舞い散る
桜の花びらに
気を奪られ
我が身の変化に
気付かない
歪じ曲げられた
正しさだけが
近い未来
犯す己の
過ちを知る

髪を染めた
変われる気がした

ピアスの穴を開けた
変われる気がした

タバコを吸った
変われる気がした

タトゥーを入れた
変われる気がした

薬を飲んだ
変われる気がした

君に出会った
変われる気がした

君と交わった
変われた気がした

君と別れた
変わった気がした

禁忌を犯した
変わってしまった
本当の私は
こんなんじゃないと
戒めるかのように
彼女は彼女を傷つけた

自己啓発主義者の
彼はこう言った
僕が手を差し伸べるから
君は掴むだけで善いと
分ってないのね
私は動けないの

ガラス張りの上
しゃがみ込んでいる
下に見えるのは
視えない奈落で
所々ひび割れて
誰かが歩くと軋む
その中で
皆は平然と進む
恐くないの？

突然やってくる砂嵐
走るのはノイズ
彼の手も声も
かき消されて分からない
私はひたすら
危機が過ぎ去るのを
震えて待つだけ

自己啓発主義者の
彼はこう言った
皆恐いんだ
大丈夫
勇気を出して
僕の側においで
抱き締めてあげるから
分ってないのね
私は動けないの

何度も言わせないで

ベッドの上で愛を語るのが全てなら
ステージ上で必死に歌う僕は何だ

僕の爪が汚れていた
だから君は死んだ

そうならないよう
爪を切ったのに
次の日
車に轢かれて君は死んだ

訴えたい
誰一人悪くなくても
歌いたい
僕一人悪いとしても

一つになりたくて
一つになりかけて
一つになり損ねて

中心でどれだけ
君への想い叫んだって
周囲の熱狂に
飲み込まれ
誰の耳にも届かない

増える人込み
上がる悲鳴のような歓声
高層ビル最上階の部屋の
ベッドで横たわるのは
もう僕でも
君でもなく
二体の人形でしかないのに

崇拝していた人々は
偶像を疑い始め
首が百八十度回り
僕に背を向け襲ってきた

自我が崩れ落ちて
無我になる寸前
ゼロになる直前
一つになれた気がしたのに

部屋に帰るのは
いつも一人