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千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[617] 銀河鉄道
詩人:千波 一也 [投票][編集]


各駅停車の鉄道がはたらいている


ひとの数だけ

想いの数だけ

星空のなかで

各駅停車の鉄道がはたらいている



天文学には詳しくない僕たちだけれど

きれいだね

しあわせだね

このままでいたいね

語りは一言でいいのだと思う



流れ星がひとつ、いった


あれは命の燃え尽きる光

そのさまを見届ける者は果たして幾つ在るのだろう

或いは

誰にも気付かれることなく

ただ確実に

満天の星空はカタリ、とまわる



涼しく夜風が吹いたなら

それは

鉄道列車が走り出す合図

無限の時の端っこを

今ここにしっかりと繋ぎとめて

つぎの光を追いに発つ

その汽笛



往こう

透明な乗車券は

手のひらの温度に溶けやすくて

心もとないかも知れないけれど

たやすくは見えないことが

僕たちの美しいさだめ

時刻表のなかには蕾が溢れている

咲き誇る色合いは見えなくても

予感が香る

語りはまだまだ往ける

ほら、微笑んで



満天の星空はカタリ、とまわる


瞬きをしよう

ゆっくり

カタリ





2006/09/09 (Sat)

[618] 九月のサンダル
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日常にくたびれた玄関先で

茶色のサンダルが

ころり

九月の夜気がひんやりするのは

夏の温度を知っている証拠

おまえには随分と

汗を染み込ませてしまったね

サンダルの茶色が

少し、濃い



タバコが切れてしまったから

ちょっとそこまで行くのだけど

おまえも行くかい

濃いめの茶色は無言の返事

出番はまだか、と

サンダル

ころり



靴下よ、さらばだ



土足厳禁の我が愛車

おまえは靴置きケースに移される

運転座席の足元が定位置

うん、

とっても落ち着く距離感だ



夏との別れも

夏との出会いも

わかりやすい方法で

簡単に叶うものなのだね


いざ、タバコを求めて発進



こころに優しい煙のにおいを

いのいちばんに

嗅がせてあげよう

窓を開け放って

ぷかり、とひとつ

星空のした



気持ちがいいもんだ

ぷかり


ぷかり



2006/09/09 (Sat)

[619] 連環
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虹を渡すのは、雨の純真であるように

雨を放すのは、空の配慮であるように

空を廻すのは、星の熱情であるように


やさしき担いごとは満ちています



あなたを求めるわたしがいて

わたしを迎えるあなたがいて


やさしき担いごとは満ちています




映るすべてをこころに留めるべく

瞳はまあるく備わっているのです



こころを持つすべてのものに

瞳はまあるく備わっているのです


2006/09/09 (Sat)

[620] 和らいだ風に宛てて
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あの日 は もっと

懸命過ぎていた ような

だから

とっても よく覚えているわ

風を




気のせいかしら

いつの間 に

気のせいかしら

和らいだここち ね




どちらも好き よ

あの日も

今も



はざまにたゆたうのが 風なんだもの

私なんかのちから では

私を 選べるはずもないのよ




ごきげんよう

おわかりくださるかしら



ごきげんよう

また 立ち寄るわ




2006/09/09 (Sat)

[621] きびだんご
詩人:千波 一也 [投票][編集]


こころの機微をおひとつ、どうぞ

かわりに今後もよろしく、どうぞ


わたしの背後のあれこれの

言い尽くせないあれこれの

混じり気のない よろず味



恥ずかしながら母の味わい

ほんのりかおる、沖の凪

およばずながら父の味わい

わずかにみえる、頂の風



いってまいります、御先祖さま

みていてください、御先祖さま




錦をもとめて、こんにちは

錦をもとめて、さようなら



縁の円舞に遠慮は要らぬ

さぁさ、

そのさきそこまで

手と手を結んでみませんか




こころの機微をおひとつ、どうぞ

かわりに今後もよろしく、どうぞ



2006/09/09 (Sat)

[622] 氷が笑えば水は俯く
詩人:千波 一也 [投票][編集]


