詩人:はるか | [投票][編集] |
この角を曲がると
潮の香りがつよくなる
家々がたち並ぶ
せまい路地の合間に
あの日の青が
チラリとみえた
あなたがいた海
あなたといた海
季節はずれの砂浜は
人影もまばらで
砂の白さだけがやけに
浮きあがって見える
ここで笑ったよ
ここが最後だったね
やる事なくて退屈すると
バカの一つ覚えみたいにここへ来た
腐っても許しあえる
アイツらと共に
フザケてたよね
泣きたいくらいにさ
恋と友情であふれた頃のざわめきが
静かな波音になって
耳に心地いい
みんなでいた
ここが全てだったね
ひと声かければ
笑いながらやってくる
アイツらと
たまには大騒ぎも
いいかな
今では会えないあの人の思い出話を
肴にして
あの日うまれた
この海でさ
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例えば転んでケガした
ひざこぞうに
ばんそう膏をはった
指先とか
例えば毎日焼くのに
たまにコゲのある
卵やきだったりとか
ねえ そんな事
例えば当たり前のようなお帰りの言葉や
抱きすくめた時の
エプロンの色も
心の端っこに
かろうじて
引っかかっててくれたら
それだけで十分
あなたに沢山のことを
話して聞かせたくて
つけた名前を
何度も呼んで
何度もその瞳を見たくて
明日も笑っていますようにと
ただそれだけの
ちいさな ちいさな
願いごと
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みんな本当は
寂しがりや
どこかに繋がり求めてる
見えない手を待っている
あなたも私もそんな一人
一人じゃ生きられない事よく知ってる
強がっても
人ごとだと素知らぬフリしても
心の底辺にあるものは
きっと同じはずだから
ここにこうして
立っていると
時々悲しいくらい
見えてしまう
自分と重ね合わせたり
背中を向けてしまってみたり
笑いあったり
涙する者もいる
愛する人を求める時
苛立ちや不安で
胸が押し潰されそうな時
生きる居場所を見失う時
人はやはり人を
欲するのだと思う
言葉という
確かなようで不確かなものでしか
伝えるすべはないけれど
心の歩みを止めないで
あなたはあなたらしく
私も私らしく
響かせ合って
いけたらいいね
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夜があまりに綺麗なものだから
靴を片手に飛び出した
突き刺すような
冷たさも
体のほてりでびくとも
しない
世界が全て
あたしだけのものに
なった気がした
世の中が
こんなに泣きたいもので溢れているなんて
想像すらしなかった頃は
取り巻く全てが輝いて
あたしは真綿に包まれて夢を数えた
幸せなんて
今も分からない
心をなぞって輪郭を確かめながら
夜空に手を伸ばす
月明りに
手の甲が
青白くにじんだ
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ポケットに紛れた
一枚の枯れ葉
ついさっきまで
カラカラ小気味いい音を立てて
風に吹かれていたのに
ここで旅を
終える必要はない
君は
もっと世界を
見ておいで
窓から放たれた君が
宙に舞う
あてはなくても
飛んでいけるだろう
希望は行く先々に
きっとあるよ
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見渡す限りの
白に包まれた雪原に
いたのは
それが 自由だと
思っていたから
真っさらな 声
真っさらな 心
赤子の涙は何処へ消えた
夢見て伸ばした手は…
手に息を吐きかけながら掻いた雪は
どこまでも 白くて
掻いても 掻いても
枯れ枝一本見つからない
どこまで
離れてしまったのか
もうこのまま
見失ってしまうのか
白い雪に埋もれて
自分さえも消えるのか
ここは遠い
きっと 遠い
最果ての雪原
あなたの声も響かない
私の声も届かない
始終 閉ざされた
偽りの 世界
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そばにいて
そばにいれば分かる
大切なものを
見たいから
そばにいて
あなたしか持ってない
大切なものを
知りたいから
だから
ずっと そばにいて
どうか
そっと そばにいて
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少しだけ歳をとった
父が ある日
懐から取り出した
覗き込んでみれば
それは 若き日の
母の笑顔
照れ臭そうに
薄くなった額に
手をあて 笑う
結婚記念日も
誕生日すらも
覚えてなくて
ありがとうなんて
口が裂けても
言わないくせに
そんな父の
妙に可愛いらしい姿
深く長い時を経て
尚も 色褪せぬ
若き日の想い
互いが持つ
半分ずつの糸を
固く結び
離れぬようにと
離さぬようにと
十年後も
五十年後も
変わらず君を愛す
変わらずに
君を 愛す
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ドアベルを鳴らすと
いつもの香り
あなたに会ってから
この味を覚えた
遠い目をしたあなた
窓の外は
楽しげな恋人達
いつかの
二人がダブった
「私はあなたの為に
何が出来たの」
あなたは
ゆっくり微笑んだ
首を斜めに傾けるのは
困った時のあなたの癖
ほろ苦い
夕暮れコーヒー
長く伸びた影法師
不意に届いた手
私のカップに
落とした角砂糖
「君らしくいてくれたら それでいい」
背伸びの恋の幕切れに
手渡された自由
あなたの好きな
ほろにがコーヒーは
やけに甘くて
少しだけ涙の味がした
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お布団の神様
ごめんなさい
あなたには酷い事をしました
眠気さす 小春日和の
穏やかな日中
日頃からお世話になってるあなた様を
庭の物干しへと
運んでいた私です
足取りも軽やかに階段を数往復
ほんわか布団に包まれて眠る 幸せな妄想を描きながら
あなた様を日溜りの中へ
…魔がさしたのです
汗を含んだあなた様の御身はずっしりと重く
私のかよわき(?)二の腕は悲鳴をあげておりました
いや、嘘は申しますまいここまできては
…面倒臭くなりました
それだけです
私の手を離れた次の瞬間あなた様は何と華麗に
宙を舞ったことか
流れ堕ちる滝のごとく
怒涛の滝つぼの階下へと
ごめんなさい
お布団の神様
なかなか爽快でした
柔軟性のあるあなた様のことだから
大目に見てくださいますよね きっと