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夕凪の部屋  〜 投稿順表示 〜


[57] 爪弾くギター
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 どこかで誰かが
 爪弾くギターに

 切ない気持ち
 持たれかけて


 人知れず
 瞳を潤ませてる ‥






 あぁ ‥
 なんて優しい


 あぁ ‥
 なんて なんて ‥






 とれかけてた
 心の瘡蓋が

 ポロッと落ちた ‥


 頑なに結んでた
 靴ひもまでが

 スルッと解けた ‥






 歩き出せるかな ‥

 靴ひもを
 程よく結び直すと


 月明かり そっと
 降りてきて

 足元を照らした ‥








 どこかで誰かが
 爪弾くギターに

 今夜はずっと
 持たれかかって


 夜風に涙を
 さらしてる ‥






 夜の闇が終わる頃

 やがてギターは
 鳴き止むだろう ‥






 きっと もう
 その音は

 聴こえないの
 だろう ─‥。








2011/11/30 (Wed)

[58] そばにいるよ
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 まだ 傷痕は
 うずくかい ‥?


 さっきからずっと
 月を睨んでさ ‥






 ねぇ 少し
 話さないかい ?


 幸せの話なんかを
 聞かせたいんだ ‥






 一人の夜は
 やたら長いものさ


 こっちへ来て
 暖まるといい ‥






 この手は 君を
 抱き締めたいけど


 今夜は ただ
 そばにいるよ ‥






 君に優しい子守唄
 歌ってあげる






 小さな寝息が
 聞こえるまで


 ただ そばにいて
 歌ってあげるよ ─‥。








2011/11/30 (Wed)

[59] いつかの海で会おう
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 親や先生に内緒で
 校区外の海へと
 冒険する計画

 片道30分の道のりに
 胸が高鳴って
 4人だけの秘密で
 ペダルをこいだ ‥

 国道添いは危ないから
 そう言って
 見慣れない民家の間を
 試行錯誤で
 走り抜けた ─‥

 次第に近付く潮の香り
 あの信号辺りで
 左に曲がったら
 きっともう着くよ

 エリちゃんの予想は
 いつも自信に満ちて
 外れがない

 釣具屋さんの信号まで
 やってきたら
 目の前に大きな海が
 広がった ‥

 さっきまで
 少し不安げだった
 年下のアヤちゃんも
 その景色に
 目を輝かせて笑った

 自転車を止めて
 駆け寄ると
 遠浅の静かな波が
 太陽の光に
 キラキラ揺れながら
 打ち寄せる ‥

 何をするでもなく
 波に近付いては
 離れてみたり

 足首に絡みつく海水を
 蹴り上げて
 ずぶ濡れになったり ‥

 4人で集めた貝殻を
 交換し合って
 砂浜に並んで座った ‥

 私達はまだ子供で
 水平線の向こうも
 知らなかったけれど

 それでも4人で
 世界を手に入れた
 そんな気がしてた ‥

 帰り道優子ちゃんは
 落ちてた空き瓶に
 砂と貝殻を入れて
 自転車のかごに
 大事そうに乗せていた

 私の記念のそれは
 スカートのポッケで
 揺れていた ‥




 大人になった今は
 車で10分の
 見慣れた町並みと海

 缶コーヒー片手に
 少し離れたベンチから
 その海を眺めてる ‥

 水平線の向こうにある
 大陸も
 全部知っているけれど
 あの頃よりも
 なぜが世界は小さくて
 私は俯き笑った ‥

 太陽は西に傾いて
 やがて海は
 小さな波音だけ残して
 夜に見えなくなる ‥

 空き缶を手に
 立ち上がり
 背を向け歩き出した瞬間

 波音のずっと
 向こうの方から
 4人の笑い声が
 聞こえた気がした ─‥

 家に帰ったら
 あの時の貝殻を
 探してみようか ‥

 そんな事を考えて
 振り向いた海は
 あの時と同じ
 潮の香りで
 満ち溢れていた ─‥。

2011/12/01 (Thu)

[60] ポークパイ・ハット
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 キャスケットしか
 被らない私が
 一つだけ持ってる
 ポークパイハット ‥

