詩人:浜崎 智幸 | [投票][編集] |
・
片思いはいつでも
風が運んだ花粉
指にからむためらい
あなたのせいで──
出会ってしまったから
こんな思いを抱いて
一人で森にいるよ
あなたのせいで──
緑に降る光にまぶしそうに笑った
あの無邪気な笑顔が
今も忘れられない
だけど光あふれて みどりは目に痛いよ
僕の小さな影は消されてしまう
◆
◆
白いショートパンツで
あなたはシャトルを追う
低くそして鋭く
サーブを返す
僕は歌を作って
何かを確かめていた
時々襲う挫折
楽しんでいた
緑に透ける髪をバレッタでとめていた
それは僕の心もつなぎとめたと思う
だけど光うすれて 夢は冬に移るよ
たぶん僕のせいだよ
僕のせいだよ
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・
緑ヶ丘に 優しい風が
わたし誘うように吹き寄せてくるわ
もしも あのとき素直だったら
光さす処へ行けたかもしれない・・・・・・
ためらう言葉ではなにも伝えられないと思うの
だから
お・ね・が・い・よ
このまま
す・て・な・い・で
せっかく言えそうになったところよ
「アナタガ好キ」
で・も・だ・め・ね
青空
み・て・い・る・と
あなたの大事な彼女(ひと)を思い出すの
◆
◆
緑ヶ丘に 月影さえて
眠り破るように囁いてくるわ
窓の外では 模様のない蛾が
光に魅せられて躍り続けているわ
逃げ腰の恋ではなにも創りだせないと思うの
だから
な・り・ゆ・き・で
あしたに
さ・せ・な・い・で
せっかく言えそうになったところよ
「ヤッパリ好キ」
で・も・だ・め・ね
満月
み・て・い・る・と
あなたの大事な彼女(ひと)を思い出すの
─────
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・
夕暮れまでに帰れよと
我が子に叫ぶ母がいた
故里の冬
帰ろうか
帰ろうよ
帰ろうか
今のうち
東北へ
地面の匂い
時となく
雪をちりばめ
混じりあい
指を凍らす
雪が降る
雪が降り
昔いた
人を呼ぶ
東北へ
心に深く
突き刺さり
敗れた者を
認めない
故里の冬
心を遠く
突き離し
敗れた者を
許さない
故里の冬
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・
午後の花園には透明な愛が育つ
けれども熟さないうちに
夕暮れの風がすり抜ける
それはオレンジの時間
僕によく似合う光
勇気と力を欲しがれ
拳を握れ さりげなく
思い出は音楽にまかせて
もう一度翼を試そう
思い出せ 真実の痛みに寄り添う微笑を
・
・
手紙ひとつ書けず
遅咲きの花も終わる
そうして暦が替わると
短日植物はじけだす
それはオレンジの世代
僕の土壇場の祈り
自分に自分を投げ出せ
のたうち回れ 笑いつつ
伝説は役に立たないから
もう二度と言い訳はするな
見苦しい愛もあることだけ
わかっていればいい
・
それはオレンジの気候
僕の初歩的な希望
秘密も本音も疑え
暗中模索 もがくだけ
ホラ吹きがはびこる時代に
翻訳の聖書はいらない
沈黙が罪でないことまで
宇宙に誇りたい
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・
記憶を
地図の上で確かめ
印を打つ謎解き
あなたはどこなのか
(わからない)
地底に潜む琥珀の嘆き
声にならぬ愛
黄金を掘る人の
砂のような涙を
吸い上げ色を獲る
琥珀たち
・
・
再び
鑿(のみ)をふるう旅人
疲れ果てる神々
夢みてる
あちこち掘るけれど
(出てこない)
息を詰まらせ
のけぞる人の
最後にあげる声
殺され埋められた
命の集まりが
固まり色を獲る
琥珀たち
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少女は
母の持ち物の
指輪をそっと
はめてみる
誰もが
そんな悪戯を通って生きてきたんだね
当たり前の現実が
とても眩しいこの夏──
・
・
扉を放ち
鏡台の
向こうに気づく
銀の針
心は
人と連絡し
瞳は
軽く閉ざされる
実像しか愛せない
雑念は滅したから──
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夜を走るなら
月に背を向けろ
けばだつ心に
月は優しすぎる
楔(くさび)を打ち込め
胸の真ん中に
呼び捨てにできる
名前はもうない
澄みし水よ
光を受けて
翳る心に灯る
歌に変われよ
みな幸ある人でいるか
流れにまかれる影でないか
そこは寒いのか
温もれないか
・
・
誰も顧みぬ
僕の歌だから
誰も顧みぬ
君のために唄う
鏡よ砕けろ
正義を示すなら
翼を得るとき
僕は駄目になる
澄みし水よ
光を受けて
かたち残すものの
挽歌になれよ
失うものはせめて少なく
見落とすものはせめて小さく
そこは遠いのか
触れあえないか
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どこかに
私を望まない人がいるなら
すべての愛を(無)にする冷たい視線を浴びたい
どこかに
私を許さない人がいるなら
言葉の刃物をみがいてむごく殺してかまわない
独りよがりの道徳
哲学のない疑惑
寒い心の裂け目に
罪が細くにじむ夜へと向かう──輪廻
・
・
こころを
閉ざして見えてくるものがあるなら
阿吽(あうん)の呼吸をはずしてユングの海で溺れたい
邪悪が
土星の力を得たというのなら
レーキを投げろ
農夫たち
愚者の咎めを気にするな
芸術を楽しむには人は黒くなりすぎた
言葉が通じたうちに蝋燭(ろうそく)を点すべきだった
ユウレカ! ユウレカ!
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いくつも
橋を過ぎ
小川は
町に出る
夢みてた人は──
今も夢のなか
かすむ笑顔のように
今も夢のなか
・
・
別れは
華やいで
小さな
家のそば
聞こえればいいね
さよならの声が
夢の流れはやがて
深い海になる
・
・
たくさん
人が死に
たくさん
川になる──
出会えたよろこび
なくしたしあわせ
すべてこの川のなか
すべて流れてる
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*この川の名は若菜川。河口は長崎市の茂木(もぎ)地区です。
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夜が明ける 夜が明ける
さあ目覚めなさい
さあ目覚めなさい
話しなさい 話しなさい
今見てた夢をささやくように
涙の形の小さな雲が
夜明けの空に消え入るまえに
・
・
悔やみなさい 悔やみなさい
死んだ人たちを
思い煩って
信じなさい 信じなさい
疑うことより やさしいはずよ
泣いた日もあるし
泣く日もくるし
それでもあなたは
止まれないから
死に至る病
何度もかかる
それでもあなたは
止まれないから
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