詩人:山崎 登重雄 | [投票][編集] |
セミが鳴く
早くあなたに会いたいと
全身を震わせて
セミが泣く
何故 あなたは約束を破ったのかと
命のすべてを投げ出して
あの夏の日の約束は
生まれ変わっても巡り逢う約束は
叶ったのか 果されたのか
猛り鳴くセミの声は
どうしても悲恋の叙情詩に聞こえて
やがては鳥に食まれ
やがては力尽きてポトリと落ち
やがては虫に食まれ そして消ゆ
口々に 愛しき者の 名を呼びて 夏・巡恋歌 セミの声消ゆ
詩人:山崎 登重雄 | [投票][編集] |
亦、心なり 恋心。
変わるかもしれない気持ち。
気持ち次第の心。
誰が好きなのか。
初恋の人。
思春期の想い。
生きるか死ぬかの時に暢気です。
青年期の憧れ。
未来を望んでの妻子。
夢破れての、夜の華々。
言葉が紡ぎし人々。
誰が好きなの恋心。
詩人:山崎 登重雄 | [投票][編集] |
ジリジリと焼付き陽炎が立つ
天も地も熱い
一瞬の陰りとともに
ボタボタと雨粒が染み始める
情熱と冷静が如く
熱と水とが交差し
土ぼこりの匂いを纏いながら
染めては渇き
渇いては また染めてゆく
やがて一面のグレーと染め抜いて
夏の雨の匂いは消ゆ
夏の匂い
詩人:山崎 登重雄 | [投票][編集] |
自由
勝手な言葉にするまじ
このままでよいものか
いかなる術にて自らを由と
このままでよいものか
これで由
誰人が認むるのか
まして自らを由と
誰人に問う
一生一死
全うするが自由
日々 己に問えた者こそ自由
詩人:山崎 登重雄 | [投票][編集] |
日差しはひたすらに妄想を駆り立て
何もまともに思考できぬほどに
身体を焼いてゆく
激流の如く汗がほとばしり
命を薄皮のように剥いでゆく
一日の地獄を耐え抜いた者だけが
陽が休むとともに
己に冷気を纏うを許され
闇とともに浄化されてゆく
MAXの体温と
MAXの安息
青春の縮図が如く
詩人:山崎 登重雄 | [投票][編集] |
人が生きる
生きて始めて人が生まれる
人が生き生きと 生き
人と呼べる者が生まれるのだ
では ただ生きるは恥か
誰も言い切れまい 何故なら
誰人もその代わりを出来得ないから
己しか 生き 生かせまい
万の力を与えても 己に力なくば
一言も響かず 虚しく消ゆ
生きるしかない どうすればよいのか
いつ 自分が 生まれるのだろうか
詩人:山崎 登重雄 | [投票][編集] |
誰が扉を開くのか
自らが望むも好し
誰かを待つも好し
見えぬもの 感じぬもの
誰人に決められようか
そもそも開くものか
閉じているのか
誰が決め 誰ぞ従う
扉の有無さえ見え知らぬのに
在ると信じて 果敢に開き
無しと信じて 心を開き
ただ黙々と 生きればよいものを
詩人:山崎 登重雄 | [投票][編集] |
一枝 一枝と
伝え 渡る
命を 運び
薫り 継ぐ
見る者よ
知る者よ
我は風
背に纏え されば押し上げん
心に纏え されば暗雲を吹き払おう
我は風 大いなる気
詩人:山崎 登重雄 | [投票][編集] |
風になりたい
微動だにしない 無
すべてを拭い去る 猛
心地よい 涼
人を包み 国を包み 星を包む大気
目に見えず絶え間なくそこに在る
泰然と また淡然と 優雅に舞い
変幻夢幻に駆け巡る
風は水を運ぶ
風は薫りを運ぶ
風は命を運ぶ
詩人:山崎 登重雄 | [投票][編集] |
見慣れた景色
いつもいる部屋の窓
木々の間を小鳥がすり抜ける
羽ばたきがまとう空気が
“さわ”と葉を揺らす
そこに風がある
肌に触れなくても
風が見える
小さな風
四、五本の枝を触り抜け
元の空気に戻る
桜の大樹の一葉だけが揺れる
そこに風がある