風を起こすように…。
風は教えてくれる
心にも風が要ることを。
時折、気持ちの良い風を
フーッと吹かせて…。
心の風がフーッと吹けば
湧き上がった雲は消えていく…。
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窓辺の光に誘われて
川土手まで出かけてみる。
見上げれば満天の星。
天上で一際明るく輝くのは
夏の大三角形。
うっすら雲のように
横たわる天の川。
海を挟んで
北斗七星とカシオペア座。
遥か彼方から
旅してきた光たちを
人は名付けて迎え入れる。
その偉業に想いを馳せながら…。
人もまた時の旅人なればこそ…。
*夏の大三角形=こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブ