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清彦の部屋  〜 投稿順表示 〜


[141] 事象の地平線
詩人:清彦 [投票][編集]

ひどく不安な色の空の下で

何処までも続いている道は

静かに、導くように

一本のレールみたいに敷かれている


周りを見渡すのは僕の自由で

景色がどんな姿であろうが

それも景色の方の自由さ

錆びた看板に書き込まれる文字だけど

僕には読めない警告の予感

僕は頷くように瞬きをして

再び、目の前の景色を飲み込んでゆく



もしもこの先

僕が僕じゃなくなってしまった時に

君は何処で何をしているんだろう

アコースティックギターと聴こえる

雨音と体温の匂い

気だるい…燃え付きそうな純粋さ


確かに感じていた

苦しいほどの繋がり

愛しいとか、悲しいとか

ぐちゃぐちゃに織り混ぜたような

空? 星? 君? 僕?


地球と空を別け隔てた地平線を求めて

僕は、何処までも歩き続けている


そこに何かある気がして止まない



あの愛の秘密や記憶や

それに繋がる真実や悪魔か…


そこに何かある気がして止まない


2016/01/12 (Tue)

[142] 決して消えない灯火
詩人:清彦 [投票][編集]

始まりはもっと純粋な

輝きだったはずと

思い返して深い呼吸の中

静かに流れた時間を

もう一度掴もうとすると

あの頃見た月の形は

やはり今でもそのままさ


不安に思うたび

寒さを暖めるふりして

無意識に手を結んでいたけど

自分の身体を強く抱いて

生きているのを感じたかった



山積みの本には

文字の羅列が


僕の理想には

確かな輝きが


熱を帯びて吹き荒れそうな

どんな夜だろうが朝だろうが



生まれたまま流れ続けて

鼓動を止めない衝動だけど

言葉では捻れてしまう

叫びや涙がある



決して剥ぎ取れはしない

僕の心の居場所は何処?

いくつもの決意と選択の度に

枝分かれては死んでいったのだろうか?

違う 違う 違うさ

あの瞬間は今でも

あの瞬間の永遠の輝き


決して消えない灯火と魂

言葉では捻れてしまう

叫びや涙がある



限り無く可能性を無くして

失われてしまった未来や夢は

無価値なガラクタとして

記憶の果てに転がり続けるのか?

違う 違う 違うさ

僕らは痛みを分かち合う

僕らは希望を観測できる


決して消えない灯火と魂

言葉では捻れてしまう

笑顔や純粋がある

2016/01/12 (Tue)

[143] 星を数えて
詩人:清彦 [投票][編集]

誰か来たみたいだね

静かにしておいて

抱き寄せたまま

君の形が 僕の形と溶けた


まだ子供みたいな

怯えた不安げな顔は

僕に愛する痛みを

感じさせていた



たったひとつ…

その切なさは

儚いものだとしても

決して

不幸ではないでしょう?

悲しみじゃないでしょう?



星空眺めて 煌めきを数えた

あの空に繋がる 夜の虹の架け橋

君の瞳に浮かぶ 涙の熱さは

星のように 散らばる

いくつもの夢

いくつもの愛




カーテンが揺れる

夏の風に 身を委ねた

柔らかな運命のようで

僕らも そんな気がして



もっとひとつ…

その切なさは

儚いものだとしても

決して

不幸ではないでしょう?

悲しみじゃないでしょう?



失うことが恐ろしいまま

愛することの

弱さと強さの 曖昧さは

誰にもきっと 解りはしない

僕の腕の中で 眠る君を抱いて

守りたいと願う それだけさ


星空眺めて 煌めきを数えた

あの空に繋がる 夜の虹の架け橋

君の瞳に浮かぶ 涙の熱さは

星のように 散らばる

いくつもの 夢

いくつもの 愛



2016/01/13 (Wed)

[144] 青く遠い日々に
詩人:清彦 [投票][編集]