窓越しのアルデバラン

暖炉が背中でうたうなら

ベテルギウスは指輪にかわる

ポタージュの香り満ちる星座紀行は

甘くも、はかない



やがて旅人は

アンドロメダへの郷愁にかられてゆくだろう

雪原は手招きをするだろう



吐く息の白さは

束の間だけ美しい

水のいのちが凍れるさまだ、と

浅はかさを知るのは数分の後



ダイアモンドダストの煌めきは天使の誘い

有無を言わさず連れ去ろうとする

天使の誘い

砂時計をこころに留めておかなければ

水のいのちは

砕け散る

それはそれは鮮やかに

砕け散る



毛糸の暖かさに包まれながら冷めてゆく夢を

一角獣座は

鋭く見つめることだろう




氷が笑えば水は俯く


手の温もりは

誰にも届かず消えてゆく



氷が笑えば水は俯く

北極星はいつも

旅人のために明るいのだが




2006/09/09 (Sat)

[623] 百鬼夜行
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竹の林の向こうから

銀の鈴の音 

リン シャラリン


夜露は月の輪郭を

ゆるりとその身に吸い込んだ



川霧晴れて すすきが並ぶ



トン カラリン

独楽(こま)が寂しく倒れるような

トン カラリン

下駄が小石を弾(はじ)いたような



茂みの底に息をひそめて虫のまなこは濡れてゆく



大樹の落とした木の葉を踏んで

てんぐ 

ひとつめ 

ろくろくび

苔むす地蔵に一瞥(いちべつ)くれて

かっぱ 

からかさ 

がしゃどくろ



鴉は捧げる 魚のいのち

狸は捧げる 草の根 木の実

百鬼に献ずる盃そろえば

宴はいまにも始まるだろうに

それは今宵もあらわれぬ

かくて夜行は常世に続く



のどの乾きと盲目の病み

いちばん暗い護りの途へと

長蛇は流れて

今宵が終わる



始終を見ていた梟(ふくろう)のした

茸(きのこ)の群れが頭(こうべ)を垂れて 

夜露はリン、と

砕かれた

まもなく月はそらへと還る


ざわめく声を孕んだ風が

漂う雲を追い払い

月光こぼれる 

蜻蛉が渡る 



2006/09/09 (Sat)

[624] 砂嵐
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夥(おびただ)しく降り注ぐのは

湿り気のある眼球たち

あまりにも優しい成分なので

それらは

容易(たやす)く踏み潰せてしまうのだが

悲鳴に私は恐怖する



オアシスはすぐ其処だ

通り過ぎて来ただけの街並みに似て

その向こうには蜃気楼

潤いを求める私にとって

意味をなさない

蜃気楼



眼球がいま、肩で砕けた



耳を塞ぎ忘れた私は

断末魔を聞いてしまった

何度目になるだろう



眼球の孕んでいた水分が肩に広がり始めている

太陽に見つかってはならない

乾くのだ

熱いのだ

潤いが奪われてゆくのだ

急がなくてはならない


私は走る

眼球たちの注ぎのなかをひた走る

オアシスはすぐ其処だ



けれど

私を迎えたものは

空から降り注ぐものたちの集落

水たまり、のようなもの

私は此処では潤えない

辺りに転がる亡骸(なきがら)も

他人事ではなくなってきた



注ぎをやまぬ優しい成分たちに

何かを言いかけて

ジャリッと

私は

舌を噛んでしまった



2006/09/09 (Sat)

[625] 改札口にて
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改札口にて

お待ち申し上げております



行き先を

詮索したりはいたしません

どうぞ

ご安心を



あなたがここを

通過してゆく事実のみ

確かめさせて頂きたいのです



お顔を

覗き込んだりいたしません



わかりますとも

靴音と 

きれいな指と

揺れる髪

それだけで

わかりますとも

お顔は拝見いたしません




この町が晴れ渡る日にはいつも

わたしは此処におります


行き先は

存じ上げておりません

行き先の天候もまた

存じ上げておりません



わたしはただの通過点でございます

あなたも

よくよく知っておいでのように



改札口にて

お待ち申し上げております



この町が晴れ渡る日にはいつも




2006/09/09 (Sat)

[626] わたしは鏡のなか
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わたしは 鏡のなかで待っている

あなたを待っている



あなたは なにも知らずに

平気で 素顔を のぞかせる

わたしは みとれて 口ずさむ





月明かり が 素敵

朝陽のふところ も

広さがあって 良いかも知れない





わたしは 鏡のなかで待っている



やさしく

うた に

とらわれの 日々


2006/09/09 (Sat)
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