詩人:朱雀 | [投票][編集] |
散りてなほ 濃き紫の 野牡丹に
風秋なりと 歌ひたれども
※「紫」は野牡丹の花の色と「紫の縁」をかけています。
紫の縁(ゆかり):あるものをいとしく思うために、それに繋がる他のものにも情愛を感じること。転じて何らかの縁で繋がるもの。(草の縁と同意)
通訳:吹く風はもう秋だよと歌っているけれど、散ってなお色鮮やかな野ボタンの紫の花びらを見ていると、その上に遠い昔の夏の思い出が今もまだ輝いているように見える。
一昨日叔父が鬼籍に入りました。
なかなか子供に恵まれなかった叔父夫婦は甥や姪をとても可愛がってくれ、朱雀も大切に愛してもらった記憶しかありません。
子供のころ、夏休みに叔父の家に遊びにゆくと面白いことや珍しいものを沢山見せてもらったり一日中遊んでもらったり、毎日楽しいことばかりであっという間に時間が過ぎてゆきました。
そして帰り際には必ず「もっと泊っていけよぉ〜。」と何度も何度も引き留めるので、最後はいつも母に引きずられるようにして帰ったのをまるで昨日のことのように思い出します。
朱雀は自分が作った詩や短歌をあとで読んでも特別感情的になることはないのですが、本当にただただ幸福な思い出しかない叔父のことを思いながら創ったこの歌が出来た時、初めて泣きました。
詩人:朱雀 | [投票][編集] |
雲居の空をも染め尽くす
薄紅に酔う桜人(さくらびと)
天与の美を愛(め)で
わが世の春と 思い違いの浮世を謳歌
浮かれ騒ぎの脇を抜け
遠(おち)の宴(うたげ)を眇め見る
わき道の坂に睡花(ねむりばな)
熱を孕んだ眼差しを
奪い取る気は さらさら無いと
零桜(こぼれざくら)に惜しみ顔
春のつれづれ消閑に
古(いにしえ)語りの拾い読み
素気ない素振りの海棠は
水のほとりの花和尚(かおしょう)の
背に咲き懸かり どんな夢を見たのやら
紅の蕾が世塵を眺め
風に靡いて締笑(しめわらい)
近頃、詩画に凝ってまして、この詩もイラストをつけました。
良かったらそちらも見てやって下さい。↓
http://homepage3.nifty.com/complass/Text/Poem/p-n55_2.htm
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にほひ来る 風をしるべに ながむれば
袖をつらねて あそぶ白蓮(はくれん)
木蓮のイラストを描いていたときに思いついた歌です。
木蓮の花びらがまるで白拍子が歌い舞っているように見えたので…
ついでに短歌とイラストの詩画も見てやって下さい。↓
http://complass.cocolog-nifty.com/material09/hakumokuren.jpg
詩人:朱雀 | [投票][編集] |
つらつら椿 戀しらに
常磐に冴える 鏡葉の
葉越しに揺れる 花の影
つらつら椿 うたかたに
指(および)折りかき 数ふれば
紅(くれなひ)にほふ 花の色
つらつら椿 つらつらに
思ひ乱れて 寝ぬる夜の
夢のうちにも 花の香(こう)
つらつら椿 落ち様に
水輪重ねて にわたずみ
嘆きの空に 花の雨
椿をテーマにイラストを描いていた時に頭の中に浮かんだ言葉を集めて詩にしました。
そのイラストと合わせた詩画も良かったら見てやって下さい。↓
http://homepage3.nifty.com/complass/Text/Poem/p-n67_2.htm
詩人:朱雀 | [投票][編集] |
畦に腰掛け見和(みな)ぎし先の
揺振(ゆたぶ)る木立は 神のやすんば
紅い雀が舞風の中
命の際まで飛び翔ける
漏れる光を光焔(こうえん)に
いつの間にやら 見まく欲し
唯 在ることに心苛(こころいられ)て
爪形(つまがた)残る掌中(たなうら)を
慈忍を装い やあわり ひと撫ぜ
眺めの空に浮生(ふせい)を被せ
泣きたいほどの夕附日(ゆふづくひ)
詩人:朱雀 | [投票][編集] |
秋に雨がささらいで 音鳴く声にも似た響き
夜半(よわ)の寝覚めに 色無き風が
情(こころ)恋しと吹き頻る
枯葉(こよう)に くろろが潜り込み
時のしじまで雨隠れ
幾ら待てば晴れるのか
朽葉色した胸のうち
とてもかくても
手裡にあるのは何首烏玉(かしゅうだま)
時は戻しも 伸ばせもできず
夢想の中で揺れ動く
なにやら いよいよ 忍び寄る
蕭殺の気に託(かこつけ)て
吐納(とのう)を宥め振り放(さ)け見れば
雲の切れ間に
覗く紫微垣(しびえん) 碇星(いかりぼし)
沁みる夜気を横豎に見立て
秋にひとり思い戯る
詩人:朱雀 | [投票][編集] |
水の面(も)に 瀬越しをかける川嵐
悶え果てぬる 真緋(あけ)の一葉
満山の 紅葉に秘する下思(したおもい)
よたたに燃えて 闇まで染めぬ
詩人:朱雀 | [投票][編集] |
菜の花畑で見る夢の
差しくる日影も目映くて
菜の花畑で見る夢の
解(は)つる思い出 風を追う
青陽の影
かげろうの刻
薫り合う間に
翔鳥(かけどり)の
羽音も蕩ける菜種色
菜の花畑で見る夢の
笑まう芳魂 尋(と)め行きて
菜の花畑で見る夢の
彼方に遊ぶ 夢見鳥(ゆめみどり)
詩人:朱雀 | [投票][編集] |
七つ下がりの風通り
透かし模様の薄絹に
囁(つつめ)く日射が
なだらかに滑り・・・・
疾(と)うの昔に置いてきぼりの
ブリキの箱で ひしめく玉が
熱の籠った鋪道を走り
鳴く蝋石の跡を追う
虹色の影を惜しむ間に
桑楡(そうゆ)日暮れて帳(とばり)を下ろし
爛柯(らんか)の名残も掻き消えて
斜陽が煽る草いきれ
彼方の路傍に残された
見過ごす程の足跡に
切ない笑いが くつつと ひとつ
道行き摺りに また ひとつ