詩人:大示 | [投票][編集] |
あの時、最後に微笑んだのは何故
『さよなら』
と呟くこともできなかった
何度も繰り返し思い出す微笑み
私は、あなたに捕らわれたまま
遠い昔に交わした
約束を果たすからと
暖かい季節を迎えずに
雪を纏って旅立った
白の中で、あなただけが
不意にそっと笑っていた
あなたの穏やかな笑顔を思う度に
この胸が高鳴り熱くなる
泣けない私の代わりに銀の星が
静かに明日へと流れていった
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訳もなく笑っていた遠いあの頃は
独りで過ごす寂しさ知らなかった
小さな手を繋ぎ安らぎを感じて
心も繋がっていると信じていた
いつの頃からなのだろう
君が笑わなくなったのは
みんなと共に笑うけれど
いつも後付けの笑顔で
気づいた時に胸が痛み
僕も笑うことを止めた
もう一度、二人で手を繋ぎ歩こう
あの頃より僕達は
大人になったけど
大事なもの
見落としていたみたいだね
ゆっくり、歩いて探しに戻ろう
独りだった日々を
埋めて行くように
たくさんの言葉を君に贈ろう
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月、輝く静かな真夜中に
ふと、目覚めて気づいた一人きり
私の眠りを邪魔した風さえ
鳴き止んで静寂が私を抱いていた
この暗闇も、いつかは破られる
朝、くれば太陽が昇るように
どんな苦しみも終わりは訪れ
いつしか嘆きも遠い空へと
大きな翼で風と共に
今、どれほどの深い暗闇が
私を抱いても受け入れはしない
私が望むは輝く朝なのだから
詩人:大示 | [投票][編集] |
一つきりの、あなたの愛しい命を
柔らかな日だまりで包もう
優しく通り過ぎる風が何か囁き
僕とあなたを撫でて行くよ
ゆっくり刻むこの時間を
今、共に感じてる
ただ、それが大切で
失う時を信じない
夢のような瞬間が
ずっと、ずっと続けばいい
キラキラとあなたの上で踊る
木漏れ日
この姿をずっと見つめていたい
太陽と月が交互に昇る日々を
あと、どれくらい
君と過ごせるだろう
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壊れていく恐怖に追いたてられて
七転八倒した自我は
まるで醜いメタモルフォーゼ
見知らぬ誰かと向き合う度に
姿を変えては舌を出す
忍び笑いも限界を超えれば
毒になり身体中に染み渡る
今はお気に入りの、この形も
いずれは捨て去る時が来る
それまでは不定形な自我を
弄んでいようか
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鋭い三日月は僕の白い胸に刺さり
赤い満月へと生まれ変わる
狂を孕んだ母胎は戸惑うこと無く
禍を産み落とし僕の手に抱かせた
鋭利な鎌が、この空虚な心に宿り
時折、チクリとつつく
合図なのか、警告なのか
それはまるで何かの催促のようで
臆病者の僕は、大いに戦慄した
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長い髪に支配された夜を
微睡みの狭間が甦らせる
あれほど指先に絡めたのに
一筋も私のものには、ならない
この胸の痛みだけが
あの人を記憶している
泣くほど女々しくも無く
笑い飛ばせるほど強くも無く
曖昧な感情の行き場は
ただ、独りきりのあなたの元へ
それだけは迷いはしない
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赤く乾いた大地を歩き続けた
英雄達の跡
今は、もういないけれど
辿ってみなさい、と風が囁く
夢にうかされて、歩いてみようか
そのまま、栄光に繋がっている
なんて、まさか思わないけれど
初めは、ただ、ただ動くだけ
この先に何もないと決まった訳じゃない
別の道が見つかれば、その時に
もう一度立ち止まろう
その頃は、もう独りではないと思うから
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真夜中に甦る歌声は
私の心を揺さぶり
信頼なる明日へと導く
大きな轍に流れる水は
見知らぬ種を運んで
新しい世界に送り出す
身を任せた、その先の行方は
まだ見えないけれど
何かが、ある
と信じ、今は瞳を閉じていよう
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けして交わらない海と空は想像もできないほど
遠く、大きく広がっているのに
近寄り過ぎることもなく
離れすぎることもなく
ただ、そこにあって
互いに同じ色に染まっていく
誰も真似できない交歓が
誰の手も届かない場所に、ある