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剛田奇作の部屋  〜 投稿順表示 〜


[144] 感覚地獄
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

感覚が 尖っていると

どうしようもなく
面倒くさい

感度が良すぎて

すれ違う針の山が欝陶しい

くしゃみしただけで

フライパンが歪み

玉葱の前を通るたび、涙が止まらない


ダンプカーが勢いよく通り過ぎるから

大切なもの 何もかも吹き飛ばされるし

逆方向に走り出さねばならない


でも
感覚が尖っていると

時間の息遣いが聞こえ

宇宙の温度が見え

永遠を蹴飛ばして遊べる


感覚が尖っていると


原始時代がちょうど良い

星々の会議や

木々の鼻歌を聴くのに

ちょうど良い


現代、まるで感覚地獄

そんなに何度も手を洗いたくないんだ

だれか少しボリュームを下げて

蜂の巣にされた鼓膜の愚痴

君達が自分の耳を裂いてまで得ようとしている情報は
月のアクビより、珍しいかい?


私はもう、ここまで

とりあえず、呼吸させて下さい





2009/01/09 (Fri)

[146] スケールのデカい3Fの上司
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3Fの上司はスケールがデカい


身長は電信柱のごとく
高く

体は気球のように真ん丸だ


笑うときは、口が耳まで裂け地震のように豪快だ


毎日26回食事をとり

間食は13回だ

間食の間の軽食は9回だ

なので彼用の冷蔵庫とキッチンルームが経費で買われた

3Fの社員は仕事ができない

彼が全てやってしまうらしい

しかし彼は、一年に半年間は休暇を取るらしい


彼は、去年宝くじが当たったから社員旅行用の無人島と飛行機を購入した


ノリでローン会社を訴え、グレーゾーン金利に苦しむ人々を救った


愛人が世界中にいるので、彼は十ヶ国語をしゃべる

彼は本妻の子、愛人の子あわせて40人以上いる

その子供たちは会社に遊びにくると、ビルの壁に大好きなパパの絵を描き上げた


彼はなぜか宝くじが三年に一度は当たるが常に貯金はないらしい

最近は愛人の子供の友達の家族も養っているという

先週、フィリピンに学校を建てたらしい


彼は 営業が一番苦手だが、彼が笑うと反射的にみんなハンコを押してしまうので成績は一位だ


彼は、性同一性障害の人の気持ちが知りたいといい、
衝動的に 性転換手術をしてしまった


奥さんがこれで子供が増えなくて済むわと 喜んだらしい


しかし、なぜか未だに愛人は増え続けている







2009/01/09 (Fri)

[147] 手加減した自白
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私は完全に自由だ

と叫んでしまうのは

私が永遠に不自由なことの証明になるが

私には証明すべき場所がないため

それを求めて
今を生きているが

その理由に甘んじて生きるよりも


ただ生きたいから生きる

とした方が


より私の理想とする私に近いような気がして

愉快ではあるが

やっぱり寂しいのも事実なので

ゴールデンハムスターを飼う事にしました







2009/01/10 (Sat)

[149] ブルーハワイの誘惑
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微かな金属音
透明なネオンのトンネル
反射する星座
母さんの歌
恋人の寝顔
冷たい抱擁
沈む欲望
のどが艶めく
最高の窒息
終わりのないエロス
終着した化学

卓上のブルーハワイ


2009/01/10 (Sat)

[150] 知らない街
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住み慣れた部屋


むやみに壊れたりしない安全なベランダ


一円の狂いなく家賃を引き落とす銀行


何万回となく正しい金額を請求するレジスター


胡散臭いほど華やかなショッピングモール

舗装された道路

美しい公園


そんなことが、
偽りでも、平等で平和な世界をつくるために


とても重要らしいのだ


無力な私は、これらの創造物の一欠けらさえも


加担したことはないのに


瞼にうつる、機能化された世界の輝き



この街に馴染んでいるとされている私


小さなパチンコ屋の、景品管理と在庫確認も

満足にできない私が


いつしかこの奇妙な
無数の歯車の一部になっていて

その無能ささえも、誰かの想定内の出来事で


私の存在自体が
安全極まりない想定内の産物で


名前も思い出せない

古いパンクバンドの歌詞を


擦り切れた青春チックな感じにアレンジ


誰の胸にも響かない旋律も


枯れた空には、
似合うかも知れない




2009/01/12 (Mon)

