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死にたくない。 彼女はそう言って死んだ。側には子供が佇む。 ご臨終です。と医者が告げた後、彼女はもう一度呼吸をした。 私はまだ知らない。
これ以上の母性を。
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絡み付くこれななんですか?
まとわりついて重いのですが。
これ程の物が欲しい訳じゃない。
ただサラリとすり抜けて行く位のものでよかったのに。
貴方が選ぶのは私じゃない。
解っているなら離れて欲しい。
その10年の歳の差が私を傷つける。
その純粋な心が私には痛い。
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雨が…
針の矢となって降る。
小さな穴がいっぱい開いて、一つの大きな穴になった時
そこから流れ出した愛はもう一度空へ帰る
そうして私は生まれ変わる。
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「どちらさまですか?」聞いた時、電話の向こうで笑った気がした。
「お母さん居ますか?」と聞かれた時、何か優しい気がした。
聞いた事あるような、ないようなおじさんの声。
不思議な感覚。
ママに聞いたら
「覚えてない?あれはあなたのお父さん」
初めて聞いた。あれがパパの声。
ううん、忘れてたんだ。大きな手、大きな眼、大きな声。
パパ、私もうオムツをしてる赤ちゃんじゃないよ。
人を愛する事を知ったんだよ。
明日お嫁に行きます…
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患者さんが手を差し延べた。
私は何も出来ない。
心が真っ黒で博愛の精神なんかいつの間にか何処かに置き忘れた。
それでも患者さんは私に手を差し延べる。
ただ涙がでるだけだった…
こんな私が看護師していていいわけない。
自分の心さえ救えないのに…
患者さんはそれでも私に手を差し延べる。
まるで何もかも見透かしていて
全てを許してくれているように…
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「私の赤ちゃん」彼女は縫いぐるみを抱く。
「明日には大金が入る。誰にも言うなよ」彼は一昨日もそう言った。
「テレビのアナウンサーが言うんだよ。僕は天才なんだって。隠していたのにばれちゃった」
彼らは水を大量に飲む。カエルの様にお腹を膨らませて歩く。
彼らは恐れと不安の中で生きている。
その膨れたお腹がはじけた時、きっとほんとの自由になるのだろう。
彼らは今日も水を飲む。早くお腹がパンクしないかと待ちわびながら…
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廊下に
足跡
たどって行ったら
大きな穴
油断してたら突き落とされた
廊下に
足跡
たどって行ったら
中位の穴
のぞき込んだら落ちてしまった。
外に続く足跡
たどって行ったら小さな穴
そこに落ちた人達は
天を仰ぎ助けを求める
神様がくれたものは
睡眠薬
精神安定剤
今日も誰かが
足跡をたどり穴に落ちる
蜘蛛の糸なんか垂れてこないと知りながら
天を仰ぐ
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洗面所の鏡の前で髪をとく女
入口の陰からのぞいてる彼の幻視
ありがとう。僕も好きだよ。
ニコニコと微笑み頷いているのは彼の幻聴のため
僕は幸せになっていいの?
彼女と2人なら生きて行けそうな気がするんだ。
そう言ってまとめた荷物の中身は枕とパジャマ
何処に行くの?と尋ねたら
彼はひとしきり考え黙ってベッドに横になる
そして現実に気付く
鞄の中身を取り出しながら、ポロポロと涙を流す
彼の愛する人は彼の頭の中に生きている
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慈しみ深き我が友イエスは…
罪 咎 憂いを取り去りたもう
それならばここに居る彼らのそれを流して下さい
彼らは見えるもの
聞こえるもの
感じる事が嘘か誠か分からない
苦しみの中に真実を求めて同じ所をグルグル回る
などかはくださぬ負える荷物を
ならば彼らの背にある物を羽に代えてください
その重さに足取りはたよりなく今にも倒れそう
神様がいるのなら
彼らは泣く事も無いだろう
彼らはいつも泣き出しそうな顔で息をしている
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あなたが泣くから
私は泣けない
あなたが甘えるから
私は受け入れる
「お前は優しいから」
その言葉が私を強くした
何も変わらない現実に
休める止まり木もない
私を好きだと言うくせに大切なものは自分
「強くなってよ」って言ったら「うん」といった
その言葉が信じられず
メアドも電話も削除した
私のほうが空っぽになった。
本当は彼の方が強かったのかもしれない…