詩人:老女と口紅。 | [投票][編集] |
‐オリビアの瞳‐
私の名はジョニー
船乗りで海添いに
小さな店を構える
酒場のマスター
波が静けさを取り戻す頃
看板に一つ明かりを灯す
今宵も気の合った仲間達が一人
また一人とやってくる
やぁ
いらっしゃい
馴染みの客、リク
カウンターの右端は彼の指定席
イカツイ体の左腕にはイカリの彫り物
彼の自慢の入れ墨さ
船乗りには
葉巻に水割り
みやげ話があればいい
酔いがまわれば彼は
同じ話を何度もするんだ
イタリアの海の青色は
最高だぜっ‥ てね
そしたら私も決まって
こぅ 答えるのさ
船旅の途中で拾った女
オリビアの瞳より澄み切ったブルーなど
この世には存在しないのさ‥ と
明日からまた旅に出る
小二階にある
小さなベッドに
オリビアを一人残して‥
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今宵の月夜が二人の
失った軌跡を照らす
一度無くした
二人の時間‥
あなたと二人寄り添って
指先絡めてなぞる砂浜
振り向かないで‥
思い出の金貨は深海へ
あふれ出る涙は
海へこぼさない‥
眠れる詩姫のように
髪飾りを付けたまま
抱き合って
二人砂浜に沈めば
波が僕らを
新たな船出へと
誘ってくれた
さぁ
夜が明ける前に‥ と
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恋は
見えない
クモの糸
うかつに
あの子に近寄ると
怪しい魅力に
とりつかれ
絡め採られてしまう
気をつけな‥
あぁ、だけど
変なこと言うなよ
俺 明日もあの子と
デートなんだ
なぁ、最近のお前
随分と
痩せたんじゃないのか?
そうだよな
毎日の外食は当たり前
休日なんて毎回お出かけ
でもって
プレゼントは欠かさない
もぅ ヘトヘトだよ
僕にはもぉ
彼女に与える物など
何も無いんだ‥
けれど彼女は
ねだるんだ
その仕草が
たまらなく可愛くて
そしてまた
無理をしてしまうのさ
そう言って笑いながら
力尽きた僕は
地面にポトリと落ちた
震えながら
かすむ目で
上を見てみる‥
するとそこにはまた一人若い男が
あの子に絡め採られてた
恋は
見えない
クモの糸‥
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月の欠けた夜に抱く
お前の胸に我
溺るるも癒されぬ心
うつろう想い
遠き日に失いし人の
ぬくもりたぐりつつ
夜露に濡れる花びら一つ
快楽に墜ちいるも
心 ここにあらず
我の古里は
あの日あの時の
あの子の唇‥
なんびと抱けど
さまようままに
月 満ちる事なく
我 果てる事なく
不実に
一筋の涙が
頬をつたう‥
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朝 一番にぴーちくと
鳴き狂う雀の子
斜光 厳しく 目蓋は重く‥
出された味噌汁など
じっと見つめてもみる
漆の椀は大正浪漫
椀内から揺らめき出ゆる煙は熱々の証
覗き込む先に見えるは赤茶けた羊水
母なる体内に白く浮かぶは角切り豆腐
エメラルド・グリーンは刻みネギ
青きその身を揺らすは北国のワカメか‥
存分に目で味わう
見てよし‥嗅いでよし‥
この時ばかりは
温かい白いメシ、
ダシ巻き玉子に韓国のり
厚切りの紅ジャケさえも脇役へと‥
ごめんよ‥
君を
只の味噌汁と思ってた
違うんだね
君は僕の LIFE
そのものだったんだ
目からこぼれ落ちるは感謝の雫‥
ほら 感動でハシ先も震えているよ
今日は揚げさんが入ってなくても‥…いいんだ
君の大きな存在に気づいたんだ
もぅ残さない
残したりするもんか‥
でも
白じゃ駄目なんだ
赤でないと
赤味噌でないと‥
あぁ‥
僕は
赤味噌さんしか
愛せないんだ‥…
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祈り
闇夜にまぎれ断崖絶壁へと歩み立つ
何度も我身を岩肌にあてる波
砕け散る力に一筋の涙
我の閉ざした心の鍵をくわえ逃げ去る青い鳥
両腕を大きく広げ天を仰ぐ
瞳を閉じ 南へ急ぐ北風を全身で受け止めてみる
指先から擦り抜けて行く時空 無量‥
我の歪んだ欲望がメッキの如く剥がれ落ちてゆく
と
同時に灯台から放たれる 閃光
我の魂を乗せ
天空を
宇宙を
貫くその先に
一瞬 人類の未来
千年先を見た気がした
祈りはいつ
平和へと
形を変えるのだろうか‥
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日の当たらない
他人の後ろばかり
歩く君
幸せはいつも前の人
それでも
笑顔は絶やさない
君は
あなたが幸せなら
それでいいと
笑顔で返す
幸子‥
恋をして
勇気を出して
差し出す右手も
いつも
すれ違うから
君は
いつからか
泣き顔笑顔で
人の
影踏み
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今年もまた
暑い夏が終わる
少女は街に出て
女になれたのだろうか
彼女のひと夏
ほろ苦い季節が
アスファルトに転がる
セミの死骸と共に
終わりを告げる…
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ラララ
どこかで
聞いた
言葉だって
どこからか
借りてきた
言葉だって
歯の浮く
セリフだって
いいじゃないか
僕は
詩うんだ
君への想い
沢山つづってみたよ
小脇一杯に
だめ詩かかえて
月夜の
浜辺に
歩いて
行くさ
ラララ
ラララ‥
月
風
波
よ
あの子に
届けて
おくれ
海へと
ひざまづき
そっと
ここに
浮かべて
おくから
もぅ
振り
向いたり
しないから‥