盃に映る明月に
今日も一夜のお勤めを
共に時を過ごす君へ
今宵も一献
眠りの酒を傾ける

孤独に泣く夜も
無情に歎く朝にも
日々の流れの刹那にも
人々は心を隠し
今日と言う日々は
繰り返される


歓喜に歌う春も
快楽に酔う秋にも
季節の移ろいの狭間にも
人々は心を亡くし
今日と言う日々は
輪廻の様に繰り返される


誰かの狂気も
誰かの狂喜も
全てを巻き込み
全てを呑み込み
渦の様に
クルクルと
狂々と
世界はまた
新しい今日と言う日々を
織り成していく

掴んだはずの言葉は
掌から抜け落ちて
伝えたい想いは届く事無く
深く深く闇空に溶けてゆく

空が焦がれて
茜に染まり

届かぬ想いは
地に堕ちる

涙はくすぶり
涸れる事無く
胸を裂く

自らの手で
掴めるものの
少なさを嘆き
明日を見る事を
忘れて生きる

己の弱さを
受け止めながら
今を受け止める事が出来ず
矛盾が
この身を蝕んで行く

月無しの夜は嫌いだ
己の心を映す様で
己の想いを飲み込む様で
月無しの夜は嫌いだ
どこまでも
どこまでも
悲しさが
淋しさが
この身を包んでいく
月無しの夜は
己を見る様いつまでも
好きにはなれない

君を想い
空蝉に祈ろう

君が
孤独を嘆き
孤独を誇り
虚空に鳴くのなら

君の
孤独を包めるよう
君を想い
空蝉に祈ろう

大きくその手を広げ
太く強く真っ直ぐ立ち
時には雨を防ぎ
時には恵みをもたらし
羽ばたく者達の
羽根を休める
寄る辺となり
ただ誰かの為に
ただ君を守る為に

慈しみで包む
大樹のように
僕はなりたい

街の灯は落ちて
闇夜が世界を包む
僅かに残る灯りも
白く濃い霧が
光りを喰らう

闇夜はより濃く深く
全てを飲みこむ様に
そこにある

震える様に恐る恐る
窓外に瞳を向け
うねる闇のむこう
朝日が昇る
その時を
ただ待ちわびている

朝靄に響く
霜柱を踏み
シャクシャクと鳴く声を聞く

日一日と深まる
冬が五感に触れていく