詩人:矢井 結緒 | [投票][編集] |
1人じゃ
直ぐに転ぶから
誰か乗ってよ
きっと
行きたい場所に
運ぶから
ひとりで
歩かないでね
まだかな遅いな
ぼくのともだち
仲間がコカされ
とばっちりで
下敷きになった
広場の孤独
寂しさに負けて
きみを疑い始めた
錆ついてく友情
きみがいたから
ぼくがいる
ずっと待ってる
駅裏の駐輪場
詩人:矢井 結緒 | [投票][編集] |
外出前も帰宅後も
直ぐにシャワーを浴びて
その日着た物は
その日のうちに洗濯する
消毒用アルコールを
フロアにスプレーして
掃除機をかけた後
拭き掃除するのが日課
電車の吊り革は
ハンカチで被って握る
カフェのティーカップさえ
信用出来ない
「俺も汚いのか?」
ある夜、終わった後
急いでシャワーを
浴びに行こうとしたら
彼が憐れむような
哀しそうな顔をした
「ごめんね
あたしの方が汚れてるの」
シャワーを出たら
彼はもういないだろうと
涙も一緒に排水溝に流れた
その夜
わたしはアルコールで
内臓を綺麗に洗浄した
詩人:矢井 結緒 | [投票][編集] |
バイトの初日
家を出たあと
彼女は電話をしてきた
「ホントは
行きたくないんでしょ?」
彼女の話しぶりや
声の調子から
携帯の向こうで
無言で頷く様子が
目に見えるようだ
その街は
ファッションヘルスで
有名で
おっぱいパブとかも
あるらしい
「わかった。
その店の電話番号
教えて?」
わたしは身内を装って
彼女のバイト先の店長と
話をした
「妹に今後そちらから
電話とか余計な連絡が
あったりすると
面倒な事になりますけど
お分かりですよね?」
と言うと相手は
「判りました」と頷いた
「もう行かなくても
いいよ?」
折り返し電話すると
彼女は一言
「うん」と応えた
「ありがとね」
わたしが言うと
彼女は
「え!なんで?」と聞いた
「わたしに話してくれて
ありがとう」
電話の向こうとこちらで
ふたり笑いながら泣いた
詩人:矢井 結緒 | [投票][編集] |
何もない空しさに
はち切れそうなほど
透明な夢だけで膨らむ。
空に憧れて
かりそめに
飛んでみるけど
直ぐに萎んで
敢えなく下界に逆戻り。
まるで風船みたいな
あたし。
詩人:矢井 結緒 | [投票][編集] |
ゴミの日なのに
犯罪者さながら
闇に紛れて
自信を棄てにゆく。
生きてもいないくせに
廃棄物だけは
着実に蓄まってく。
自分を分別出来なくて
私を捨てる場所もない。
詩人:矢井 結緒 | [投票][編集] |
香取線子の生涯
グルグル回る
命の導火線。
何もない
終点に向かって
ひたすら
寡黙な情熱に燃えるの。
灰になる最期まで
あなたを守り続けたい。
それが出来るなら
他には何も望まない。
詩人:矢井 結緒 | [投票][編集] |
暴れて
逃れたがる感情
破れやすい言葉で
すくい取って
どうせ
直ぐに弱ってしまう
夏の金魚
生き残った例しのない
通りすがりの感傷
風鈴が
上手に風をかわして
ひとつ歌った後
湿り気が渇いた
詩人:矢井 結緒 | [投票][編集] |
湿度80%の
肉体に引き籠もり
日毎2リットルの
アルコホール燃やして
千鳥足で生きている
持続可能なレベルで
地球に優しく微笑んで
見えない明日に
二酸化炭素の溜息をつく
言葉に
自分好みの色をつけずに
迷走する気分を
一筆書きでなぞるけど
泣いてるからって
一拍遅れて
大丈夫?とか言って
肩に手かけたら
セクハラで訴えてやる
「仕合わせになろう」
なんて努力目標よりも
「仕合わせにするよ」
とかの約束の方が
リアルに嘘っぽくて好き
ほんとは
あたしの方が強いのに
あなたの証拠のない自信に
騙されたくて
くさいセリフにも
瞳孔開いてみせたり
好感神経は単純過ぎて
走ってきた
ドキドキの動機を
好きかもなんて
容易く誤認するから
ピュア過ぎて
愛してるとか
軽々しくて
逆に言えないなんて
横縞な川が
下に流れてるからよ
逆にね
他の誰かを想像しながら
1人作業する夜は
電話してくれたら
息を切らして直ぐに
走って行くから
空の容器に
真空パックで詰め込んで
あなたに
届けてあげるから