詩人:浜崎 智幸 | [投票][編集] |
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弦(いと)に滑らす指を見ていた
風になろうと弦は泣いてた
光の庭で都会を忘れ
無邪気な心取り戻そうか
コン・ソルディーノ
君の声は小さすぎるよ
少し硬いし
コン・ソルディーノ
君は音楽
・
・
青いドレスを褒めてみようか
それとも細い脚にしようか
画家も詩人も出番がないよ
君は君だし 今は今だし
コン・ソルディーノ
君の声はかき消されるよ
少し痛いし
コン・ソルディーノ
君は音楽
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コン・ソルディーノ・・・弱音器をつけて
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泣き濡れた町を
出れば逃れられる
行き先も知らず
飛ばせ 闇の果てへ
アクセルを踏み
悲しみこらえ
逃げる逃げるセリカ
養鶏場の前のカーブで
猫をはねたけれど
咎める人もいないのね
◆
◆
未練だけ残し
砂を噛んだタイヤ
反射して襲う
デリニェータの光
追いかけないで
あなたとわたし
今日で終わりだから
暴力さえも沈黙さえも
追いつけない彼方
取り戻せないあの影絵
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泣き濡れた町を出ても
泣くと思う
行く先も違う自由な人でさえ
★
平成〇〇年の誕生日まで有効──
わたしの免許では
追いつけない彼方
追いつけない明日
追いつけない
あなた
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デリニェータ・・・ガードレールやトンネルの側壁にある小型の反射板
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雨だれが庭を打つ
意味のない日曜日
自転車が濡れるから
買い物に出られない
歌は資源にならない
心は痩せてゆく
ここに神はいない
敵もいないけれど
ここに君はいない
時間を戻しても
ここに君はいない
◆
◆
読み飽きたはずの本
それなのに手に取った
猫たちは会いにくる
感情のない味方
樹々は試薬にならない
焦りがつのるだけ
ここに祝福はない
焦土は遠いけど
ここに惻隠(そくいん)はない
救いは未定義だ
ここに惻隠はない
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伝令を走らせろ
すべての仲間を呼べ
人類が滅ぶのを
見届けてやる
ためにだ
祖先の祀(まつ)りを
忘れたせいだ
長生きをしたいなら
行儀よくすることだ
異教徒の入れ知恵に
耳を貸さない
覚悟で
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墓碑銘を彫り直せ
死者に名誉を返せ
不可逆の存在を
忘れてしまう
ためにだ
梵語のspellを
忘れたせいだ
因縁が怖いなら
信念を持つことだ
泥仕合するまえに
死に化粧する
覚悟で
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spell・・・呪文という意味もある。
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今も忘れない爽やかな彩り
僕の好きだった伸びやかな光
君が忘れたら季節は置き去りで
切り取られたまま埋もれてしまうだろう
僕はここで生まれたわけじゃなくて
はがゆくてもどかしい愛しかなくて
夕暮れには夕暮れ色
雨降るなら雨の色に
染まることしかできず
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確かめたくても時は戻せないし
記憶にノンブル打つこともできない
僕はここに住んでるわけじゃなくて
柔らかく臆病な愛さえなくて
夜明けにはコバルト色
海騒げばさかな色に
染まるだけでもいいか
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心地よい風だね
話すこともないね
柔らかい風だね
ラジオが聞きたいね
僕が歌うのには地球は重すぎる
君の合い言葉は百も知ってるけど
はるか空に夢の世紀
君だけを信じてる 夢の世紀
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古典を読みたいね
楽譜を書きたいね
ワープロ打ちたいね
お寺に行きたいね
大きな蜘蛛の巣が地球をだめにする
僕は誇り高い文盲でありたい
はるか空に夢の世紀
君だけを見ているよ 夢の世紀
はるか空に夢の世紀
君だけに会いたいよ 夢の世紀
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なお遠い道の果て
わたしは行くそこまで
奇蹟の泉
善悪の彼方には
罪と嘆き集めた
カインの印
十字架を負う人の
たどる長き道程(みちのり)
ローゼンシュプール(薔薇の小径)は
星の降る方角へ
セント・ベルナデッタの
眠る村まで
エリ・エリ・レマ・サバクタニ※
どこへ行けばいいのか
ルルドの泉
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※わが神、わが神、なぜ我を見捨てたもうや
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みんな集まれ ここが古里
二度と帰らないと決めた兄弟よ
人はいないぞ みんな死んだぞ
いまやこの世界はすべて我らのもの
犠牲者の血を讃えよ
権威者(カリスマ)の名を崇(あが)めよ
ここが祝福の国
ひとつに結ばれる
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水を渡せ神々
ここは言霊(ことだま)の国
飛鳥を智恵で満たし
大陸を近づけろ
ときじくの実のなるところ
大和うるわし
斑鳩の白い道のうえに春の日射し
豊聡耳(とよとみみ)の理想(ゆめ)
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ときじくの実・・・・・・垂仁天皇が求めたという不老不死の果実。正しくは、トキジクノカクノコノミ。
豊聡耳・・・・・・聖徳太子のこと
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