詩人:山鳩 | [投票][編集] |
哀しみという地平線に
秋の陽が沈む
哀しみを捨てに海へ行けば
忘れ去られた歌が流れていた
哀しみをひとつコーヒーに溶かすのは
すっかり忘れてしまいたいから
哀しみの星をひとつずつ数えて
夜空を宝石箱にしてしまいたい
哀しみは毒りんご
皮を長めに剥いてください
哀しみはタバコの煙
ひとりぼっちが好きだから
哀しみは忘れた頃にやってくる
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
君はいま
十年後を想像できますか
もう二度と
こんな過ちを繰り返したくない・・
お元気でした?
随分遠回りして来たのですね
懐かしい君の微笑み
また逢えましたね
そんな夢の世界から目覚めた
この暖かな丘の上
その決心は
僕の弱いこころを上回っていた
君の決断があったからこそ
僕は今ここにいられる
十年後を約束することで
そのとき僕は救われていた
人のこころを長い間結びつけるものは
何なのか
言葉はこころを結びつけるのか
言葉を超えた
何か共通のシンパシィのようなものが
隔たったこころを繋げるのか
二十一の君を最後に見たこの丘の上
人のこころなんて移ろいやすいもの
君はいま倖せ中にいますか
あの愛からもう七年の
歳月が過ぎようとしている
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
今朝見つけた君のパラソル
其処にあることも知らずに
じっと動かずこっそりと
リヤシートに寝かせられ
「早く私に気付いて・・・」
そんな小(ささ)やかな呟きが
聞こえたような気がした
水色の雫は泪のよう
もう差すことのない君のパラソル
君は濡れたこころと
乾くはずのない哀しみを
僕に残していった
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
哀しみという少し重い荷物を抱えて
ひとりうつむきながら
失恋という階段を上れば
ちょうど踊り場で見えた
忘却という名の扉
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人を好きになること
人を思いやること
その行為は人間形成にとって
とても重要な要素になってくる
いくら頑張っても頑張っても
その想いが成就されず
哀しい結果に終わったとしても
その行為に費やされた精神は
決して失われていない
失われるどころか
相手の立場になって物事を考える力
思いやりのこころが増幅されてゆく
詩人・谷川俊太郎はこう言っている
失恋とは恋人を失うかもしれないが
決して恋を失うことではない
〜愛のパンセより
相手を思いやるこころ
やさしいこころをずっと持ち続けていたい
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
悠 なる記憶
美 しい思い出
子 羊の群れの雲
この丘の上を流れる
秋空を見上げ
その名を何度もつぶやく
なよらかな風の旋律に
君の空耳を聞く
あんずいろの木洩れ日の中に
あの日のまぼろし
その名をつぶやけば
僕のこころは浄化されてゆく
僕のこころは
ようやく浄化されてゆく
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
ひとはかなしくなると
海を見に来るという
そのかなしみは
海に捨てられて
やがてかなしみは海に溶け込み
この紺碧の大海原は
徐々に塩辛くなってしまった・・
というある詩人の話を思い出す
涙と海の物語
あの水平線のあたりに
君の涙の一滴が漂う
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
もしもあなたが仮に
ひとりぼっちが好きになったら
ひとつの詩を書けばいい
詩は哀しみになり
詩はしあわせを運び
詩は従順な猫のように
あなたの足にまとわりつく
ただその内には
なんの情報もなく
人を信じさせる効果を持ち合わせていないので
気をつけて下さい
私が詩を書く理由もそのひとつ
こころから愛した人を忘れ去るため
想い出を海に捨て去るため
認めた君からの言葉を
捨て去るため
ひとりぼっちがたまらく好きになるとき
僕はひとりの名も無い詩人になる
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
君からの言葉を
ひとつふたつみっつ
夜空にかがやく
星星を数えるように
花占いの
花びらを千切るように
古びた机の上に並べてみる
しあわせそうな言葉
かなしみの言葉
うれし涙の言葉
さよならの最後の言葉
どれも
君の濡れたような唇が揺れて
僕の手の上に零れて弾けた
言葉はすべて消えて
君があの日に去って
僕の恋心だけがここに残った
詩人:山鳩 | [投票][編集] |
僕の知らない大きなかなしみが
君のなかで生まれている
いつもの微笑みの裏側に
僕の気付かない苦しみを隠している
言葉をこえた無言の叫びを
空耳のように聞いた
僕はあれから
君の言葉の裏を探るようになっていた
こころの奥まったところに
寂しく風が吹き抜ける
今こころに浮かんだあの丘から
海の向こうにある水平線へ
かなしみの向こうにあるもの
僕は泳いで行きたい
かなしみの魚になって
流されるままに