詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
外はもう暗いけど
カーテンを開けていたい
春の宵。
昼間見た
咲き誇る桜に
酔いしれながら…。
その下で
重ねてきた日々に
思いをはせながら…。
外はもう暗いけど
カーテンを開けていたい
春の宵。
心ほの白い
春の宵。
闇に浮かぶ桜のように…。
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「美しい、美しい」と愛でられて
花は歌う。
朗らかな声で…。
「私は確かに美しい。
けれど
私を咲かせているのは
根(祖先)であり
葉茎(家族)であり
師(太陽)であり
友(雨や風)であり
あらゆるご縁です」と。
「美しい、美しい」と愛でられて
花は歌う。
愛でるものの心に
自らの胸の内に。
あらゆるご縁を愛おしむように…。
この永遠の瞬間に。
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海も空も山も灰色で
風もなく
なにもかもが
眠っているような花曇りの日。
庭に出ると
かわいいあくび声が一つ。
朝まで蕾だった
チューリップが咲いていた。
眠りから覚めた
童のように
あどけない頬を桃色に染めて…。
あらゆるものの
眠りの中で生まれた
チューリップよ。
さあ、たくましく花開き
仲間たちを目覚めさせよ。
最初に目覚めたものの役割として。
そして皆と
庭に春の息吹をもたらせ。
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満開の桜の園を歩く。
ここは個人の所有地で
桜の時期だけ日没まで解放される。
他に人はひとりしかおらず
街の中にあって
ひっそりと静寂に包まれていた。
多くは染井吉野と伊豆吉野の古木。
そして、その枝という枝に
その枝の先の先までびっしりと満開の桜。
全身が花と化し
桜は今、どんな気持ちで佇んでいるのか。
何かわかりはしないかと
そっと幹に手を当ててみる。
すると、ぼろぼろになった樹皮が
手のひらをちくりと刺した。
どの木もどの木も…。
それが返事であるかのように。
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雪や所用で
のびのびになっていた
出雲大社へ初詣に行く。
以前はちゃんとお正月に行っていたが
母も年を取り
寒さや人ごみがこたえるようになり
最近は行けるときに行くようになった。
去年は3月
今年は4月になってからと
今までいちばん遅い初詣だけれど
こうしてまた
みんなで来られたことを
神様に感謝する。
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幼子は
花びらを集めていた。
ビニール袋いっぱいに。
「何をするの?」と聞くと
「ぱあっとする」のだという。
おばあちゃんの手と
ビニール袋を握りしめて
よちよちと山の上の方に登っていった。
きっといちばん高いところで
ぱあっとするのだろう。
桜にそんな楽しみがあることを
幼子に教えてもらう。
咲き誇る桜だけでなく
散った桜にも
楽しみがあるのだよと…。
ずっと面白い
楽しみがあるのだよと…。
1年に1度
薄紅色の雨が降る季節に。
あの子の小さな手からも
薄紅色の優しい雨。
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花吹雪舞う道を
カラフルなサイクルジャージを
身に着けた
自転車の集団が通り過ぎていく。
今年も夏の使者がやってきた。
彼らは週末ごとに数を増やし
そのたびに夏を連れてくる。
暑くて熱い夏を。
そして7月
一発の号砲が夏空に響く。
それを合図に彼らは
使者としての衣を脱ぎ捨て
王として走り出す。
沿道の人々からの祝福を
一身に受けながら…。
スイム3.8q、自転車180q、ラン42.195q
という夏の王にふさわしい
途方もなく険しく辛い道のりを。
*第32回日本トライアスロン皆生大会は7月15日(日)
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山笑う。
キミよ
4月の山のように
朗らかたれ。
地歌う。
ワタシよ
4月の大地のように
大らかたれ。
キミとワタシ
山と地のように
二人で一人。
キミとワタシ
山と地のように
一人で二人。
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今、庭でいちばん勢いがあるのは
カラスノエンドウ。
ピンクの小さな花が咲く草花だ。
その繁殖力にはすさまじいものがあり
確実にテリトリーを増やしつつある。
抜かなければと思っていたところ
“バラは雑草と育てよう。
カラスノエンドウは土壌改良に欠かせない。
絶対抜かない大切な雑草”という記事が目に留まる。
確かに伸び放題のカラスノエンドウの中で
バラばかりか
ムスカリやハーブ類も元気に育っている。
虫を食べてくれる七星てんとう虫の姿もちらほら。
雑草は土を耕し、有機肥料を供給し
枯れるとマルチングや肥料の効果もあるという。
ドクダミやクローバーやナズナもしかり。
きっと草花たちは
寂しがり屋だったり
おせっかい好きだっりするのだろう。
だからきっと仲間といると元気になるのだろう。
私たちがまたそうであるように…。
そんなわけで今年は雑草ガーデンにトライ!
草取りをさぼろうというわけでも
半分ありますが…。
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想いがゆらぎ
互いのゆらぎが重なって
重なりの密度が増し
今日もかしこでビッグバン。
それぞれの
新しい物語が紡がれていく。
偶然のように。
けれど
時が経ち
振り返れば
そこに
ゆるぎなき必然の道。