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望月 ゆきの部屋  〜 新着順表示 〜


[324] 20世紀横丁
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

折り目が
1センチほどやぶれた地図

玄関先でひろったのは
あさっての出来事
です

20世紀横丁までの
道順を
黄色いマーカーで
くっきり、記してあります

歩くべき道は

とのことでした
時計と反対の方角へ
この世に
空、と呼べるものがあるとしたなら
の話です

わたしの知り得る、空
あるいは
道というものは
わたしがこの世に生まれし
あの夏の一日だけのもの
でしたので
眼前にひろがる空
あるいは、道を
歩いていこうとは
とうてい思いませんでした

20世紀にたどりついたとしても
そこにある景色は
さほど
ここと変わらない、と
わたしも
みなも
ほんとうは知っています

ミレニアム、
ミレニアム、
叫んだのは世界でした
あしたを求めて生きる、
世界でした
それに気づいただれか

空に放った
地図
だったのでしょう

2005/02/19 (Sat)

[323] 一円玉のささやき
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

高層ビルのすきま
通勤ラッシュの駅のホーム
それに似た、二酸化炭素の中

たりない、
たりない、と
うわごとのきみたちを
いつだって満たしてあげたいと
信号を送っているのだけれど
ぼくは ただ
呼吸をつづけ
二酸化炭素をはきだしているに
すぎない

ぼくが、生きていないって?
そんなこと
誰かが噂している
だけども
なにもかも失くして
神様、
体温、
声、
そういうものみんな
信じられなくなったときなんかは
さいふの中をのぞいてみると
いい

たりない、
たりない、のうわごとのきみたち
満たすはずのすべては
曖昧で
時間、
酸素、
愛、
そういうものみんな
目に見えないってだけで揺らぐなら
たった
1グラムに
支えられるおもいだって、
あるんだ


2005/02/15 (Tue)

[322] 夕ながめ
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

デジタルは、夏の中

よせる波に追いつくスピード

車を走らせて
たどりついたなら
うすむらさきに暮れゆく
空と海のあいだを
歩こう
風にもゆるがない
涼しい背中



18時20分、の世界

あなたに、見せたい


去年のビーチサンダルは
もう
波にさらわれて
飛行機雲の行方も
かなた
消えゆく、青


忘れたい、と思っていた
たくさんのことさえ
忘れてしまったような、

また、青

2005/02/14 (Mon)

[321] 微温湯の羽
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

ゆるく、なります

( ゆるく、なります )

髪の毛の先っぽ
まで
凍ったまま、に
肩までつかっては
たちのぼって消える
白、を
ひとすじ、ひとすじ、
つむいでゆく

わたしのまばらに
羽、が
うまれます

触れられる

吐息よりも軽くなって
羽は
気体へと
姿をかえます

( ゆるく、なります )

ふしあなだった
わたしの
目、は
いつしかふさがり
かわりに
いくつかの穴を
まばらにみつけてしまいます

かすかな体温だけ

つなぎとめて
ゆるく、なります

そうして
終わりが、終わります


2005/02/09 (Wed)

[320] はるまち
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

ぴんと張った背中を
つむじ風が
らせん状に、なでて
どうしてか
しのび足でわたってゆく
ので
今いる場所がほんとうは
うすい
一枚の氷の上なのだと
冬が深まるごとに、気づく


吸収された世界
きこえてくるのは
静けさの、音
無からいちばん遠い、


( 3オクターブの、振動で )

氷は、やがて
沈んでゆく
沈んでゆく 
わたしの足元
奥深いところ、へ

( 24色の、音を放って  )

そうして、そこに残るもの
ひらかれた朝の光、
つたわる温度、
願いごと、
足あと、


足あとに、咲く
クレパスの

2005/02/06 (Sun)

[319] やわらかく夜は
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やわらかく夜は
わたしと明日のあいだを流れてゆきます


