詩人:浜崎 智幸 | [投票][編集] |
・
生まれてくるとき
母の声を聞く
洗礼(先例)をうけて
ひとの世に入る
幸あれと
祈りの声
平穏(やすらぎ)は
二度と来ない
・
・
滑らかな肌をもって
生まれれば
不幸せなどは
知らずにいたものを
休めよと
産土(つち)が告げる
「滑石の色をあげる」
欲しいのは
滑石の‖‖‖
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・
川のなかを見てごらん
野をゆく川を
透明な水のなかを
泳いでいるよ
覚めたくない夢だよ
つかまえようよ
たぶんみんなこうして
歩いてるよ
・
・
人の汗を見てごらん
貴い汗を
愛する家族のために
働いてるよ
気高すぎる夢だよ
なんにも言わず
疲れている瞳で
笑ってるよ
・
・
流れる血を見てごらん
慈悲深い血を
命の重さを伝え
チューブを走る
かけがえない夢だよ
生きていこうよ
分けられない痛みも
分けたいんだよ
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・
少女は
母の持ち物の指輪を
そっとはめてみる
誰もが
そんな悪戯を
通って生きてきたんだね
臆病とか怯懦とか
どうでもよかった航跡
・
・
扉を開けた 三面鏡
禁忌と慚愧 交差する
残酷よりも甘美な血
蒐めて輝く宝石
恭順とか彌縫とか
どうでもよくなる光量
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・
混みあう国道
山に向かってステアリング
そこから始まる
蒼い夜のハイウエイ
深い悲しみを
クレスタに乗せたら
星の降る街に
さよならと言える
鈴田峠までに
君のソアラを抜こう
鈴田峠までに
星を撃ち落とそう
・
・
空港の島は
人工にきらめく
君はいつだって
僕をだましてた
ハンドルはいつも
傷つかないほうへ
溜め息にまかせ
浅く切ればいい
多良見インターまでに
君の嘘を暴こう
多良見インターまでに
夢を見限ろう
深い悲しみを
助手席に乗せたら
君がいた街に
さよならと言える
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すべて燃えた
すべて消えた
深い悲しみから
生まれた「いのち」
ひとしずくの
露のなかに
ちいさな胞子が
つくられました
春がきました
・
・
誰もいない
誰も来ない
黄泉の国のような
静寂<しじま>の朝に
鳥が鳴いた
一羽だけで
たった一羽だけで
鳴いていただけ
春が来ました
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遠い日は広い河の
岸で悔し泣きしていた
キラキラと憎いほどに
河はまぶしく光ってた
僕はやがて ずるいことを覚える
だけど待とう
濡れたシャツを冷やす風
歌を創れ 歌に還れ
軽い羽を取り戻そう
いま心のon the mark
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・
ふるさとは
鳥が歌い 花が招く
山のきらめき
辛夷(こぶし)咲く
愛と人が向かいあった
妙(たえ)の国
ここに来るのなら
↓
やみに
さぐる
しろい
いとを
こころ
のなか
うずめ
た
あなたに
とどくま
で
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・
大袈裟なほどハンドルを切る
水面に刺さる大粒の雨
いつか見た空 思い出せない
ひとりで探す私の希望
力を分けてくれるなら
たとえ悪でもかまわない
・
・
泣けばよかった 泣けた季節に
まぶしいほどに過去は輝く
切れ端ばかり集めたような
意味のない都会(まち)走り抜けたら
力でねじ伏せてしまえ
名前で呼べるもの すべて
力で滅ぼしてしまえ
言葉にできないものまで
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・
すこし 窓を開けたらいいね
あの町が見えたなら
もっと 心開いてみよう
優しさに会うために
海沿いの道を走り
トンネルをいくつか抜けて
懐かしいダイヤルで
懐かしい声を聞こうよ
西の風が吹くときは
心はやるから
これ以上無邪気には
なれない
そんな気がする
・
・
そうさ 嘘をやめたらいいね
あの人に会えたなら
そして 大きな声で言おう
“諦めはしないよ”と
季節より早い風と
降りそそぐ星を味方に
憎いほどの自信で
懐かしい肩を抱こうよ
西の風が吹くときは
心はやるから
これ以上素直には
なれない
そんな気がする
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【長崎弁】
アラカブは釣れよんね
こん海はよんにゅ獲るんね
こん海がいつまでん、ないどるごと
祈っとるけん
【標準語・意訳】
カサゴは釣れますか
この海は豊かですか
この海がいつまでも静かなように
祈ります
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