詩人:猫の影 | [投票][編集] |
闇の向こう
庭の方かはわからぬが
りーりーりーと鳴いている
部屋の中かもわからぬが
りーりーりーと哭いている
どこにいるやらわからぬが
りーりーりーと闇の蟲
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ずっと花をつけないものだから
もう諦めていた
今年の夏咲いたその花は
赤く強く美しかった
きっと 大丈夫だよ
君は庭を眺めたまま呟いた
コップの中の氷の音が
カランと響く 夏の午後だ
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余計なことも
逃げたいことも
投げ出したことや
目を閉じたことも
どうしたって私のものだから
仕方ないよね
仕方ないなら楽しんじゃうしか、ないよね
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自分を殺せなかったあの日があって
裏切られた期待を呪ったあの頃があった
自分に優しくしてやれなくて
いつだってちぎれそうなくらい自分の首を絞めてきた
ぼくは笑いながら
笑うことをやめていた
軛から逃れ
ただ逃れ
走ることをまた始める
ぼくは今自由になる
今までの中で一番自由に
笑うことをもう一度はじめる
笑うことから逃げない
また笑おうと決心する
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思い描いた未来とはあまりにも
ほくそ笑んだ未来とはあまりにも
かけ離れた僕の世界を
僕は真正面から受け止めるのだ
傷つけたあの人も
傷つけられたあの過去も
愛してると言った
愛してると言ったはずだろ
でもそれはただの言葉だった
抱きしめたイマも
すがりついたソコも
諦めきれないアレも
それはただの言葉だったよ
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甘いスコッチが
舌の上で薫りだけ残して
去って行く
ピリリとアルコールが皮膚を焼いて
誤魔化すようにピーナッツ
ずっと好きだったみたいなんだ
貴方に言えればどんなにかいいだろう
ずっと好きだったんだ
言葉にできればどんなにか素敵だろう
隣で貴方は仕事の話
煙たいバーボンは
鼻腔の中をふわりとまわって
去って行く
胸を焦がすことも
貴方に触れることも
できないままにカラにする
ずっときっと好きだったの
言ったら全部おしまいになるよね
きっとずっと好きだったよ
だからこれからもずっと好きなまま
隣で貴方は女の話
ねえずっと好きだったよ
多分これからも好きみたいだよ
きっとずっと、
ずっときっと、
隣で貴方は笑ってる
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届かない人に恋をする。
届かないから失うこともない、
甘くて半端な、冗談みたいな恋。
傷つくことも傷つけることも、
満たされることも満たすことも、
何もない、ただ想いだけが、
ふわり宙に浮かぶ。
決して届けるつもりもない恋。
連絡が来て喜んで、
気遣われただけで舞い上がって、
頼られたら涙して、
顔を見たら幸せすぎて倒れそうで。
だけどそれも全部閉じ込める。
深く深く押し込める。
多分ずっと好きだけど、
言葉には決してしない、
してはいけない。
ただただ、胸の内にしまったら、
唇をキュッとかんで、
とりあえず今日を生きるのです。
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久しぶりに眠れた夜の
そのあとの朝は何だか気まずい
ただしとしとと
雨のように
涙が流れた
どうして人は
いつだって愚かで
いつだって醜くて
いつだって脆いのでしょう
そんなこと考えていたら
太陽が高くなっていた
夜を裏切ったような気がして
太陽と顔を合わせるのが気まずい
顔を洗って
鏡の自分に
笑いかけてみた
どうして人は
いつだって無邪気で
いつだって優しくて
いつだって強いのでしょうか
そんなこと考えていたら
また夜の帳が降りてきた
私はもう
夜に殺されても
それでもいい