信号が替わって向こう側から

同級生とすれ違い様

「何処へ行くの」と聞かれたから

「散歩だよ」って返した


休日の午前中は穏やかな空の下で

歩く速さも自由でゆっくり流れていた



今朝見たニュースでは

何処か遠い国で

戦争が始まったって

語っていたけれど

変わらない青空

僕にはわからなかった

日々に 日々に 日々に



あの駐車場を曲がったら

電柱通りの登り坂

あのコンビニのあるところは

その昔駄菓子屋さんだったらしい


代わる代わる景色を眺めて

ゆっくり歩いていたけど

約束の通りの時間と場所には

君が立っていた



笑顔で手を振って

君が駆けてくる

僕は何でもないような顔で迎えたけど

本当はもうずっと

会いたくて仕方なかった

君に 君に 君に



流れる曇のあり方は

自由な気がしていて

形さえ思うままだったのなら

どんなに嬉しいのやら


ソーダを買おうよ

店に向かったら

さっきすれ違った同級生が

自動ドアから出てきた



慌てて手をとって

君と駆けてゆく

今までの景色が巻き戻っていく

このまま もう ずっと

どこまでも駆け抜けていこう

ふたり ふたり ふたり


僕らの青春は

流されてしまったって

今までとなにひとつだって

変わらないものがある

あのまま もう ずっと

ふたりは駆け抜けていた

日々に 日々に 日々に




2016/01/13 (Wed)

[145] いつかまた雨が降ったら
詩人:清彦 [投票][編集]

まるで内緒話に耳を澄ますかのように

君は黙って僕の言葉を待っていた


僕の呼吸に乱れはあるだろうか

真っ直ぐに僕を見つめている瞳

逸らすわけにはいかないようだ

愛しいというのは

愛しいだけでは済まされない

観察しているんだね




僕たちはデートなんてしない

一緒にいられるのなら

別に何処でもいいのさ

それがこの味気無く

見慣れた退屈な部屋のなかでも



毎日はたんたんと

暖かい日差しも恵みの雨も

時には嵐も連れてくる



僕は何か大事なことを

忘れてしまっているんじゃないか


どうもずっと

そんな気がするのだけれど




永遠のような時間




君は黙って 僕の言葉を待っていた

耐え難い静けさに揺すられて

そっと、溢れた結論


さようなら。


愛しいというのは

愛しいだけでは済まされない



痛みも苦しみも喜びも

この空の中

時計の針が刻む螺旋の中に

全て閉じ込めてしまえばいい



いつかまた雨が降ったら

そっと

そのときまで



2016/01/13 (Wed)

[146] あの場所に帰る頃
詩人:清彦 [投票][編集]

相変わらずだよなぁって

電話で話した

懐かしい

もう 遠い日


夕方の帰り道が

当たり前のように

この僕の、辺りを包み込んだ



それじゃあなって

また僕は僕だけの夜に帰る

まるで、一日を終えて

夢に旅立つように



静かな部屋には

僅かな香

小さな気がしてた

笑顔や冗談の小言たち



そうだな

帰り際にあの娘の家に寄っていきたい

もう、会わなくなって

随分 経った けれど


あの頃と変わらない笑顔で

懐かしいなぁ

…だなんて 言いたい



逆さまに返した砂時計

…ねえ?

本当はずっと長い間

愛していた気がするよ



いつまでもずっと一緒だって

手を繋いだ笑顔が

遥かな場所で今も生きてる


あの頃と変わらない笑顔で

じゃあまたな

…だなんて言いたい



もう一度、さよならのつもりで

ありがとう って

笑顔で 言ってみたい




2016/02/05 (Fri)

[147] 猫飼い
詩人:清彦 [投票][編集]

彼は猫を飼っていた

彼は猫を好いていた

猫はというと彼を好いてはいなかった

だが彼の住む温かい部屋を好いていた

日に二度与えられる餌を好いていた

窓から降り注ぐ日光を好いていた



彼の家族は既にこの世を発っていた

彼は嫁もとらずに仕事に打ち込んでいたので

周囲は彼を心配した


彼は疲れていた

実に彼は病気に蝕まれていた

だが彼はあるとき悟った


もろもろの悩み

不安や怒りや恐怖は彼自身に過ぎなかった

同時に、彼の今までの一切の歓び

安心や信念や快楽

それらも、彼自身に過ぎなかった

それらはすべて幻であった

それら一切は迷妄であった



彼は、彼の一切は欲望や願望であることを知った

彼は、彼の一切を条件付きの現象であることを知った

彼は、彼の一切をただの流れであることを知った

彼は、彼の一切を言葉には出来ないことを知った

彼は、彼の一切を言うなれば彼自身であることを知った

彼は、彼自身とそれ以外の区別の必要が無くなった


それ以来、彼は執着を断った

もはや何事も愛でず

何事にも怒らず

何事にも悩まされず

何事にも抗わず

彼は、彼と一切を同化してひとつに静まり返った


それから、猫は餌も与えられずにいたので

彼が樹や岩のようになったのだと思って

やがて、彼のもとを離れていった



2016/02/06 (Sat)