 あなたと歩いた
 高架下のショップで
 あなたが私の頭に
 ちょこんと乗せて
 似合うと笑って
 買ってくれたもの ‥

 破天荒なあなたは
 いつも皆から変り者と
 笑われていたけど

 それを楽しそうに
 受け入れるから
 不思議とあなたは
 人気者だった ‥

 一度だけあなたが
 連れていってくれた
 裏通りのジャズ・バー

 カラン、と扉を潜ると
 タバコの煙と
 お酒の匂いが充満する
 気だるく陽気な世界が
 そこにはあった ‥

 あなたはタバコも
 お酒も呑まない
 それでもこの空間が
 一番好きだと言って
 奥のソファーに座って
 鼻歌を歌っていた ‥

 最初緊張していた私も
 次第にその空間の
 自由な揺らぎに
 心地好さを覚えて
 気付けばあなたと同じ
 顔して笑っていた

 店を出る間際
 私の顔を覗き込んで
 にっこり笑うと
 あなたは言った

─ どこに居たって
  本当の自由は
  自分の中にある
  そういうものさ ─‥


 それから程なくして
 あなたは居なくなった 

 そのうち帰ってくるよ
 皆は気楽にそう笑った

 私は、何故だかもう
 あなたに逢えない
 そんな気がしていた ‥

 何年もの歳月が流れ
 相変わらずあなたは
 行方知れずのまま

 あの店もいつの間にか
 流行の音楽が流れる
 ガールズ・バーに
 変わっていた ‥


 ポークパイなんて
 私には似合わない ‥

 そう言って一度も
 被ることのなかった
 あなたからの
 たった一つの贈り物を
 何年か越しに初めて
 鏡の前で被ってみた ‥

 似合わないと思っていた
 その贈り物は
 驚くほど私に馴染んで
 そこに映る私は
 見た事のない表情で
 凛と立っていた ‥


 あなたに見えていた
 自由の全部は
 今もまだ見えないけれど

 ポークパイを被って
 今度また
 あの高架下を歩く私は
 今よりずっと
 自由を感じられる ‥
 そんな気がした ─‥。

2011/12/02 (Fri)

[61] かけひき
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 あなたの心に

 入り込みたい ─‥










 長く伸ばした

 この髪を

 肩まで落としたら






 少しは あなた

 私を気に留めて

 くれますか ─‥








2011/12/03 (Sat)

[63] 深海
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 途切れ 途切れ

 浮かび 揺れる 光 ‥






 深い 静けさに

 遠く 届かない ‥






 沈みゆく

 落ちてゆく

 闇の奥へ ‥






 その 安らぎへ ─‥








2011/12/04 (Sun)

[64] 一輪の優しさ
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 道端に寂しく転がる
 空き缶を

 拾い上げたら少し
 優しくなれた ‥






 いつもうまく
 伝えきれない

 感謝だとか
 後悔だとかを

 空き缶みたいに
 捨てようとしたって




 結局 誰かが
 そっと拾い上げて

 行くべき場所へ
 運んでしまうから ‥




 泣かずには
 いられないんだ ‥

 進まずには
 いられないんだ ‥






 宙ぶらりんの心が
 降り立つその日

 僅かばかりでも
 今より優しく
 あれたらいい ‥






 道端に落ちてた
 空き缶を

 綺麗に洗って
 水を注ぐ ‥




 そこに花を一輪
 挿して

 優しい響きの
 名前を付けた ─‥。








2011/12/04 (Sun)

[65] Love letter
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 一行で
 全てを伝える


 あなたの
 奥行き ‥








 余白に落とす
 一粒が


 それを
 受け取った
 しるし ─‥。








2011/12/06 (Tue)

[66] バトン・リレー
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 愛する意味
 生きてる意味


 分からなくても
 嘆かずに






 いつか見える
 やがて気付く


 その時が来たら
 伝えてよ






 後付けだって
 誇らしい ─‥


 そこに居る君が
 素晴らしい ─‥。








2011/12/06 (Tue)

[67] 希望の光 ─Kobe ─‥
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 記憶の傷痕を
 慰める様に


 祈りを灯す
 光のアーチ ‥






 数十万個の
 輝きが


 人々の心に
 力を宿す






 十数年の歳月を
 共に歩んだ道のりを


 忘れぬ様に
 残せる様に






 希望の光が
 ここにある


 消えても尚
 ここにある ─‥。








2011/12/07 (Wed)
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