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千波 一也の部屋  〜 投稿順表示 〜


[759] 盛夏のジーニアス
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描きかけのキャンバスだから

途方に暮れても

あなたは

素足で



包まれてゆくまでの短さは

あれからずっと

丘のまま


ひたすらに眠りつづけては

そっと不思議を

暮れさせて



涙はいらないか、と

あふれた言葉はしのげない雨


陽光を知りすぎた帽子だけ

ひとりを慣れて

扉に寄り添う




おろかで居たかった

誰の真似でもなく

ただおろかで

居たかった




瞳はいつでも空のなかにあって

温度を生みだすことが

腕のちからで


嘘などはどこにもない夏だった


それを

かばいきれない純真が

燃やしつづけたときの向こう




本音はいつでも変わってしまえるから

ありえないまぼろしには

まだ逢えない



夢のつづきはいつまでも夢

まぎれることなく

瞳をとじれば


まもられて



2007/01/11 (Thu)

[760] ネオンテトラ
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飲み干した香水が

ふくらみ過ぎて

くれないの、

ルージュ



釣り上げられた満月に

寂しく揺れたら

尾ひれは

逃げて


そこから跳ねた、

スコールの

おと




争うばかりのダンスに落ちて

紳士も淑女も

華麗な

戦士


めぐる、フレア


つめたい床には羽飾り

スパンコールで

淡く、とべ




夜を待ちわびて、から

うまれていけない

熱帯雨林


ないものねだりの極楽鳥


夕陽はふわりと、オレンジ

バイバイ



気泡もそこそこ不自由ないろ



スカートを裁つ、

ランプが

水槽



路上の孤独が群れる不思議を

つかまえながら

溺れる、

甘さ


2007/01/11 (Thu)

[761] 忘却のシルク
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傷つけられた優しさを疑えなくて



それは

無人の駅をあわれむかたわら

あやまることに落ち着くような


似ているものはゆるせない

冤罪の

かぜ




七月は

どこまでも気がつけない海だった


忘れた記憶を空へとあずけて

いつまでも蘇らない

とわの香りが

八月で


公園の輪郭は滲んでしまった




連れて行くゆび

それとも連れられて行くゆび


わからずにいる背中で時計は

静寂を刻み込む


立ち止まるということは

こんなにも

鋭くて




涙はなにも包まない


包むとすれば

それはかなしい気位の熱



移ろいやすい秋の景色に

たやすく添えたら楽かも知れない

けれど


沈めない行方に誘われ続けて

やわらかな枯渇に

まぼろしを呼ぶ


手慣れた眠りにさすらいながら



2007/01/11 (Thu)

[762] 調律
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小指はしずかにうつむいたまま



二度とは

乗せてもらえない背中の

去ろうとはしない

その無言


あいまいな距離のなかで

やさしい言葉が

やわらかに

燃えた


ためらいの数は

唇に映えて




行き止まりには後ろ姿を


あらわれるほど

硝子は薄く

冷たくて


まだ見ていないすべての無色を

嘘があふれる


褪せて震えて頼りなく、鍵


そこは

どこにも遠くない


つながらない



埋もれるものが声ならば

降り積もるものも

這い出るもの





手さぐりで永遠を散る

つかのまの

季節は



失うことが階段だったのかも知れない


ひかりを憶えた鈍痛に

小指はしずかに

うつむいた

まま



2007/01/11 (Thu)

[763] ウィンター・ガーデン
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 灰色を抱きしめて、つぼみ


 破れることを募らせて、

 つばさ



黄昏に

いつも遅れて招待状は

焼けてゆく

夕焼けてゆく


そうして憂いは懐かしさに煙り、



 清らかなけがれが、ゆき


 なにも知らない者だけに、

 そら



満たされない音色をつぶやけば

こころも震えて

ひとつに

消えて



しずく、

こぼれる間際に真冬を聴かせた



 頑なに鎖をむすぶ、はな


 捨て去るたびに降りそそぐ、

 すな



そっと滅びたら

やさしい傾斜のはじまりのとき


誕生は底から、



 不思議を揺れて、かぜ


 実るともなくあこがれて、

 つき



息吹、

氷をわたり氷へむかう


咲き誇ることのうすくれないに



2007/01/11 (Thu)

