詩人:山鳩 | [投票][編集] |
哀しみという地平線に
秋の陽が沈む
哀しみを捨てに海へ行けば
忘れ去られた歌が流れていた
哀しみをひとつコーヒーに溶かすのは
すっかり忘れてしまいたいから
哀しみの星をひとつずつ数えて
夜空を宝石箱にしてしまいたい
哀しみは毒りんご
皮を長めに剥いてください
哀しみはタバコの煙
ひとりぼっちが好きだから
哀しみは忘れた頃にやってくる
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
君と僕との愛は微妙で
詩のようなもの
行間に隠されている
さまざまな言葉の模索と
果てしない想像に似ている
なんて僕が言っても
君はジュエリーショップの
ガラスケースの前から動こうとはしない
ところで君に質問
詩でマイホーム購入のローン組みできますか?
詩と泥棒の言うこととでは
どちらが正しいと思いますか?
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
孤独を売り歩く行商人
名前はロマノフ・ヒトリボッチ
誰か孤独はいりませんか
お安くしますよ
それじゃあ
私に孤独ひとつください
いいえその傷のついたのじゃなくて
そのとなりの真っ赤に熟れた
おいしそうなやつ
はいありがとう
お代はこのカナシミの箱にね
さあ次はあのマッチ売りの少女
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
ここでは哀しみのポイ捨ては
禁じられています
哀しみは決められた場所に
決められた要領で捨ててください
もう海は哀しみで満杯です
ただし
哀しみはリサイクルできません
・・・・・
かなしみよ さようなら
かなしみよ こんにちは〜
ポール・エリュアル
「直接の生」より
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
まんげつのよるに
あのこのうさぎは
つきにめされました
つきにめされたあのこのうさぎは
いつもそらから
あのこをみつめています
つきのまるみをなぞるように
せなかをまるめて
あのこのうさぎは
あのこのよびごえをきいています
あのながいみみで
あのこのうさぎがはなった
ぎんいろのひかりは
あのこのかなしみをいつか
だれかをあいするこころにかえるでしょう
あのこはまたひとつ
なみだのながしかたをおぼえました
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
あこがれとともに暮らす日々が過ぎて
何年ものあいだ閉ざされていたこころが
ようやく打ち砕かれ
あの日以前のわたしに戻ろうとしている
〜だいせんじがけだらなよさ〜
愛する・寺山修司少女詩集より
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
かなしみの詩の最初の行に
君との楽しい想い出を書き
その次の行には
君のこころを知った
あの真冬の夜更けのことを書き
その次の行には
僕の誕生日が
君との別れの日だったことを書く
でも
その次の行からは
目が潤んでしまい
書くことができなくなってしまった
僕はペンを捨てて外に飛び出して
真冬の夜空を見上げてしまう
満天の星空にきらめく
ペルセウス座の流星がひとつ
キラリ
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
哀しみが引き潮のように
次第にこころの片隅から
消えうせようとしている
不思議にも別れた後で
僕にとっての君の存在が
客観的に見れるものであることに気付いた
皮肉なもので
一緒にいる時には
多面的な見方などできるはずもなく
それ自体が魅力の虜になっていた
ある種の恍惚状態であったかもしれない
ずっとこころの片隅で淀んでいた
長年のしこりのようなものが
いま打ち砕かれたような気がする
君が去りここに残していったもの
よみがえる君の言葉の数々から
多くのことを僕は学んだ
それらはすべてこれからの
僕のこころの浄化に
作用している
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
悲しみの涙は海に注がれて
太古の海は次第に塩辛くなってゆく
その頬につたうナトリウムのしずく
復活の涙はいま石のなかに
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およそ六千五百万年前、隕石の衝突により
絶滅したという恐竜たち。
その出来事は、束の間の出来事。
絶滅した恐竜たちの涙は海に流れ、そして
化石となってその中に封じ込められた。
私のこころもこの出来事に重ね合わす。
ある人への想いはずっとここにある。
閉ざされたこころはいつに日か復活すること
を願い、日々の暮らしに流されてゆく。
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
君の前では
素直に笑顔ができない
なぜか身構えてしまって
それが理想?なんて
君はすぐ口にするけど
理想主義で潔癖で
血液型からは想像できないほど
整理整頓された財布のなか身
僕の言葉の語尾が直ぐに気にかかる
茜色に染まる街並みに
スーツ姿の君は
さっそうとヒールの靴音立てて歩く
地下鉄の駅の入り口で
じゃあねの手を振れば
その自信に満ちたほほえみに
僕のこころのどこかに
寂しさを残してゆく
もう秋ゆく街
通り過ぎる人ごみにまぎれて
背中丸めてポケットのチケット
探してる