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千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[587] 埠頭
詩人:千波 一也 [投票][編集]


埠頭に

群れなす

カモメはすべて

哀しい心のなれの果て



船は今日も出てゆくのだ



海は広いというのに

のぞきこめない

瞳の深さをもって

船は今日も出てゆくのだ



乗れない者と

手を振る者と

うつむく者と

その

鮮やかすぎる不幸について

船はいつか振り返るだろうか



船は行ってしまった


埠頭に

群れなす

カモメはすべて

哀しい心のなれの果て


2006/09/09 (Sat)

[588] 釣り人
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釣れた、釣れぬは

問題ではなく


私が尋ねたいのは「何が釣れますか」

それだけ

どうぞ素敵にこたえて下さい



たまたまの数秒

真偽は気になさらずに


私もまた

非礼と知りつつ 

あなたの答えをねじ曲げますから

どうぞ素敵にこたえて下さい


2006/09/09 (Sat)

[589] ふわり、風
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ふわり、風

ふわり、髪


いつかの夏の真昼の丘で

風にそよいでいたきみのこと



ふわり、風

ふわり、髪


いつかの夏の真昼の丘で

きみの光が思い出に捕らわれそうで

哀しかったのを覚えてる


穏やかな日だまりのなかで

哀しかったのを覚えてる



ふわり、風

ふわり、

きみの髪のかたちが

心に蘇る



参ったなぁ

いつかの少年にはもう戻れない



ふわり、風

ひとりきりでは乗り切れず


ふわり、風

くすぐったいような

きみが好き


2006/09/09 (Sat)

[590] 優しきあなたへ罪状を
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悪気などないのだから

だから尚更

優しいあなたは嘘つきになる


誰をも騙せなくて

自分を騙すことではじめて嘘つきになる



それがたとえ取り繕いの仮面であっても

優しいあなたは

そういうふうに嘘つきになる



けれどもやはり安手の仮面ゆえ

途ゆく人は

あなたの背後を確かめる


優しいあなたは自分しか騙せないものだから

途ゆく人に嘘を手渡す

優しく手渡す



優しきあなたよ

振り返る途に

いくつの涙が見えるだろうか

振り返る途に

いくつの掌が見えるだろうか



判決、

その優しき光の源を

絶やさぬように抱くこと



判決、

すべての温かさの懐に

優しき寝息を立てること



2006/09/09 (Sat)

[591] 手毬唄
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お嬢の小唄を

宙に放れば

おてんと様が照らしてくれる


小僧の小唄を

地に撞けば

根っこの隅々しらべてくれる



手毬唄、ひとつ

この手に優しい中身かどうか

優しくこの手に帰るかどうか



婦人の小唄を

宙に放れば

そよそよ風がゆすってくれる



御仁の小唄を

地に撞けば

石ころたちがためしてくれる



手毬唄、ひとつ

この手に優しい中身かどうか

優しくこの手に帰るかどうか




唄は たのしや 

唄は ゆかしや

こころという名のまろやかな型

愛でるべき縁の 

もたらす土産



あしたの唄を楽しみに待ちつつ

手毬唄、ひとつ


手毬唄、ひとつ


2006/09/09 (Sat)

[592] 答をくれる人
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貝殻を気取る私は

捕獲されるのを警戒する


辺りが静かになった頃

深い深い、おそらく他人には不快と思われる

夜の底にて

ようやく貝は口を開く



ポロポロと子守歌

誰にも与えられぬような

おのれのための

子守歌



貝殻はそこに

ありもしない伝統を見つける



答をくれる人は

いつだって居てくれるのに



私は

私の愚かさについて

もっと詳しくならなければ

ならない



2006/09/09 (Sat)

[593] 良かれ、とついた嘘
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少女のために

空き地のために

泥靴のために

良かれ、とついた嘘



自分の肩幅もかえりみず

良かれ、とついた嘘



あの頃は

そうでもしなければ

苦しくて




自分の足でも踏み潰せそうなものを

置き去りには

出来なくて




良かれ、とついた嘘は

毎夜の潮騒



治りかけの傷ほど

かゆくてたまらない


良かれ、とついた嘘は

毎夜の潮騒


2006/09/09 (Sat)

[594] 潤いの庭
詩人:千波 一也 [投票][編集]


遠くの丘の教会の厳かな鐘の音が届く


私は

如雨露(じょうろ)を止めて

目を閉じた



愛の門出のサインであろうか

永き眠りのサインであろうか

私がこの手に掴めるものなど

少しも無い



風の尻尾ですら

永遠に逃がすであろう私の目には

頷くような

花々の揺れ加減



如雨露が一度に いだける水には

限りがあって

如雨露が一度に そそげる水には

限りがあって

それでも

その一度を必要とする花々がある



二本の腕と、十の指

二本の脚と、十の指

数限りある私の身でも

慎ましく守り通せるものは

きっとあるのだと思う



遠くの丘の教会の厳かな鐘の音に

しずく

ひとつぶ



晴れ渡る空の青さが

また一つ

増した気分で

私は如雨露と再び歩いた



2006/09/09 (Sat)

[595] 薄灯りはまもなく消える
詩人:千波 一也 [投票][編集]


紅さし指で

この唇をなぞっておくれ


宵をにぎわす祭りの夜に

提灯ゆらり



光はたぶんに正しいものだけ捕まえる

ほら

燃える可憐な蛾がひとつ



短命ながらも風情をもって

正しいものへと

主人を招き

提灯ゆらり



紅さし指で

この唇をなぞっておくれ



まもなく花火は上がるだろう



大輪の菊は

その肩のために咲くのかも知れない


艶やかな華ほど

摘み取られてしまうのだから

そんなに飾りたてても

菊花が映えるだけ



まもなく花火は上がるだろう



浴衣を脱いで

こちらへ

おいで


2006/09/09 (Sat)

[596] ピアニスト
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指先なんか不器用でいい


鍵盤が求めるものは

迷いを持たない、その

指先の重み



ねぇ、


清らかな雨の注ぎに

いつまでも耳を傾けていたいの、






おはよう、ごめんね


ありがと、おやすみ



こころの譜面は

優しく時間に溶け込んでゆくの



指先なんか不器用でいい




奏でて

そのまま


2006/09/09 (Sat)
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