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矢井 結緒の部屋  〜 投稿順表示 〜


[46] いつかのdeja vu
詩人:矢井 結緒 [投票][編集]


ヒューマニズムは
時に残酷で
一人の命を救うために
それ以上の命を奪う事に
無頓着で鈍感だ

虐待され
物言わぬ子供の
五臓六腑が
いずれ闇市の
ショーウインドウに
並ぶだろう


パシフィズムは
いつも暢気な
お喋り好きで
自分の平和が
他人の暴力で
守られている事に
あまり興味がない

加害され
自由を奪われた彼らは
やがて一番右側の
ドアを蹴り飛ばして
一斉に同じ方向へ
走り出すのだろう

2009/06/18 (Thu)

[47] こもりくのバラッド
詩人:矢井 結緒 [投票][編集]

3連符で苛立って
ナショナリズム刻んで
社会変えると豪語して
変われぬ自分落伍して

Hey say!
平たく成らない時代さ
未熟さが売り物と
裏声で歌う
ぬばたまの夜

3連休に戸惑って
バイオリズム乱れて
毎日が自由なHoliday
逃げ道探してRunーway

Hey say!
平たく成らない時代さ
卑屈さを盾にして
言葉で突き刺す
たらちねの母

2011/01/09 (Sun)

[48] コギト
詩人:矢井 結緒 [投票][編集]


レトルトの
「我思う、ゆえに
我あり」というのは

我思うと我思う、
ゆえに我ありと我思う

の方がより正しい

...と思う
だなんて
誰への言い訳だろう
自分の思いではなく
他人の思いを語る道具に
成り下がった覚えはない
寄せ集めに紛れても
私と同じ結晶は
ふたつぶとない

...である
と断言しても
自信があるわけじゃない
開き直るつもりはないが
絶対がないのは
前提だから
...と思う
だなんて気弱な述語
生きてるうちは
わたしが使うことはない

と思う






あれっ?

2009/06/21 (Sun)

[49] ゲシュタルト崩壊
詩人:矢井 結緒 [投票][編集]


しばらく
出会ったことが
なかったので
こんな姿だったかと
半信半疑

カブト被らないメス?

もっと確かめたくて
近づいたら
カサコソ
見覚えのある素早い動き
離れると
ジッと壁に張りついて
微動だにしない

こちらの出方を
窺っている様子だから
間合いを計ってるうちに
チャンネルが
合ってしまったみたい

もしかして
あなたなの?

答えるはずもない

明日
ホイホイ買ってくるから
捕まったりしないで
ちゃんと逃げてね


さようなら

2009/06/22 (Mon)

[50] お財布ぱんぱん
詩人:矢井 結緒 [投票][編集]


自販機も人も苦手で
冬でもかいてる手汗

いつも
緊張してるから
自販機の缶ジュース
とり忘れたり
コンビニのレジに
買った物を
置いたまま外に出たり

他人との
当たり前のやり取りの中
返却された想いたちが
未処理のまま
わたしの中で
膨らんでゆく

たとえば
この5円玉1枚と
1円玉3枚は
何の余りだろう

親切にしたりされたり
責めたり許してみたり

お釣りみたいに
日々に貯まってく感情が
頭の中で使いきれない程
重たく沈んで
記憶がぱんぱん

2009/06/23 (Tue)

[51] 佇むリズム
詩人:矢井 結緒 [投票][編集]


左右交互に
繰り出すだけで
いくらでも前に進める

理屈の王様は
裸婦には遠く及ばない

メカニズムに
深入りし過ぎて
アルコホールで
洗浄した配線が
短絡的にショートして
あるはずの目的地は
遠く霞んで
トイレばかり近くなる

消化すべき物を
受け付けない臓器で
何を排泄すれば
わたしはキレイに
なれるのだろう

Fコードさえ
セーハできなかった彼は
私よりずっと上手に
世間を制覇する

2009/06/24 (Wed)

[52] アマンチュ(甘人)
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好きだけでは

その道のプロには

なれないって

みんなが言うから

天の邪鬼なわたしは

あなたを好きなだけの

ただのアマチュアでいい

2009/06/24 (Wed)

[53] 空色の鳥
詩人:矢井 結緒 [投票][編集]


青いルリビタキが
電池切れの飢餓の果てに
蚊細い声で鳴き続ける

自分の生さえ
まともに扱えないから
まるで唯一の
勝ち星みたいに
たった3万の1の
ありきたりの最期を
自ら選ぶ

大した傷も残せないまま
無かった事にするなんて
意味がないから
傷つきながら
傷つける事を
決して止めない

だって薬どころか
毒にもなれないなんて
無視出来ないワーム
以下の存在だから
青い鳥だって
食べてはくれないもん

2009/06/26 (Fri)

[54] キッチンカルト
詩人:矢井 結緒 [投票][編集]


ゴミ箱あたりで
バキッ!とラップ音

夜になると
細かいパウダーが
霧のように
白く立ち込めて
耳や目や鼻や口から
見えない無数の虫たちが
襲ってきて
喉に張り付くや
ほんの数分で
腫瘍を育んで
呼吸を困難にする

1日何度も
お風呂に入って
窒息の恐怖を
洗い流すのに
酸素が
圧倒的に足りなくて
発狂しそうな閉塞感に
理性は麻痺する
それでも
あなたの最期は
こんなものでは
贖えないほど
とてつもなく凄惨で
筆舌に尽くせないもの
だった

自ら止めた
その呼吸は
瞼を閉じ忘れたのに
4年待っても
戻っては来ない

2009/06/26 (Fri)

[55] 一人よガーリック
詩人:矢井 結緒 [投票][編集]


坂道を下るのは
抱えた重さで容易いのに
後向きだと不安が回って
こんなにも困難

前向きでも
立ち竦むのは
足下ばかり
気にしているから

理屈と言葉だけなら
簡単なのに
遠くを見過ぎるわたしは
小さな部屋さえ出れない

2009/06/30 (Tue)
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