[151] 放課後の有刺鉄線越え
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片膝で、机の裏の冷たさを感じていたあの頃

人の身勝手さにも

優しさにも

鈍感だった


研ぎ澄まされた自意識を振りかざし

ヒトも自分も

無邪気に傷付けた


校舎の窓から、乾いたグラウンドを眺めていた冬


生きる怖さも
風の冷たさも


知らないまま


雪山の鋭利な輪郭だけを
得意げに見下ろした


窓ガラスにピタリと付けた頬に
感覚はもう無かった


指がアカギレで一本も曲がらなくなってから

ザイルの在りかを考えた


無くした教科書を気にかけたまま


隠れることだけはできた

いつも、息の詰まるほど焦っていた


破戒者なんて最初からいなかったのに


授業中も右手は尖ったくるぶしをひっかいた


自分で
爪の中の傷を見つけられたら


それらの懐かしい居場所が歪みはじめる季節


画鋲を踏み付けたままの足を

気まずそうに隠しながら


じっと
スカートの裾を掴んで立っている私


個人的に、必死に明日へ手を伸ばし続ける私


息が詰まるほど、
焦っていた


息が止まるほど、
美しかった





2009/01/17 (Sat)

[152] 学年ジェット
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懐かしく、夢に登場
苔むした歩道橋の下

小学一年生
キラメク長澤不動産
キャラメルまだ貰えるかなぁ?

六年生、
夏の台風がきたら海賊ごっこを始めよう、
おい、海賊に名札は要らないよな?

冬がカードを配り出したら
中学生、みんな手を繋いで
ビルの裏側に回ろう

湿っぽく汚い路地裏で、カップヌードルをすする練習をしよう
ロイヤルストリートチルドレン

高校生、月を爆破させる威力の迎撃ミサイルをチョコレートで試作

ラズベリークッキーで戦車を造って軍事大国アメリカに乗り込もう

大学、生まれ変わった命を命綱なしに真逆から遡ろう
水を飲む時はコップの裏に注ごう

アダルト師範に教わったこともう一度逆さまにして
トイレットペーパーの芯から剥ぎ取ってしまおう


ようこそ
裸にされたのは
Mr.潜在意識

スペースシャトルの操縦はマッコウクジラのアンナに、

通訳は言語学者のチョムスキー

BGMは、サイモン&ガーファンクル
「明日に掛ける橋」だったって事

既に、
ご存知だったとは
流石であります


2009/01/15 (Thu)

[153] 午前2時のデシャヴ
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怖い夢で起きたけど、

恋人のベッドは冷たくて

バニラアイスが食べたくなる午前2時

パキラの寝息


換気扇の下で タバコを吸っている恋人の気配


秒針が暗闇に戸惑うキッチン


漂うのは、彼とまばたき

少し遅い、耳鳴り


嘘つきの、デシャヴ


加湿器の傍のオレンジ


ただ、
色を確認したいだけで、手を延ばしたら


チェック・メイト


セブンスターの煙りにまかれ

フル・ムーンは角を無くした


ムスクの香には騙されず

秒針は、気まぐれに進む






2009/01/15 (Thu)

[154] 
詩人:剛田奇作 [投票][編集]




答えが 無いのは、

最強の、答え





2009/01/17 (Sat)

[155] クリア
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傷口を
神に見せた


神は言った


私が治そうか?

それとも
無かったことにしようか?

おまえ以外の者も、皆そうしようか?

治る方法を教えようか?

自然に治るのを待つか?

あえて、治さないか?


たくさんの選択肢があるがね…


どれにも大して意義もなければ教訓もない


皆、少し私に期待をしすぎなのだ


外に意味を求めるな

内に求めよ




2009/01/17 (Sat)
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