詩人:哀華 | [投票][編集] |
滞っていた熱
染み着いた青色を
泣きながら
振りほどいた腕
いい加減にしてよ
根拠も何も
最初から
ありはしないのだから
私が私じゃないなんて
誰が言ったの
役に立たない
非常階段の隙間から
逃げ遅れ
踏み外し
落ちたのは
急降下する
灰色の空気
澱んだ水の上に
叩きつけられた体
今更ながらに懺悔
あの子を
殺したのは私です
最後の瞬間
罪を認めたら
私は楽に
なれるだろうか
死んだような街で
夕日を虚ろに
掴んで描いていた
その指は初めから
冷えきっていた
それだけは
分かっていたから
好きなのは
朝のような響きだけ
全てじゃなかった
最初から
穴あきだらけの
服を着込んでたって
ただそれだけ
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もつれたつま先
確かに転んだ体
無理に起きあがるのを
辞めただけ
うつ伏せのまま
倒れていたい
歩く事はしばらく
出来ないだろう
こうして
刺さった硝子を
わざと食い込ませ
脳の中へと届けて
漂う赤黒い水滴
私は何処に
行ったっけ?
昨日
おいてきぼりの記憶
腐った林檎
飛び散った砂糖
割れてしまったお皿
その上で
うつ伏せの私
床へ流れている物
それは
涙などではない
血小板
ヘモグロビン
鉄の味
日に焼けない白い腕
模様をなぞり
この世界が
壊れそうなくらい
一度だけ
大きな声で
泣き叫んだ午後の事
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頭の中蠅が飛んで
凄い音を立て
反響しあってる
その中で聞こえた
小さな声
「死んでもいいよ」
きっと天使の声が
聞こえてしまった
私はきっと土に
埋められて
跡形もなく
消えるべきなんだろう
飛べなくたっていい
地面を這って
死にかけながら
呼吸を無理矢理
続けていくから
怖くはないと頷く
灰色の目で
死んでいく私を
見つめてた
閉め切った
部屋の隅うずくまり
膝を抱え
空気をなくしてと
泣きながら祈っていた
眠りながら
死んでしまえたらいいのに
なにも
感じなくなったらいいのに
無感情になれたらいいのに
笑えなくてもいい
こうして一人
泣くこともないのなら
もう
笑えなくてもいい
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「オーブンで焼かれた
自尊心
引っ付かんで
連れて行かれたのは
ガレージの下
僕の名前はIt
人間にもなれない
“それ“以下の物だ」
そんな本を
貪り読んだ夜
私と似ている彼
誰にでも平等に
愛される資格がある
そんなのは
きっと嘘だ
殴られて
歯が欠けて
絞められて
吐きかけた
私もItだったから
あの頃
生きる事は
少し辛すぎて
愛されたくて
狂いそうだった
雨が痛くて
顔が歪んで
膝は泣いて
両手は死んだ
私はIt
“それ“以外の
何物でもない
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繰り返しの夜空
私の端を千切って
行った腕
激しくも
優しく撫でて
そっと落としてよ
この世界の
果ての果て
飛び乗った電車には
気だるい顔の乗車客
行き先を言わぬ
アナウンス
幼子の泣き声
隙間から漏れる風は
仄かに甘さを備えた
酸匂の香り
何処へ行くんだ
私を乗せて
あの果ての果てには
何があるんだ
そこには
今まで見てきた
どんな闇より
暗い世界が
あるだけだろうか
急に息が出来なくなって
それが苦しすぎて
今すぐに
死んでしまうような
気さえした
パニックディスオーダー
私の意識は
遠のくばかりさ
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こんなに白っぽい
部屋の中で
いったい私は
何をしてるのかと
無気力な目の玉を
右に左に
動かしていて
急に誰かが
後ろの方で
ドカンと弾けて
死んだ気がした
手も足も重すぎて
まだもう少しだけ
眠っていたかったのになんて
生きてることへの
言い訳
いつの間にか
遠くに話し声
笑っている
きっと私を
助けて、助けて
もう嫌なんだ
明日は真っ黒
その中に
私を沈めて
消して欲しいんだ
助けて、助けて
もう嫌なんだ
今日も真っ黒
その中に
私は沈んで
消えてしまったんだ
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押し殺していたんだ
何もかも
見るからに
ひどい顔で
見上げていた夜空に
ここには何もないと
半笑いで
語りかけて
きっと私
本当は誰よりも
まともな人間で
私を取り巻く世界が
狂っているだけなのだと
慰めているこの時
空間的な物に
蝕まれ
人知れず夜空と
融合したならば
私は飛べるんだろうか
紛らわせて
溶け合った
悲しみなど一つもない
左腕を抱きしめて
私には
私が居ると
言い聞かせ
切り込みを
指でなぞり
はらはらと泣く
私は飛べるんだろうか
真っ黒な世界を
跨いだ所のその先で
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痒い痛いと
弄っていた
心臓の奥の方
泣けない夜に
すでに疲れている私
夢の見方
明日の行方
私の存在
生きることは
辛すぎるほどで
息をするのは億劫で
先が見えない
そう言って彼女は
死を選び飛び降りた
瞬く事のない目は
まるで老人の様で
夢が見れない
そう言って奴は
薬漬けになり下がり
よだれを垂らして
しゃがみ込み
ラリってる目は
空虚に満ちて
星を映して
ないている様だった
苦痛なのは
存在する事
救ってくださいなど
もう言わない
神様はいない
願いも届かない
神様はいない
私に明日は来ない
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部屋の隅で
雑誌を切り刻んで
チェッカーフラッグ模様の
クッションに
顔を埋めて泣いて
いたんでしょう
君は自分で言うほど
大丈夫でもなくて
君は自分で言うほど
強くだってない
半分怒って
しっかり立って
それでも泣いて
まだ行けるなんて
今にも
崩れそうな笑顔で
微笑む仕方のない子
愛しているよ
そんなに強さに
憧れないでも
いいんだから
生きていてね
私に寄りかかって
楽に口笛なんて
吹いてればいい
辛くなんてないさ
今日は
こんなにこんなに
晴れ渡って
黄色く照らすのは
私の左手と
君の右手だけ
そうだね君は
口笛でも
吹きながら
大好きな
マスタードチキンでも
食べてればいい
少し止まって
それから
歩こうじゃない
春が来て
舞台に立つ私が
押しつぶされた
そんな時でも
変わらないで
そのままで
寄りかかってても
いいんだから
いいんだからね
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おとついの奥
そのまた深い場所
固まっていた物
どうしようもなく
なにやら放つ体
立って
いられなかった
今日なんかに
いっそ
水たまりと一緒に
消えちゃいたかったなんて
今更言えやしないさ
私自身を
置いてきたこと
悔やんだりは
していないけれど
あの日
あの時
あの場所で
確かに私は
存在し、
苦労や責任を
厭わぬ事、それも
受け入れることが
できるはずと
そして同時に
できないはずとも
思いこみ
「元々疑うことを
知らなければ
この体さえ
こんなには
憎しみ溢れて
いなかったはず」と
言いながら
いつの間にか
妄想壁なんか
築いてしまって
物珍しさで
寄ってくる
見物客には
唾を吐いた
抱いてあげる
その隙間にキスを
埋め込んでおけと呟き
片目を瞑り
誰にも気づかれぬよう
瞬く間に
溢れて流れた
汚らしい物を
腐った感情と共に
殺していたんだ