詩人:大示 | [投票][編集] |
噎せるような雨の匂いが
少し冷たい風に混じって
僕のところまで届いたよ
ねぇ
空の下にいる遠い誰か
涙、流してはいませんか
冷たい風の中で
俯いてはいませんか
この湿った土の匂いに
君の涙が混ざっていませんように
もうすぐ太陽が出てきます
遠い誰かさん、泣き終わったら
少しだけ、笑ってみて下さい
詩人:大示 | [投票][編集] |
何が神様になるかわからないね
誰が神様に成りすますか
わからないね
どの神様が本物かなんて
きっとずっとわからないままだね
沢山の存在の中から
人は自分たちに都合のいいものを
迷わずに選んでいくんだろうね
楽な方を戸惑うことなく選んで
面倒が起きれば誰かのせいにする
それもきっと変わらないままだね
そんな人達を助けようと
手をのばす人がいて
その手をとり、涙するのも
これからも、変わらないだろうね
どんなに理想的な世界になっても
きっと、変わらないだろうね
詩人:大示 | [投票][編集] |
夜を癒す、優しい歌声と
雨音の竪琴
思い出を紡いでく
忘れていた、母のあの温もり
二人で聞いていた子守唄さえ
面影は遠く、僕を拒むけど
心は確かに憶えてる
忘れはしない、最後の微笑みよ
どうか、消えないで!
傍で眠る、あなたの目蓋から
哀しみの欠片が、音もなく流れたの
ただ見つめて、冷たい指先に
そっと染み込ませて
口付けていた
甘やかな夢は、目覚めたその時
苦しい現実に変わる
わかっているのに
夢を見るのは何故?
誰か、教えて!
詩人:大示 | [投票][編集] |
あの日、笑ったあの人の
きれいな横顔、心の中に
あの時、泣いたあの人の
静かな震動、手のひらに
いつも怒っているような
厳しい顔は、瞳の中に
たとえ、あなたがいなくなっても
私は、たぶん大丈夫
あなたも、大丈夫かな
最後の時まで、あなたのままで
いてくれますように
勝手な願いは秒針の音に紛れて
姿見せない明日へ
詩人:大示 | [投票][編集] |
僕の中にある苦しみは
あなたが何を言おうとも
僕にしか、わからないもの
あなたの悲しみは
僕が何を言おうとも
あなたにしか、わからないもの
『いつ消えるのだろう』
『いつ乗り越えられるのだろう』
『いつ?』
『いつか』
『いつか』なんて日は本当に
あるのか、わからない
それでも一緒に行こう
そう言って振り向いたその顔には涙のあとがあるけれど
あなたは笑っていた
完璧に生きられる人なんていない
格好悪くても
歩けるうちは、歩いてみるよ
最後に出迎えてくれる人の
優しい眼差しを思い浮かべながら
詩人:大示 | [投票][編集] |
価値観も、何もかもバラバラの
この空間で
自分は正しいと言えるだろうか
人との関わりを断ち切ったままで
自分だけが苦しいと
言えるだろうか
比較することが難しく
褒められたものじゃないけれど
今、僕は、どの場所にいるのか
しっかり知っておきたいんだ
詩人:大示 | [投票][編集] |
動かない心に、忍び込む暗闇
苦痛すら理解することかなわず
私は決められた運命を歩く
誘われるまま、道なき道を進む度
周りの声が、景色が幻に
傍にいた人達さえ見知らぬ人に
なっていく
このまま、私は壊れてゆくの
普通なら、直視できないほどの
惨劇を、何処か遠くで眺めながら
今までの全てが悪い夢ならば
どうか、お願い
私の目を、さまさせて
今までの全てが本当ならば
正しい運命よ
どうか、私を裁いてください
詩人:大示 | [投票][編集] |
一枚の写真の中
笑っている僕がいる
この時の笑顔が偽物だったのか
本物だったのか
そんなことは
今となっては、わからないけれど
『本物だったら、いいな』と
僕自身が
そう呟けるようになったから
ほんの少しだけ
マシになった気がしたよ
その時の一瞬の感覚の記憶なんて
あやふやで
自分の都合のいいように黒く塗り替えてしまっているなら
もう一度、周りをよく見て
白紙に戻すことだってできる
それは僕にしかできない
大切な仕事だ
詩人:大示 | [投票][編集] |
この世の終末が来る
まるで『夜』という暗闇に
頭を支配された様な突拍子の無い
この考えは
私ではなく長年、傷を負い続けた思考が産み出したものだ
灰色の細胞達が、私を『恐怖』に
引きずり込もうとしている
繰り返し、繰り返し、その都度
最高の恐怖へと導こうとする
その都度、私は抗う
暗い感情が存在している
認めるが、支配はされない
正と負を持った、不完全な生き物
これこそが私だ、と
詩人:大示 | [投票][編集] |
気がつくと、僕はドアの前にいた
手持ちの粗末な造りの鍵では
開かないようだった
僕は途方にくれドアを蹴飛ばした
『やかましい』
向こうから開けてくれたのは
お節介な友人と家族達だった
僕の鍵は、僕と同じで
まだまだ未熟でひねくれていて
ぽっきり折れそうだけど
生きているなら
時間があるなら、いつか最高の
鍵が出来上がるだろう
だから、願わずにはいられない
ささやかな平穏が続きますように