詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
先の潰れた
クレヨン或いは
サクラの枝で
柔い土に
あの頃描いた
設計図
シャープペンの
硬い芯で
細部を書き出すには
まだ早過ぎて
幾度も破いて
散りばめた
僕の部屋は 今
まっ白だ
すきま風が
遊びにくる度
ばらばらと
舞い上がる
ちっちゃくて壮大な
何かのカケラ
ペンを持つ指が
長くなったけれど
紙くずは
捨ててはいけない
そんな気がして
今 僕の部屋は
ゴミ箱、否
オモチャ箱のまま
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どこか冷えた目をしてた
夕暮れ校舎の下
1人で辿る家路すら
自信を持てない僕なのに
広い校庭を右から左へ
横切った陸上部のあの子の背は
いつだって正しく思えたんだ
何度も同じフレーズを唄う
下手なトランペット
真白な紙に幾つもの色を乗せる
木陰の美術部員
赤い水馬を叫んでた
舞台の上の可愛い役者
肌寒い風が吹くなかで
同じ制服を着込んだ彼らは
みんながみんな、腕まくりだ
あなた達は今、
何処へ歩んでるのだろう
上着を脱いで腰に巻いた
もう少し未来の僕が
あなた達と酒を飲めたなら。
カラカラと地を這う
葉っぱは思い出に舞う
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アルコールが
胸を消毒したらしい
重く深い眠りから覚めると
朝の光がまばゆくって
思わず笑えたんだ
少し 開けた窓が
涼しい風を吹き付けてきて
去年の夏から吊ったままの、
鈴を揺らしてる
丘の上の白い教会で
鐘がなるようだ、と口にすれば
それは言い過ぎかな
また笑えそうな 馬鹿げた言葉
でもこの狭い部屋
窓から覗く青い空の上で
鐘が鳴る 鐘が鳴る
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爪先で蹴った小石が、
車道へ転がった。
綺麗な白い車は、
街路樹の脇の草を揺らして
素早く走り去る。
小気味の良い音がした。
粉々の石を、目を丸くして、
じっとずっと見ていた。
その丸い目が小石のようで
カァ、とカラスが鳴くから
僕は慌てて両目を覆う。
電車の中の、
綺麗な白いシャツを
じっとずっと見ていた。
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いつでもおいで
そればかりで
自分の手を差し伸べた事
無かったように思う
伸ばした爪が刺さるような
そんな手は汚いから
そう言って共倒れを
心の何処かで警戒してた
いつも人の目を見てない僕は
動かない瞳と目を合わせた
こうも、語るのか
自分にぞっとした
今まで僕は
何を話してたんだろう、口先だけで
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煩わしい荷が
細っちい肩に増えてく
平気な顔をして綱を渡る
この人混みはサーカス
得意気な笑み浮かべ
足掻きモガキ踏ん張って
不幸せな顔が
視界にチラついて
幸せの裏面を垣間見ては
ギクリと嫌な汗をかく
何もかも化かし合いの
この世間はお化け屋敷
何かが追いかけてくる
後から付いて来る
ガバッと背中にへばりつかれて
先の見えぬ綱の上を
歩き続ける 今日も昨日も明後日も
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夜道を走ってくトラックの
金具が軋んで微睡みに侵入した
自分の鼓動だけで良いと
指に髪を絡ませてね
耳を塞いでしまいたい
そんな気分 持て余して
うるさいうるさいとゴネる
高く積み上げられた石が
ゆらゆら揺らいでんだ
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まだ 触れないでくれ
頼むからソコらへん宜しく
空の高さが御機嫌の秘訣か
宇宙は広いから気を落とすな
テメェの噛んでるその爪さ
こないだまで向日葵だったかもよ
至極気楽な顔して
かなり世間ズレした事を
見晴らしのいい高台で
独りごちてる晴れた日
夕陽って球い太陽なんだよ
星はアホほど遠いんだ
こうして開いてる目玉が
この先桜になったりするんだろう
何でもないような面
前だけ見てるフリして
横目で世間の細波を
じっと睨み付けている
その場しのぎの軽はずみな言葉に
いい加減嫌気がさしてたらしい
閉じきった口は重たくなって
頭ばかりが動くようになって
畜生の日々に憧れてる頭の欠片は
高い空ばかり見上げるようになった
坂道を転がってく丸い石に
自分を重ねその後は他人を
犇めく人類を重ねてみたりして
ふと我に返るといつの間にか
下り坂は終わって空はもっと高く
草の波打つ丘を慌てて駆け上がる
風が凪げば影が揺らぐような
波打ち際で攫われるような
細くて脆い裸足のままだ
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闇はいつだって背中で甘く囁いてる
ただ貴方の世界はとても騒がしく
目映い光に溢れているから、
まだそれに気付いていないだけだろう
光の射すところには必ず蔭があって
なければそれは白い虚無だよ
闇は木漏れ陽の落ちる木立の
隙間の向こう
こちらを窺いながらダンスをしてるんだ
鈴虫の声が急に途絶えて
窓から冷たい微風と共に滑り込んでくる
彼らに気を許してはいけないよ
虫はまたすぐに歌い出すのだから