詩人:猫の影 | [投票][編集] |
草いきれが鼻を撫ぜた
何か思い出しかけた
掠れた声が美しい
貴女の面影が風に揺らめく
気のせいかもしれないが
何も知れない
現の世の浮き沈み
それだけなんだろうか
切なくなるのも空々しいので
一応笑ってはみた
楽しい思い出になればいい
か細い指が美しい
貴女の面影が枷に成る可く
木の下には仔猫が寝ているだけだが
かもしれない
誰何の声は遠退いた
それだけだったろう
嗚咽するのも馬鹿馬鹿しいので
一応笑ってはみた
忘れて行ければそれでいい
それがいい…
詩人:猫の影 | [投票][編集] |
天つたづむら
めでたいのだ飛ぶ鳥が嘲ってる
清き調を
うたはざらめや
なんのこっちゃ
なんのこっちゃ
歌や唱や詩やないや
やいのやいの
おーおーちょいとな
山に月が
さしのぼるや
なんたらかんたら
ありゃガンダーラ
俳諧か灰燼か廃人かいや
そこのけここのけ
はーはーさっぱりぱり
眠いだけのご冗談
笑止!
詩人:猫の影 | [投票][編集] |
扉を開けたら目に入るみだれ髪
小さな息が鼻を抜けた
歯が浮いた
顎も外れそう
笑いごっちゃない
笑いごっちゃないって
「そうしてるといい女だ」
クスリともしやしねぇ
そういう意味じゃない
So you, in the night.
歯が浮いた
嘘がばれそうね
笑いごっちゃない?
笑い事さ
「ナニカクウモノハナイカ」
薬にもなりゃしねぇ
そういう意味じゃない
So you, in the night.
足りない頭が空回る
やるせない顔はうっちゃっとけ
歯が浮いた
想像するだに恐ろしい
詩人:猫の影 | [投票][編集] |
浮いた気分が漂う空を
うんざりした目で眺めていた
暈ついた指先を重ねたみたが
もう何も覚えちゃいなかった
雨粒が音を立てて弾け飛ぶ
其の微々たる震え、なぁクロエ
流れ去るのが塵屑だけなら
嗄れた声色が嵩張ったので
もう何も語れやしない
空が静かに裂けていく
其の微々たる軋み、なぁエイミー
流れゆくのが群雲だけなら
掌から零れ出る
時の砂は絶えて無い
いつか見た風景
風が哀しく過ぎていく
其の微々たる揺らぎ、なぁ
詩人:猫の影 | [投票][編集] |
腹立ちまぎれに煙を転がした
宙に舞って溶けたのは何だったか
視界を細めたところでイマイチなにも変わりゃしない
口に含ませた燃える葡萄酒は、ノドを焼いて腑に落ちた
鼻に抜けるチョコレイト
しみわたる毒だ
愚かな僕が君に触れた
奇妙な声で君は笑った
汚れちまつたかなしみは、どうしたって雪ぎきれない
回り回る愚鈍
苦し紛れのビールは泡と化した
はじけてとんだのはシャボン玉だったか
どうにも気の利かないBGMが飽和していやがる
暗に含ませた言外の意味は
脳に障るから削ぎ落とした
食えない女だねぇと
口では言ってみた
道化の僕が君に触れた
虚ろな目が僕を笑った
汚れちまつたかなしみを願くば捨て去れないか
回る回る偽証
そうでした
私が悪うござんした
どちらに転んでも笑えやしねぇ
笑えやしねぇって
お道化た僕が君に触れた
虚ろな目が僕を諌めた
汚れちまつたかなしみを願くば
嗚呼コイネガワクバ
捨て去れはできまいか
回る回る偽証
回れ回れ愚鈍
詩人:猫の影 | [投票][編集] |
わざわざ刳り貫いた夏をトーストにのせた
喧しい蝉の鳴き声が耳についた
さよならを言われる前に、と女はいった
こりゃ失礼、そう男は言った
そんな簡単なもんならよかったのに
うだるような暑さをスープに混ぜた
やたらと塩っ辛いんだ
だから夏は嫌いだ
