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望月 ゆきの部屋  〜 新着順表示 〜


[274] ゆうううつ
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

ねえ、知ってるかい。


ゆうううつ、

ゆうううつ、


「あんた、それ間違っとるよ」

いいや、
いいや、かあちゃん
ぼくは間違ってなんか、ない
間違ってなんか
だってラッキーナンバーは
3、だったんだ
おとといのワイドショー


ゆうううつ、

ゆうううつ、


「あんた、それ間違っとるよ」

いいんだ、
いいんだよ、かあちゃん
あさっての運動会
おなかが痛くて
たぶん、きっと、
行けない、って
予言しただけ


ゆうううつ、

ゆうううつ、


「あんた、間違っとるって」

わかってる、
わかってるよ、かあちゃん
結果がすべてじゃない、って
そんな
きれいごと、も
止められない、流れ、みたいな
そーゆーのが
あるってこと、も


ゆうううつ、

ゆうううつ、


だけど、
だけどさ、かあちゃん
唱えてるうちにさ、
前にすすめる、
そんな気がする
そーゆーのが
あるってこと、


ねえ、
知ってるかい。

2004/09/22 (Wed)

[273] 秋晴れ、バリトンサックス
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

陸橋の上では
なにもかも、音色だ

誰かの哀しみも
誰かの嘆きも
低く、
低く、
艶やか、に
奏でて
奏でて

陸橋の下に
五線譜、のレール
行き交う列車たちはアレグロ
速く、
速く、
艶やか、に
打ち消して
打ち消して
見えないどこか、の
アダージョ

天高く、青、そして 青。

町の向こうから、ホイッスル
かなたから、ピストル
ピストル、
スタートか
または最期、の

金色の肌
映すのは、空の秋
を横切ってゆく、列、列、列、
渡り鳥の、ドレミファソ
高く、
高く、
艶やか、に
溶け込んで
溶け込んで
鰯雲のすきまに
バリトン、の


解き放て、音、そして 音。

2004/09/16 (Thu)

[272] 
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

気づかれないように
水面を そそ、と
歩いていたのに
さっき拾った
オシロイバナのたね、を
うっかり落としてしまった

ひろがる波紋
幾重もの水輪の先、に
あなた

    つながる、
    つながる、

さしだされた
その手、さえ
月のカケラ
もどかしさにも 似て

声、をください
言葉、をください
嘆き、をください
叱責なら なおさら

音、を
音、を

    つたわる、
    つたわる、

空から空、へ
街から街、へ
木から木、へ
人から人、へ

骨から骨、へ

    ふるえる、
    ふるえる、


わたしは あなたに 響いてますか。

2004/09/12 (Sun)

[271] 階段
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

むかし むかし 


パイロットのきみ は
大きくなったら
ひこうき になりたかった

運転士さんのきみ は
大きくなったら
でんしゃ になりたかった

宇宙飛行士のきみ は
大きくなったら
ロケット になりたかった

飼育係のきみ は
大きくなったら
キリン になりたかった
ゾウ だったかもしれない

サラリーマンのきみ は
大きくなったら
野球選手 になりたかった

ぼくは、といえば
大きくなったら
おとな になりたかった
たぶん みんなそうだったろう


むかし むかし


ひこうき になりたいきみが
パイロットになりたい、と言い

でんしゃ になりたいきみが
運転士さんになりたい、と言い

ロケット になりたいきみが
宇宙飛行士になりたい、と言い

キリンあるいはゾウ になりたいきみが
飼育係になりたい、と言い

野球選手 になりたいきみが
野球を忘れ

おとな になりたい
ぼくが
みんなが
おとな にはなりたくない、と
言った とき

そのときが、きっと
きみが
ぼくが
みんなが


階段の一段目 を
のぼりはじめたとき
なのだろう 



2004/09/03 (Fri)

[270] 地図夜
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宵闇、
五線譜の電線、で
輪郭のぼやけた影だけの鳥たちが奏でるのは
誰かの
失くしてしまった、声
あるいは、足音
にも、似て
道しるべ、にするには
あまりにも不確かな