[148] 笛吹きの夢
詩人:清彦 [投票][編集]

笛吹きの男は奏でる

彼が笛を吹けば

風は静まり、辺りを包んで

花や草は彼の方に傾き

時間は止まったように

彼の音だけが流れ

全てがその流れのみに集まり

全てが音楽と調和し

疑うことなく寄り合うのだった



彼は周囲から愛され

豊かに溢れる歓びを

笛の音に響かせては

幸せに生きていた


しかし時代は押し寄せた

ある時、地響きのような轟音が近づき

激しい熱風の嵐が吹き荒れ

雨は赤く重く降り注ぎ

人々は恐怖に顔を歪め叫んだ

戦争は容赦なくやってきた


すべて終わったとき

彼の大切なものは

笛以外の何も残らなかった

それから彼は笛を吹かなくなった



ある時、彼の眼は

ぼんやり遠くを見つめて

若き頃の満ち溢れた光は失われ

背中は枯れ木のように曲がり

唇は見えないほど髭が覆い被さり

その色は疲れたように白かった

彼は老いていた


戦争の悪夢に覆われ

亡骸となった人は

蟲に喰われ姿を変え

土に還りその姿は失われ

その上に次々と

花が咲き乱れて色が甦り

風に吹かれ踊っては

蝶々たちが甘い臭いに誘われ

その周囲をまた彩るのを見た



彼は永すぎる時の流れを

幾度も見つめていた

そして、許したように

ゆっくり頷いては

静かに笛を吹き始めた

その音は老いていてゆったり伸び

あの頃よりも優しく

哀しみや慈しみも含んでいた


風は静まり、辺りを包んで

花や草は彼の方に傾き

時間は止まったように

彼の音だけが流れ

全ての周囲がその流れのみに集まり

失われた人々も

哀しみや慈しみ

今までの過去の全てと現在の全て

それら全てが、音楽と調和し

疑うことなく寄り合うのだった

その時、これらはもはや

あの頃と区別がつけられなかった



演奏を終えて彼は

笛を手放し、空中を見上げて

座ったまま、動かなくなった



そしてまた、時間は流れ

彼は土に還り姿を消し

その上には花が咲き乱れた

2016/02/11 (Thu)

[149] 日はまた登る
詩人:清彦 [投票][編集]

沈んでいたはずの太陽が再び空を

込み上げてくる歓びで満たすように

やっぱり、何度でも

僕は生まれ変わるんだよなぁ



雲は自由自在に見えて

実は風と追いかけっこ

街はきらびやかに光って

毎日がお祭り騒ぎ



当たり前のように流れ流れる

人も時間も音楽も

移り行くグラデーションの模様


なんだ!

僕たちも雲と同じじゃないか


初めっから違っていた解答

この世は悲劇なんかじゃない



ひまわりがまた

太陽を見つめているよ


何度だって何度だって

僕は何処にでも行ける


随分と片付いた部屋の端で

あの日のぬいぐるみニッコリ


いつまでも変わらない

純粋な歓びそれ自体が

僕の世界を満たしていく

2016/02/24 (Wed)

[150] 気付けばそこに
詩人:清彦 [投票][編集]

みんな、なかなかどうして

ひとりぼっちでは

生きていけなさそうだね


僕が空に目を奪われるのは

果てしなく広がる青さが

世界を同じように包み込んでるから?


甘えん坊の猫が

しきりに撫でてとゴロゴロ鳴らす

悲しみも痛みも雨も死も

背負いながら、まるで無いように

愛があって、みんな笑顔



ちゃんと選んでるんだ

最善の選択をちゃんと

知らず知らずのうちにさ



だから僕は責められないよ

君が違う誰かと暮らしても

なんならこの痛みだって

音楽とお酒によく合うね


煙草の煙に生まれ変わって漂う

まるでどうしようもない気持ち

こんなふうに僕らは

わからない未来を

わからないまま受け止めて

ふわふわ、くるくる

気付いたらいつの間にか

そこには

愛があって

みんな笑顔

2016/03/31 (Thu)
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