詩人:アルバトロス | [投票][編集] |
あの涙はどこへ行った
夕やけのなかで叱られて泣いた
赤とんぼが空を切り取って
雲が月の向こうへ帰っていった
あの涙はどこへ行った
ふるさとが急に恋しくなって泣いた
カップラーメンのフタの滴が
冷たくなって机を濡らした
あの涙はどこへ行った
弱々しく握る手を握りしめ泣いた
真夜中の病院の窓に映る泣き顔が
ぼやけてしまう前に目をそらした
涙にさよならを伝えられず
涙はさよならも言うこともなく
今は僕は笑顔でいるよと
自分自身に語りかける
言い聞かせるように語りかける
そして乾いた唇をペロリと舌で舐める
詩人:アルバトロス | [投票][編集] |
草ぼうぼうの空き地でゴミが散乱しても
誰も気にしない
お洒落なカフェでゴミが散乱してたら
みんな大騒ぎ
あなたは何を求めてるの?
何を祈っているの?
どうして涙を流すの?
わからないからやめる
考えるということをやめてしまう
詩人:アルバトロス | [投票][編集] |
いつもの帰り道
ふとした瞬間に見つけた
花が咲いている
きれいだな
僕は花を見つめる
すると花も僕をじっと見ている
摘んでしまおうかな
いいや、やめた
本当に美しいものはただそこに在る
それが美しい
そして少し妬ましい
僕は座り込んで花を眺める
時間を忘れて見つめる
時間も僕のことを忘れてくれたら良いのに
そんなことを思ったりして
ああ、もう日が暮れる
詩人:アルバトロス | [投票][編集] |
僕らを現実に縛りつける空想の鎖
ひとつずつ外す
丁寧に慎重に
現実は音もたてずに消えるだろう
何も残しはしないだろう
という空想
ひとまず決めつけて
踏ん張って
そして走り出す
身体中にあらゆる感触を
気持ち悪くなるくらいに感じながら
存在するということに恐怖する
何もないということにも恐怖する
すべてフェイクで真実なのに
お互いを束縛する世界
優しい世界
誰も導かない世界
案内人のいないキリのない旅
詩人:アルバトロス | [投票][編集] |
夜はただの時間帯のこと
そう言われてしまえば
確かにその通り
セロテープで朝と繋げて
つぎはぎのこの気持ちにそっくりだ
夜はこのよく知る空間のこと
そう思い込んでしまえば
生温い優しさ
そのまま朝に運んで
光のなかに霧のように消えていけ
君のいない夜が
君を想う気持ちに比例する
膨らんで醜い姿をぼかしていく
僕は誰かのふりして笑う
詩人:アルバトロス | [投票][編集] |
君は何をしていても可愛い
だからどんなに願っても僕と君は他人だ
それは哀しくて
それは最高に素晴らしい
極端なイコールで
底なしの希望を未来に描く
自分のことはいくらでも否定的に
君のことはいつまでも肯定的に
答えを導かない永遠のイコール
詩人:アルバトロス | [投票][編集] |
自分自身の意思で
進んで来たはずなのに
誰がこの今を望んだ?
自分だよな?
なんて自問自答して
いや自答のふりして
音はなく口をパクパク
電池の切れかかった
時計の秒針のように
小刻みに震えて
唇と舌の先が乾いて渇いて
でも振り向けば確かに
自分の軌跡は
電子化されて
風化せずに残っていて
ポンッと爆発させて
蒸発させて
空の青さに歪ませて
ああ やっかいだ
詩人:アルバトロス | [投票][編集] |
朝、目を覚ます
しばらく布団と一緒に丸まって
時間と一緒に寝過ごしちまう
目を開ければぼんやりと薄暗い
視点がなかなか定まらない
強引に静けさだけが聞こえる
起きなきゃね
行かなきゃね
思い通りにならなくても
布団が重くのしかかる
あんまり気分は良くないけれど
布団と一緒にはねのける
詩人:アルバトロス | [投票][編集] |
おはよう。
今日は寒いねぇ。
こんにちは。
髪を切りましたね。
さようなら。
また明日も頑張りましょう。
上っ面かな。
上っ面だよねぇ。
でも僕は嬉しいよ。
心の表面をなでられて僕はくすぐったいよ。
しかめっ面していた心が少し微笑むよ。
上っ面の言葉になでられて。
意味はないかもしれない。
でもそこに誰かの想いがあるよ。