[764] ハニー・ステップ
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すきなままでいいと思う



しなやかさを

失わないことが蜜だから


あちらこちらを踏みながら

まみれてしまえ

踏まれても



かかとを見せて

忘れたいろで


すぐにもつまずく

つまさきが

すき



指をくわえながら

いつか子どもに

戻っていった


レトロ、


舌がもどかしくて

もうわらうしかないよね



週末はいつもラストシーン

巻き戻して欲しいのに

離れてしまう

おとなの

仮面


そのままでは

猛毒にすくわれてしまうよ


たぶん

そのままではなくても



大きなものから小さくなろう

知らないふりでも育つから


ステップ、ステップ



すきなままでいいと思う


わがままでいいとは

思わないけど



2007/01/11 (Thu)

[765] 月歌
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月のしずかを詠むほどに


月を

寡黙に封じ込む



 聴きそびれていたかも知れない

 のに


 細い肩には雲をのせ

 風をたよりに

 風さえも

 去り



物云わぬ、とは誰の語りか


むなしき胸から離れもせずに

物云えず、して



 帯に添えるゆびさきの

 つつましき、その

 おぼろな

 帯は


 ながくひかりを浴びぬまま


 あえなく燃えて

 あかりと散るのみ



草花が、教えない


海ならば

聞こえない


握った空から空は逃げても

響いていかない



 なお、月は詠み



それとは気づかず

砂のごとくに

月を詠む



みだれぬ調和をかなしく奏でて

くれないに凪ぐ

蒼のいただき


迎えているのは

見送りの、




2007/01/12 (Fri)

[766] 夜汽車
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窓の外は、夜


それゆえ汽車は吐息のように

曇り曇って

揺れに

揺れ



そこからなにが見えますか



わかりやすいものは

なぜだか頼りなくおもえて

背伸びをしてみたけれど

やっぱり瞳は黒でした

いつもいつでも



ときどきは

いさぎよく溺れてみたいものですね

たとえば愛に



夜汽車に乗って

あるいはそれすらも遂げられぬまま

窓の内は、窓



あなたはどこを往くいまですか



相席でも

すれ違う車両でも

仰ぐ月には変わりがなくて

どこまでも風ですね

気がつけない嘘、

なのですね


荷物は軽く済ませたいのに



叶うなら

やさしい町まで

待つことだけを忘れたわたしを

こころゆくまで笑えるように



いつかの影はもう遠くても

眠りはそばに

必ずそばに


なくしたものはそのままですか



2007/01/21 (Sun)

[767] 空のしるべ
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散文的であるかも知れない

晴れ間を見つける

こころはいつも



古くはならない

あたらしくもならない

それが空なら

繰り返すものごとに

少しだけ優しくなれそうな

そんな気がした



 照れる日は

 はね返されて

 ただまっすぐに

 まぶしく

 逃げて


 もどかしさのなかの微笑みを

 抱きしめながら

 守られながら

 あかるい恥じらいに

 気がついてしまいたい


 句読点のあやまりを

 広くほどいて



いつしか失っていた順番に

孤独はなおさら

嘘へと傷んで


静粛に

静粛な調べは

美しさを離れた毒薬として

続けるしかなかった韻律だった




沈まない空に

背いたところで

やわらかな誤解は崩れない


誰かのただしい遠近法に

すくわれながら

今日もまた


散文的であるかも知れない


知らない空から

知らない空

まで


2007/01/21 (Sun)

[768] 百花繚乱
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浅はかな哀しみを

どこまでも赦してしまうので

慕っています、

ひとの背を



重ねるような

重ねられるような

だれのものとも知れぬまま

だれにもどこにも

辿り着けずに

ひとの背は

いつか、

行方を忘れてしまったようです

それゆえ見つめて

あるいは見つめられて

 削りゆくひと

 剥がれゆくひと

 撰んでしまうひと

そのまま、

怯えかねてゆけるなら

かろうじて影は

かたちの為に

霞みやまぬ、

彼岸です



 のぼりゆけますか、

 うみの底まで


荒れてしまう傍らから

此岸は鳴ります

憂いも徒労も

あざやかに、闇

なにも

たやすく

消えません


 託していますか、

 こぼれる総てを

 たよりに漕ぎつつ



詠みびと知らずは絶え間なく

それがいしずえ、

巡りの花かと



預かりものをなくした素振りで

そよいでゆきます、

月をいくつも

咲きながら


2007/01/24 (Wed)
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