詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
きらいで
いきてきては
いないから
ちいさなまどのなかには
わかりやすい
いいわけにかられ
いためつけあいたい
ひとびとのかげり
まわりくどい
もじのられつより
いいわけもいらないけつにくに
ぜんしんがたかなっていたい
ちいさなまどをひらいて
とびおりちゃいけない
なにもいらないふりして
だれかをうらみながら
ほんの
すうせんちめんたる
ようやく
まっかなあさやけとゆうやけが
たがいにむかえにむかい
みたされ
わかれ
ひかれあう
ありえないなんて
もう
だれかにまかせてしまえばいい
このんで
しにたい
わけでもないなら
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団地が近くにある
仕事からの帰宅途中
たぶん
団地の住人らしい
初老に近い婦人が
重そうな買い物袋を手に下げ
家路を歩む様子を
運転席の車窓から見かけると
他界した母の事が思い出されて
どうにも
車に乗せたくなる
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いつか
暖炉のような詩を詠んでみたい
ログハウス
そこには皆があつまる
しっかりと蓄えられた薪
そのかたわらたには
乳を貪るように吸う何匹もの子犬達を暖かく抱く母犬が横たわっていて
パチパチとたまに薪の焼ける音がする
コーヒーでも紅茶でも、ココアでも好きな飲み物をマグカップに入れて
誰かはテーブルの前の椅子に腰掛けながら、誰かは床で毛布にくるまりながら、あるいは立ったまま
皆、誰かの話しを
時を惜しまず、ただ静かに噛み締めるように聞き入っていて
なにげに、窓の外へと目をやると
白熱電球の灯りが冷たいガラスの向こう側の景色に降る雪を一瞬だけ、幾度となく照らす
耳を澄ますと
語り手の話す言葉の隙間を縫うように
外のもみの木の葉が
風に抗う音も聴こえてくる
気がつけばもう
子犬達のお腹はパンパンだ
すやすやと寝息を立てはじめていた
柱時計の鐘の音が12度
ボーン、ボーン…と
夜のしじまに皆をたしなめるように
鳴り響く
それまで気にもとめていなかった振り子の音が妙に耳についた
暖炉に新しい薪をくべ直す
もう少し皆、暖かくしていってくれ
明日もまた早いけれど
夜はまだ長いのだから
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俺は瞬きたい
ごめんなさい
何つかぬはじめから
ないがしろをうらやみ
何かととどこおってきたころから
もうずいぶんたつ
水を飲みたい
きれいな水をかみしめながら
あたらしい
こうかい
しょっぱいうみ
のどがかわく
傷の痕がズキズキする
気がつかなかった
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ありがとうございます
ありがとうございます
どうもありがとうございます
すみません
すみませんでした
どうもすみません
庭にニラを植えていて
嫁は私の弁当の野菜炒めに
そのニラを使う
なのにカタツムリだ
会社から帰宅すると
玄関前の庭にある
花壇のニラに目をやると
カタツムリを毟り取り
殺すつもりで足元に叩きふせる
すみません
ありがとうございます
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誰か
しわくちゃをもっともっと
しわくちゃに押し包み
結論をまとめたなら
母ちゃんみたいに
あたりまえに
皆にしてくれ
俺は息子達が
俺ももういないあと
どうにもならない
何かのいいなりなる
そんな世代を見送ろうとしている
俺はつまらない
ひとりよがりの詩ばかり書いている
俺は尋ねたい
愛と書いて愛が伝わるか
死という文字で死の持つ影が見えるのか
翼があれば本当に飛べるのか
そのなごりで良ければ飛べなくても鳥として満足してられるか
連休明けの月曜日は死にたい気分の二日酔いの同僚を同じ気分でバックドロップしたくなる
水垂がどこまでも続く砂利道を
カンボジアの10歳の少女と性病でボロボロの母親が重い荷車を押して行く
死にたい気分なら
腐っても花か
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はじめまして
まっ白な日々に意図をもとめて
細さを無視して、出来るだけく黒く書き尽くす
なんなら嘘でも比喩でも
雪原を暴れる
@
会社からの帰宅途中
スーパーで買い物をして
ふと、駐車場の花壇に植えらた木にぶら下がる
コウモリをみかける
立体遊泳が始まる
いや嘘さ
そんな言葉ないよ
あればいいのに
いやただ、ただ俺は読み手に嫌気をさされ
お互いに始まればいい
コウモリの目はあまり良くない
なにもかもあまりよくわかならいのに
なにもかもよくわからない
もう、夕焼け
いらないのに
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だだっ広い畑の稲穂の穂先に
トンボが止まろうとして
降りた間際
そのまま真っ二つにさらりと裂けて
風にばらけた
君は「向こうへ行く」
と言った
僕は「そうか」
とこたえた
へしゃげたビールの空き缶を
90gのビニール袋に何袋もまとめ
売りに行く
大切なスターウォーズの前売り券を
縦に二つに裂いて
片方はわたし
もうこうかいしないうみに
ただよっている
おたがいの
はずだった
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貴方が面白いと感じられるのは
少し先を思い巡らす事に疲れ
柔らかい紙のページのはしを
徒労もせずに感じずめくった指先
ダイレクトな直感が虹と花咲く景色
誰しもいわれもない罪を
抱えながら
最果ての最寄りと
いいなずけの住む海底
誰も知らない近道を横切って越えていったバッタ
ほとんど一人で貸切みたいな映画館
もう運動会
ヒマワリの花びらをあしらったしおり
二十日大根の研究日誌
月の裏側の湖に着陸した亀船長
太陽から遠のいていく影の繰り返し
ホスピスで溜息をついた鶴監督
帰ったら
「玄関の草履をちゃんと並べてきちんと置きなさい」
比喩を囲み
皆で燃やそう
その灰を皆で舐め
分かち合おう
君を比喩し
明日を比喩し
比喩を比喩し
比喩の要らない比喩を比喩し合おう
また会う日まで
その時は
笑った方がいい
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蝸牛が庭のニラに縋り付いていて
すぐさま毟り取り
叩きつけるように投げ捨てる
殺す気持ちでやった
次男が
午前中には終わるはずのクラブの大会が
午後にやっと終る
知らない父母が息子を家に送り届けてくれた
心から感謝しなければと頭を下げた
長男は
中3で受験生なのだが
ただで貰った学習机についていた椅子が
あまりに安っぽい椅子で腰を痛め
今日、中古の椅子を3000円で買い求めたが
とても良い椅子で安堵した
株式会社になったばかりの古巣
息子と同じ椅子をもう一つ買い求めていたので
会社の経費で落としてくれるようにと
明日は事務員に頭を下げて頼み込むつもりだ
後何年こうして稼げるのか
そう思いながら椅子を眺めた