ライ麦畑は1人で行ってくれ
私じゃなくっても、と女は言った
そんな気も、そう男は言った
そんな簡単なもんな訳もない
五月蝿いくらいの日差しをミルクで薄めた
生温くって飲めやしない
だから夏は嫌いだ
砂糖黍なんか見たくもない
夏をわざわざ刳り貫いたっていいことなんてありゃしない
わざわざ、にはいいことなんてあるわけない
お手並みは拝見済み
さよならを言われる前に、
私じゃなくっても、
わざわざそんなこと言わなくっても、
おっとこりゃ失礼、
そんな気も、
そんなこと言っても何もわからない
何も見えやしない
詩人:猫の影 | [投票][編集] |
手元の煙草に火をつけた
ため息が形をもった
涙はどうもあたしには合わないわ
そう言ったあの日の女は泣いていた
星のない夜だった
笑ってやり過ごせることばかり
そのはずなのに
大変遺憾ながらうまくはいかない
声は掠れて走り去る喧噪が連れ去って行った
足元の石は素敵だった
拾われることを拒んでいた
そういえばあんただれだっけ
そう言ったその女は嬉しそうだった
形容できない笑みだった
許容できない矛盾をやり過ごす
それはできていたはずなのに
誠に遺憾ながらうまくはいかない
大変遺憾ながらうまくはいかない
気付けば自分も微笑んでいた
その矛盾を許していた
愚かな不合理を書き散らした
それはできない相談のはずだった
誠に遺憾ながらうまくいってしまう
大変遺憾ながらうまくいってしまった
女の頬の涙の跡がやけに美しかった
詩人:猫の影 | [投票][編集] |
もし世界が終わりを迎えたらなどと、
しようもない事ばかり考えていた
考えていたもんだ
もしや自分は自分じゃないのではと、
しようもない事ばかり
ばかり考えていた
いつか花は開くのだろうと、君は遠くを見て言った
オフィーリア、いつも美しく微笑んでいる
そして風景はにじむのだろう
もうそれは届くはずのない手だと、
どうしようもない夢の話を
話を思い出す
いつかその瞳は閉じるのだろうと、君は空を見て言った
オフィーリア、水面に漂う髪が透ける
そして大気は流れ込むのだろう
いつか散るその花の名前は、思い出せなかった
いつか笑える日が来るのかしらと、君はこちらを見て言った
オフィーリア、優しいその手が頬を撫でる
そして視界はたゆたうのだろうか
そしてオフィーリア、君は
詩人:猫の影 | [投票][編集] |
夜に目が覚めた
嫌な夢だった訳ではない
先週知り合った女から手紙が届いた
どうしても逢いたいそうだ
どうしても逢いたいなら、どうにかしてあえばいいのに
他人まかせにしていることに、当人は気づいちゃいない
風が窓のガラスを叩いて
勝手気ままに部屋を出入りする
塞ぎたくてもふさげない隙間が、そこかしこにあるんだろう
強情で、傲慢な、その心
目を閉じた
世界はあいも変わらず真っ暗だった
詩人:猫の影 | [投票][編集] |
あの赤いアレを切り刻んだ
切り刻んだんだって
あの茶色いヤツに刃を向けた
どうしたってそうなってしまう
油を引いて炒めるってなってしまう
そう、SO,炒めろ炒めろ
芯まで火が通った
芯まで腑抜けにされちまったって
水ぶっこんだ、ぶっ込むんだ、もうどうしようったって仕方ないや
ふつふつと沸き上がった怒りかそれは何か
あの四角いの、あの四角いの投入、ほら溶けていく
あとはもう煮込む、結局はそうなってしまう
だからもう、そう、煮込め煮込め
煮込め
鉄は熱いうちに打てというだろう、というだろう
そう、いうだろう
カレーも結局はそうなってしまう