あなたは
向かいあう見知らぬひと、や
すれちがうたいせつなひと、や
ほんの1ミリのすきまでとなりにいる
わたし、

ふいに消え去ってしまったときに
ただ、ひたすらに
ねむってすごすようなひとでした


やわらかく夜は
わたしと明日のあいだを流れてゆきます


わたしは、といえば
なんにも見えないすきまに
ときどき、
チラリと視線をむけては
そのたびに
笑ってしまって、困ります


笑うことしかできなくなって
わたしは
夜のまにまに、
同時になにかを
うしろ手に落としながら
明日につづいている
であろう道を
歩いています


2005/07/04 (Mon)

[318] 誰そ彼(たそがれ)
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

並木道の
みえない、ずっと向こう
から
容赦なくやってきた足音

かんたんには受け入れられない、
決して受け入れちゃいけない、
と わたしは
いつまでも
スカートのすそに
砂のまなざし、

波のカケラ、

ゆらゆらと
からませていた


それは
まだ旅の途中、とでも
いうような


あいまいで
あのひとに、すこし似ていた

2005/01/30 (Sun)

[317] ペットショップの狛犬
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

チワワを探しているのですが
と言ったぼくの前に
店の奥から男が出てきたかと思うと
一礼しろだの
かしわ手を二回だの
今度は二礼しろだの
と散々うるさくつきまとうので
チワワを探しているのですが
ともう一度言うと
ここには置いていないのだ
と男は半分怒り気味に面倒くさそうに言う
ペットショップをまわりつづけて
もうすでに18軒目だったぼくは
さすがに精根尽き果てていたので
それならば犬ならなんでもいいです
と言うと男はとたんに明るい顔になり
いそいそと店の奥から檻に入ったそれを持ってきて
いそいそとぼくに手渡したと思うと
代金も受け取らずに店の奥にひっこんだ
中を見ると、狛犬だった
すごい形相のままワンと泣いた
おまけも付けといたよ、
一瞬ひるんだぼくを見ていたかのように
店の奥から男が叫んだので
もう一度檻の中を見ると賽銭箱が入っていて
振ってみるとジャラジャラと鳴った
チワワとか18軒目とかかしわ手とか
もうどうでもよくなって
いそいそとぼくは店をあとにした


2005/01/29 (Sat)

[316] ビー玉沿線
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ところであなたは
どちらにお住まいですか

たずねると
その人は、
ビー玉沿線ですよ。
とだけ言って
ころころ笑った
笑いながら
ころころすれ違って
ふり返ったときには
もう
うしろ姿は点で
その人の帰ってゆく先には
いつもいつも
きらきらとまばゆい光があつまっている
のが、遠くに見える

わたしは、といえば
ゆるやかに流れる
ベルトコンベアの上に乗っていて
とまるかとまらないかの速度で
ただただ
前へ前へと運ばれてしまうので
二回目にふり返ったときは
その人はもう
消えていて
追いかけることを
いつもあきらめてしまう

遠くて届かないきらきらは
どうしていつも
魅力的なのだろう

ピー玉沿線を
列車がゆく
どれもみな
うしろへ、うしろへ、
流れ
あの光のあつまる、きらきらへと
はしってゆく

ときどき窓から
思い出のようなものが
身をのりだして
わたしに
大きく手をふる

2005/01/22 (Sat)

[315] キャラメルの日
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天窓からのながめが
この世のすべてだとしたら
世界はキャラメルだ。

でこもぼこもなく
のっぺらぼうにつづく地面には
ただただ
マス目だけがのっかっていて
人々は暇をもてあますとそこで
チェスのこまになったり
うらおもてを黒白にぬりたくって
オセロをしたりして遊ぶ
ときには傷つけあったりもする
勝っても負けても
マス目から出ることはできない
世界はかぎりなく甘ったるくて
どこか居心地がいい
甘い甘い地面にはいつくばって
がっしりつかまったまま
甘い甘いにおいにつつまれながら
生きてしまうということは
とてつもなくあやういだろうな
とか。

天窓のない部屋でキャラメルをなめながら
考えたこと。

2005/01/16 (Sun)
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