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千波 一也の部屋  〜 新着順表示 〜


[1280] 吹雪
詩人:千波 一也 [投票][編集]

吹雪はなにも砕かない

非力な命を
かばう言葉が
吹雪をいつも悪者にする



吹雪はなにも奪わない

及ばぬ知恵を
たすける言葉が
吹雪をいつも罪人にする



吹雪はなにも残さない

叶わぬ受容を
いたわる言葉が
吹雪をいつも魔物にする


2014/07/29 (Tue)

[1279] 直感
詩人:千波 一也 [投票][編集]

案外
やさしいことだろう

冬のおわりを思うのも
春のたよりを受けるのも

案外
やさしいことだろう

夏のかげりを思うのも
秋のかたりを受けるのも


案外
やさしいことどもは
大方するり、と逃げるから
わたしの直感ははぐくまれやすい


ささいな願いに
傷つきながら
ささいな願いで
傷つけながら

ささいな成就に
満たされながら



2014/03/22 (Sat)

[1278] 闘いと呼ぼう
詩人:千波 一也 [投票][編集]

懐かしい、温かな風は
もういない


はしゃいでも、ひとり
つくろっても、ひとり

つぶやくほどに、
黙り込むほどに。


嘆いたら、塞いだら
すくわれる、かな

我が身かわいい、と
まもりに徹すれば
すくわれるかな


だけど、
もしも、
きっと、

水をはらんだ
言葉のかたすみに
わたしを立たせる日々が
みえる限りは
まだ、やめよう

せめて
わたしだけは
呼んでいよう

ひとりぼっちでも、
これはわたしの
闘いと。


2014/03/22 (Sat)

[1277] 水の冠
詩人:千波 一也 [投票][編集]


水に編まれた者たちは
銀の縛りを解きたく
銀の向こうの
金色を請う
その
或る種の隷属がもたらす
透明な階級

整い過ぎた軋轢を
整え切れぬまま
王冠は
かろうじて
霧の中に浮かび上がる
錆びることは許されず
朽ちることも許されず
悲しみの意を
問えぬ身として
悲しい者たちの
頭上に
座す

古びた時計が告げるのは
まったく褪せないものであり
まったく褪せたものでもあり
まったく生まれたばかりの
ものでもあるから
沈黙は花となる
描くに値する
花となる

水の法の下に
すべての差別は寛容され
同様に
撤廃を促されもする

水に編まれた者たちは
自らを省みるすべを
知り過ぎた挙句に
その
底辺ばかりを
見つめてしまう
それは
必ずしも
頂に
背くことではないけれど




2014/03/22 (Sat)

[1276] 雪わたり
詩人:千波 一也 [投票][編集]


雪のなかにあらわれる
物語
色もなく
声もなく
ただ
ただ
素直な物語

わたしの指に
たとえ消えてしまっても
物語までは
なくならない
それが


誰かの灯りに
彩られたとしても
物語は
かわらない
それが


辿り着いた地面から
ふたたび
そらへと
流れはじめても
物語は
まよわない
それが


わたしの
そとに降り積もる
物語は
わたしの
うちにも降り積もる
居場所を告げず
しるしを告げず
ただ
ただ
しずかに
物語であることを遂行して
いつか、
やがて、と
わたしを
揺らす




2014/03/22 (Sat)

[1275] 望遠鏡
詩人:千波 一也 [投票][編集]


遠くを見ていると
そこに至るまでの道のりが
ないもののように
錯覚してしまう

けれど
その錯覚が
誤りだとは言い切れない
正しいこととも
言い切れない

わからないことを
わからないままにして
のぞき見る鏡には
いったい何が
映るのだろう

いったい誰が
見ているのだろう



2014/03/22 (Sat)

[1274] 凍れる花
詩人:千波 一也 [投票][編集]


一瞬を

その身に
耐えうるだけの一瞬を
凍れる花は
抱き締める

その
抱き締める力に比例して
花の強度は
もろさを
高めて

誰、と決めずに

凍れる花は
誰、と決めずに
いずれの手にも
砕かれやすい



2014/03/22 (Sat)

[1273] 夢だもの
詩人:千波 一也 [投票][編集]



変幻自在なあやしさを
とにかく、すぐにも
体得したいね

敵があるのが仕方ないなら
そうしてかわしたいものだね


矢継ぎ早に寄せる白目には
理路整然と語るしかないね

日が暮れたって
夜が明けたって
黒目になるまで付き合う覚悟を
持ちたいね


何事も
それなり、の知性でいいはずだね

それなり、の定義は難しいけれど
適切な痛みが伴うならば
おおむね良好な
定義だね


恥ずかしくてもいいじゃない
消え入りそうでもいいじゃない

あなたが指さしかねている
その幻を
あなただけは
確かに愛してやまないのでしょ

べらべら漏らさない佇まいが
ゆかり正しい秘密の所作だもの

後ろめたさは健全の証だね


寂しくなりたいね
虚しくなりたいね
とことん、とことん
思い詰めたいね

あなたにしか守り得ないのが
夢なんだもの
あなたのための夢だもの
哀しいことに耐えなきゃね
苦しいことに耐えなきゃね

だって、どうする
ほんとに失せてしまったときは


明かりなんて要らないね
目の前が見えたらそれで上出来だもの
目の前すら見えないなんて
よくある話だね

明かりの素質があるとしても
それはあなたになんて
向かないからね

そうと知ってもなお
明かりを求めるかい


責めるものには
責めさせておきなさい

無視ではなく
蔑視ではなく
ないがしろではなく
責めさせておきなさい

ときに
その責めるものが
あなた自身であることもあり得ると
わかって、ね


支離滅裂な真っすぐさを
いつも、いつでも
頼りにしていたいね

迷惑だろうと
身のほど知らずだろうと
世間知らずだろうと
愚かだろうと

迎えに行かなきゃならないからね
ずっと、待ち続けてくれるのが
夢だもの


たやすく呼べる、
たやすく呼べるだけ、の
あなたも
わたしも
同志だね


2014/03/22 (Sat)

[1272] 追いつけるなら
詩人:千波 一也 [投票][編集]


数えきれない星座のようなきみが
言いようもなく妬ましかった

放課後の教室に射す茜の切なささえも
きみは上手に味方につけている気がして
ぼくは焦りだけを募らせていた


裏切ることをしない嘘もあるんだね
この世には

見限ることをしない本音もあるんだね
この世には

いつまで待っても買い手のない品物みたいに
ぼくに向かないすべての誉れを
詳しく知ることがぼくの日常だった


たぶん
追いつけるなら
何だってしただろう

でも、
なりふり構わずに
怖れから逃げるすべだけが
ぼくに光を与えてくれたから
今さら対峙しようだなんて
思えない


抱えきれない荷物など
ぼくの背には在りはしなかった

自由の意味に
こころから真剣に迷えるようなきみが
言いようもなく妬ましかった

追いつけるなら
何だってしただろう、なんて
過ぎたあとなら幾らでも語れる

何も残すことのない重みに耐えられるなら
幾らでも語れる



2014/03/22 (Sat)

[1271] 羽つき
詩人:千波 一也 [投票][編集]

かるく、かるく、
つかれる羽は
かつて
どこかの空でした

あかるく、かるく、
つかれる羽は
かつて
どこかの水でした

まあるく、まるく
つかれる羽は
かつて
どこかの頂でした

知らぬが仏の小路では
花の童の盛りです




2014/03/22 (Sat)
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