詩人:浜崎 智幸 | [投票][編集] |
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雨垂れが土を打つ
寂しいね この村は
名も知らぬ神社は
価値のない時が往く
ここに神在す カミイマス
言霊のままに
ここに神在す
鎮まりてあり
ここに神在す
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季節は無言で過ぎる
あなたはいつも優しく
有職故実(ゆうそくこじつ)を
正しく演じる
翻訳もののミステリー
犯人は誰でもいい
あなたも わたしも
アリバイはないわ
劇中劇を演るのなら
しっかり抱きしめてほしい
呼吸も髪も乱れたまま
さあ
最後のページまで
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熱くしすぎた珈琲
あなたは平気で飲んだ
今夜の序破急
満足したのね
複数の罠をかわし
わたしに手錠をかけた
動機も凶器も
あなた次第なの
劇中劇を演るのなら
しっかり見届けてほしい
あなたに貫かれたままで
さあ 最後のページまで
劇中劇を演るのなら
しっかり感じさせてほしい
汗に光る素肌を滑り
さあ 最後のページまで
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誰よりもあなたを愛してきたから
今日の日まで立ち止まらず歩いてきたんだ
あなたがいる日々を幸せと感じる
理由もなく根拠もなく毎日過ごすよ
ありがとう 微笑みを いつも
これからも ずっと そばにいて
昨日より 今日よりも 明日に
つながるよ きっと ふたりの
明日に
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夜に川を渡る水音
風を切った矢になり
胸に刺さる
言葉もなしに
海に沈んだ太陽の光を吸って
夜ごとに光る呪われた苔を窺う
光る苔を盗む者は許さない
たとえ知らず苔に触れた人でさえ
愛を水に変える虚白
声をからし叫ぶ恋人
すでに愛は
指を離れた
まどろみながら傷ついた体をさする
鬼火のような燐光が瞼に焦がれる
暗い窓に苔盗人が映った
青いガラス破って弾丸を放った
誘蛾灯になった苔たち
銃の叫び森を震わす
その人の死体は
・・・・・・・・・・・・・・・・・・足元
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君の住む町を 自転車で走っても
逆光にくらみ 心はあとずさる
君が忘れたら 季節は置き去りで
切り取られたまま 埋もれてしまうだろう
僕はここで生まれたわけじゃなくて
はがゆくて もどかしい愛しかなくて
夕暮れには夕暮れ色
雨降るなら雨の色に
染まることしかできず
僕はここに住んでるわけじゃなくて
柔らかい 臆病な愛さえなくて
夜明け頃はコバルト色
海騒げば紫蘭色(しらんいろ)に
染まることしかできず
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この町に住んでいいのは慈悲のある人だけよ
私はまだ私を許せない
たまにだけど 自分のこと
意気地なしだと思う
ベランダで花を育てています
曙町へようこそ 日当たりのいい町です
曙町へようこそ 坂道に猫がいます
世界はここからです
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この町に住んでいいのは正直な人だけよ
私はまだ私をさらせない
夜明け前に目が覚めても
伝える手段もない
リビングでラジオを聴いています
曙町へようこそ 洗いざらしの町です
曙町へようこそ 女学生も歩きます
世界は今日からです
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夢の入り口だね
あなたの住む町は
理想に挫けるとき
訪ねてみたくなる
そして笑い声が
光と戯れる
どこよりも気高くて
それなのに優しい
人が学べるものは
あまりに少ないけど
僕が愛せるものは
かぞえきれないぐらい
この町のあちこちにあるよ
和楽団地
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生まれてくるとき
母の声を聞く
洗礼(先例)をうけて
ひとの世に入る
幸あれと
祈りの声
平穏(やすらぎ)は
二度と来ない
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滑らかな肌をもって
生まれれば
不幸せなどは
知らずにいたものを
休めよと
産土(つち)が告げる
「滑石の色をあげる」
欲しいのは
滑石の‖‖‖
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川のなかを見てごらん
野をゆく川を
透明な水のなかを
泳いでいるよ
覚めたくない夢だよ
つかまえようよ
たぶんみんなこうして
歩いてるよ
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人の汗を見てごらん
貴い汗を
愛する家族のために
働いてるよ
気高すぎる夢だよ
なんにも言わず
疲れている瞳で
笑ってるよ
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・
流れる血を見てごらん
慈悲深い血を
命の重さを伝え
チューブを走る
かけがえない夢だよ
生きていこうよ
分けられない痛みも
分けたいんだよ
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少女は
母の持ち物の指輪を
そっとはめてみる
誰もが
そんな悪戯を
通って生きてきたんだね
臆病とか怯懦とか
どうでもよかった航跡
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扉を開けた 三面鏡
禁忌と慚愧 交差する
残酷よりも甘美な血
蒐めて輝く宝石
恭順とか彌縫とか
どうでもよくなる光量
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