詩人:さみだれ | [投票][編集] |
お元気で
良くも悪くもありませんが
私は絶望しております
さよなら
冷たく発音しましょう
明るいのはだめです
温かいのはもってのほか
封を切ったお菓子が
湿ってしまったから
さよなら
放った空き缶が
ゴミ箱に入らなかったから
さよなら
私は目を開いて
真っ赤に染まりゆく夕日を
ひとりで帰します
さよなら
と手を振って
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足音が聞こえる
走り回ってる
ボールが跳ねてる
シャボン玉か飛んでる
五時のチャイムが鳴る
お別れの手を振る
足音がなくなる
誰もいなくなる
タバコの匂いがする
ため息が聞こえる
石を蹴飛ばしてる
段差を飛んで避けてる
おいしそうな匂いがする
おかえりの手をとる
ため息がなくなる
誰かがいる気がする
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誰もいない夕暮れの廊下
友達はみんな離れて遊んでる
名札を握って泣いてた
体育座りで泣いてた
迎えに来たお父さんは
仕事着のままで
泣いてたら怒られるから
涙を拭いて駆け寄った
手を繋いで帰るときに
隣から香る匂いが
いつまでも忘れられない
いつまでも大きいその手も
今は泣くこともなくなって
ひとりでいることも怖くない
名札の名前は漢字になって
その意味を背負う勇気もある
今は仕事をして汗をかいて
今になってその苦労がわかったよ
いつまでも忘れはしないだろう
あなたの隣で香る匂い
いつまでも敵いはしないだろう
あなたのその手の大きさには
「POET10YEARS」
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生まれた後から生えてきた
しっぽのような鋭いナイフ
町を歩けば傷つくばかり
石を投げられ無視をされ
生まれたときからあったなら
当たり前だと思えたことも
生まれたときにはなかったものが
心を切ってぼろぼろにする
丸いしっぽだったなら
可愛い可愛いと褒められただろう
ふさふさのしっぽだったなら
みんなは触りたがるだろう
誰も傷つけないように
ひとりになろうと決めたんだ
自分が傷つかないように
ひとりになろうと決めたんだ
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真っ白な雲を
雪を踏むようにゆっくり
歩いていこう
真っ青な空を
ベロが染まるくらい
食べてしまおう
真っ赤な夕日を
半分だけ残して
ポケットに仕舞う
真っ黒な空を
思い出の数だけ
彩っていこう
そしたらすぐにでも
真っ白な月を
抱き抱えて君の
枕元に置いていこう
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幽霊船のマストに
ドクロは書いてない
色落ちしたのか剥がれたのかはわからない
そもそも海賊だったのかも知らない
永遠にやってこない夏休みの前日
おとといと今日からを繰り返してる
昨日笑うはずだった君も
今日は泣いてる
誰にも触れてもらえない
スカイフィッシュはどこにいる
手当たり次第探してみたけど
見つけられない
これまでの物語の最後のセリフ
どうにかならないかな
消しゴムで消せなかったのは
書きすぎたせいだろう
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助けてほしい
万が一、私が自身の重力に耐えられず
迷惑をかけるようなことがあったなら
助けてほしい
気持ちが沈んだまま
夜を明かすようなことがあったなら
躊躇いがちでもいい
手をとって
味気ない世迷い言に絶望し
自らを溺れさせるようなことがあったなら
その爪で私を切り裂き
その脳で私を罵り
殺してほしい
目の前の事象を信じられなくなる前に
なんでもいい
何かひとつ確かなものがほしい
気づかないようなものなら
気づかせてほしい
晴天に伏す
その心の異様なまでに忠実なこと
私は光すら拒むか
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白銀か黄金か
君はどっちに見える?
透明なんて答えにならない
夜が明ければわからなくなるよ
そのときは太陽の色を考えよう
意味のない日々なんてないのかもしれない
忘れた日々が大切かもしれない
ひっくり返しても同じ色で
けれど君が大切にした色
見間違えたときは
恥ずかしがらずに聞いてごらん
信じられなくなったときは
うつむかずに見てごらん
変わらないようで変わってる
気がついたときでいいから
白銀か黄金か
うさぎかクレーターか
涙を流したのは
僕なのかもしれない
月なのかもしれない
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止まらないで回り続ける
いつかの彗星になりたいな
動かないで見守ってる
どこかの恒星になりたいな
ゆらゆらゆれる夜空
手を伸ばしても捕まらない
なりたいものはたくさんあるのに
なれるのはたったひとつだけ
さよならをして遠ざかる
いつかの人工衛星も
よろしくの握手が永遠に
どこかで仲良し連星も
ゆらゆらゆれる夜空の中
ふらり立ち寄った銀河で
すすり泣く声が聞こえた
窓のない部屋の奥