詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
あいつを捜しています
あいつを知りませんか
ゆめゆめ知りませんか
いよいよ知りませんか
かねがね知りませんか
最後に見たのはいつですか
あいつの声を聴きましたか
あいつは寝てばかりいますか
あいつはやたらティッシュを持ち歩きますか
あいつはたしかにいたんです
あいつは確かにここに座り
くるぶしを掻いたり
目をこすったり
台所を往復したりして
素敵なやつでした
あいつがホラを吹きながらササミ肉を食べているとき
マグリットの絵みたいな時間が流れているとき
私はあいつを殺しました
意外と簡単に事が済み
私は普通でした
世界は普通でした
ただひとつ
庭の済みに落ちたプルトップが泣いているのを除いて
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
粉雪を詰めた冷たい
かんづめを かっこよく空ける方法は?
命をルンルンってなんとなく肝臓 とかでハッピー間に合う?
液体であればストロベリー
依存症で二人称
パクりで症
こんなくだらないもの書いちゃってごめんなさい
内蔵をサンフランシスコ中華街のマフィアに売りました
それで船を買いました
私は宇宙へ行きます
太陽のゴママヨネーズあえ
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
げんきをください
げんきとか
ちからとか
ひかりとかを
ください
みつけたひと
ください
よぶんにもってるひと
ください
あおぞらに
ひこうきが
とんでいた
とても
ちいさかった
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
とおりすぎた
かぜが
とおりすぎた
なみおとが
きみはいなかった
ゆめが
くろかった
ためいきは
きみは
しろかった
かなしみは
おれんじだった
おいかけた
ぼくだと
しんじたものを
うしなった
しこうを
わらった
くものすを
ひっかけて
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
そとへ
でると
ありがいる
わたしはきっと
ふんでしまう
わたしにふまれた
ありがいる
ありをふんだ
わたしがいる
いないといる
どちらがいいか
そのままで
いるべきか
すすむべきか
かなしむべきか
とびこえるべきか
わたしは
ひととしてありたいのか
わたしらしくありたいのか
ただしくありたいのか
ただ、りんとして
ありたいのか
ただ
ありたいのか
ありはありとして
ありたかったのに
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
ぎせいになったかんじょうは
わらいのすみかに
つたわらないおもいは
かなしみのすみかに
あのひのつよいかぜは
おもいでのすみかに
みちあふれたじかんは
よろこびのすみかに
みたされないよくぼうは
いかりのすみかに
かえってゆくよ
のれんをあけて
のぞいてみよう
あのひ
なくしたはへんは
かたをくんで
まっていてくれた
こころもあたたまって
じかんのそばにいって
さくらみたいに
いさぎよく
まいちろう
もうじめんに
たどりつこう
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
来世、共にしませんか
まだ運命の先約は?
現世では、君に気付くのが
少し遅すぎたみたいなんだ
そして来世は もっと近くに住みましょう
できれば一緒に暮らしましょう
バナナの葉っぱの揺れる涼しいベランダを一緒に造りましょう
緑の眩しい島に住みませんか
本当に必要なものだけを側において
できれば今より たくさん話をしましょう
たとえば 星とか
空の名前とか
そして海と歌いましょう
楽しみにしています
だから
お便所の底みたいな現世も
おもちゃの宝物みたいにキラキラしているのです
来世でもあなたを間違えたりしません
あなたの肌の香りをきちんと
覚えていますから
待ち合わせは決めないでおきましょう
楽しみがなくなってしまいますから
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
屋上のベランダの窓に
オリーブ色のペンキでいっぱい太陽を書いたの
あなたはきっと
これじゃただの水玉だねって笑うわね
錆びたベッドで
白い青年の肩にキスをしたとき
あたたかな夢は覚めることを知った
イルカは
水面下からそびえるビルを見上げて
差し込む太陽光線と握手するの
今日も空色の伯爵婦人が
片付かない私の部屋に泊まりこんでる
彼女は私のレコードを好き放題に聴いては
故郷のお母様に押し花入りの手紙を書く
明日の零時にね
きっと彼女は自殺をするわ
あなたは止めにくるけれど
きっと
間に合わないの
キッチュな置物でいっぱいの私の部屋
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
白い壁にあてた手のひらはすごく頼りない
昼間なのに壁だけが明るい小さな部屋
薬指より人指し指のが長くて三角のツメの尖った
愛しい私の手
今度
生まれかわる時は青ぞらになる
私は青さそのもの
青いかたちをしていたいのは私の手のひらも同じらしい
今度
私が私を思い出すとき
白い部屋のずっと向こうの
森の
遥か上空で
きっと青く
薄く
広がっている
プチプチした濃い緑たちを
見下ろして
アヒルのくちばしに反射したり
私は遊ぶ
湖面でうたた寝もできる
今は
手のひらと一緒に
青の陰を探すだけ
そうして
地べたに寝るだけ
暖かい地べたにも
高い青ぞら
反射して