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和泉の部屋  〜 投稿順表示 〜


[12] ノ・インスタント
詩人:和泉 [投票][編集]


思い出を抱き締めたら溢れ出して
両手から漏れるそれらを必死に掻き集めた


失くしたくはない と
頬を濡らしながら
抱えきれないものばかりで





求めるのは
誰かが差し出してくれる器と

共有しよう と
微笑む顔

2006/06/21 (Wed)

[13] 
詩人:和泉 [投票][編集]

この保たれた距離は
臆病の証


崖から落ちかけて
掴んだ“誰か”の手

振り払われたら
拒絶されたら と
汗ばむ掌


離れた距離からじゃ
声も届かないのに
保った距離は縮むことなく


けれど
“誰か”が微笑みながら言った




そんなに離れていたら
ワタシが落ちそうになった時
誰が助けてくれるの と

2006/08/06 (Sun)

[14] 壁掛け時計
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秒針の音(ね)
眼に映る時は
スローに
スムーズに

時を止める魔法なんて
誰も知らない


世界中の時計を壊したところで

ただ時間がわからなくなるだけのこと



ジャストで鳴り響く鐘の音は
あまりの大きさに
誰も近寄ろうとはしなかった

2006/06/23 (Fri)

[15] 老婆の休日
詩人:和泉 [投票][編集]


年の数よりもの読み潰した本

皺の数よりもの記憶(おもいで)


いち
にい
さん と
繋がっていく絆


大きな家に入りきらなくなった愛は
皆にお裾分け



温かい家も
今では記憶と私と

我が家の様に入ってくる白猫と

まったり ぽかぽか
うたた寝中


そんな
老婆の休日


2006/06/23 (Fri)

[17] ドロップ
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失くしたものに番号をつけるなんて
キリないし

両手で掬(すく)えるだけ掬(すく)おうと
欲ばかり

指の間から
溢(こぼ)れているのに
気付かないくらい


番号をつけなきゃ
並べられないし

失くすばかりの私を見て笑う人がいることに
傷付いて


巣くう喪失感から
救って なんて
また頼って

救う なんて
したことないくせに



失くしたものに番号をつけるなんて
キリないし

溢(こぼ)れないように
掬(すく)うなんて
できないけれど


せめて
一粒でも
残せたなら

2006/06/25 (Sun)

[18] ステージ
詩人:和泉 [投票][編集]


飲んだ台詞は
喉の奥に消えた

この舞台で
主役は僕のはずなのに
ライトアップされず

劇もまだ中盤で
長い 長い
劇に
終わりは見えない

生まれる前に
渡された台本は
真っ白で
鉛筆と消ゴムを
差し出され

“自分で造れ”と
舞台に押し出された


僕の台本は
まだ10ページにも満たなくて


けれど
ライトアップされるシーンが
いつか訪れる




だから
今日も僕は

舞台に立っているんだ

2006/06/25 (Sun)

[19] 濃霧注意報
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目隠しをされたのか
自ら閉ざしたのか
それさえ忘れた霧の中

白いもやに溶けたくない と
飛込んでいった少年の姿さえ
もう見えない

辛うじて見える足元
汚れた靴は
固い地面を嫌がった


下ばかり眺めて
歩き続けて
更に
迷って



目隠しをしたのは誰
眼を閉じたのは自分


だんだんと
霧が濃くなり

5分前
濃霧注意報が



2006/06/26 (Mon)

[21] 24
詩人:和泉 [投票][編集]


過ぎ去る今日が怖い
戻らない昨日が怖い
迫り来る明日が怖い

あっという間に過ぎてしまう時間(とき)が惜しい

与えられた時間
上手く使えたならいいのに


嗚呼
今日ももう終わる


2006/06/28 (Wed)

[24] オレンジ
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帰ろう と歌が聴こえる中
それでも空で笑っている太陽

夏が訪れる証


伸びた影に重なる想い
繋がる昼と夜

オレンジ空が
まだ遊ぼう と
歌っている

2006/06/28 (Wed)

[25] アンダンテ
詩人:和泉 [投票][編集]


固い地面に足が悲鳴を上げる
よく此処まで歩いてきた と
自分を甘やかして


本当は
止めてもいいんだって
自分が選んだなら
止めてもいいんだって

けれど僕を置いて皆が歩いていくから
十歩後ろから背中を眺め
ゆっくり歩く

目的がない旅に
足が泣き叫ぶ

丁度良いベンチは塗り立てで
丁度良い芝生はびしょ濡れで



早く見つかるといい
此処にいたいと思える場所

それまで僕は
歩き続ける

2006/06/29 (Thu)
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