風通しのよくなった
右側、をさぐると
そこには、
今も、なお
世界地図、は広がっていて
黒装束の夜に手をのばすと
在るはずのない、
見えないそれ、に触れてしまう


あなたの頬、に ひまわりの丘
あなたの鼻すじ、に ロッキー山脈
あなたの右耳のうしろ、に カシオペア座
あなたの口元、に ニュージーランド
あなたの髪、に サンゴ礁のリーフ
あなたのつむじ、に ペンギンが
あなたのひざ小僧、に スフィンクス
あなたの足の中指、に セーヌ川
あなたの爪、に 赤いブランコ
あなたの背中、に あの日の、海
あなたの心、に わたし、
あなたの心、には わたし、
ではない、誰か
ほかの、誰か


ひととおり
世界を旅しては、還る
くりかえし、
くりかえし、

暗闇で、目が覚める

たしかなこと、といえば
地図の上は
いつも 雨が降っていた



2004/08/27 (Fri)

[269] きみの、こと
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きみのこと、
きみがおもうほど
好き、じゃない、けど



きみのこと、
きみがおもうより
嫌い、じゃない、よ


2004/08/26 (Thu)

[268] プロセス
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やがて来る、終わり、に向かって
ぼくたちはひた走る

ともすると
くずれて、皮膚さえも通り抜けてしまいそうな
微粒子たち、
さらら、さらら、な
透明、な

前ばかり見ていたら
追いかけてくる、次の瞬間、に
気づかず
のみこまれた、夏
たわむれ、さえも
シャーベットの
ひとさじ

だって、
ふりかえらない、
って、約束
小指の先でずっと
響いてた、から

やがて来る、終わり、は
今、どこまで
それを知ってか知らずか
ぼくたちはひた走る、
走る、走る、
走る、
走る、

どう走ったか、だろ
たぶん
たいせつなこと、は
だってそれは、終わる、のだし
だってそれは、やがて来る、のだから


もう、ぼくは
その場所、がどこでもいいんだよ


2004/08/26 (Thu)

[267] ミシシッピ・ブルー
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  おや、河をめざしていたのでは
  なかったのですか

      はい、ここは河です

  どうにも、ここは海、のようですが
  その証拠に、
  こんなにも広く、青い

      河、ですよ
      そこここに、橋がかかっていたでしょう

  それでは、その橋を渡った向こうで
  会える誰か、は 誰ですか


旅をしている、
いつからだったか、もう今となっては

ほこりっぽい、風
うすく煙った、空
はるか遠くのサボテンの声
横切る客船に、Mississippi、の文字

旅先ではいつも
とおりすがり、で
景色にとけこまず、
知ること、を無意識に拒みつづける
入りこまない、
自由

旅をしている、
ぼくは、きみへと
きみは、


  やはり、ここは河のようですね
  さきほど、船が
  
      ええ、
      けれどそれはもう、
      どうでもいいこと、なのです
  
  そうですか、
  では、たいせつなこと、はなんですか


      ここがまだ、
      旅の途中、だということです




2004/08/26 (Thu)

[266] ふた
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耳をふさいで、いた
宇宙の、すみっこ、で
その間も
朝と夜と砂時計、は転がりつづける

なにもかも、と
言えるほどの、なにか、

ふたりに、あったか
しれない

耳をふさいで、いた
あなたの声が流れ出ないよう、に
暗い、穴の奥深く、

なにもかも、を止めていた

2004/08/20 (Fri)

[265] スキ、スキ、
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いろんな、スキ。

いつもとなりにいて、のスキ
見つめていたいだけ、のスキ
あはははと笑いあいたい、スキ
並んで歩きたい、スキ
そんなのはおそれおおい!、のスキ

髪にふれたい、スキ
髪にふれてほしい、スキ
手をつなぎたい、スキ
指をからめたい、スキ
キスをしたい、スキ
キスだけではいや、のスキ
からだを重ねたい、スキ
からだを重ねたいだけ、のスキ
からだを重ねるだけではいや、のスキ
いつでもそれ以上を求める、スキ

おはよう、のスキ
行ってきます、のスキ
行ってらっしゃい、のスキ
ただいま、のスキ
おかえり、のスキ
ありがとう、のスキ
ごめんね、のスキ
さよなら、のスキはいらない、のスキ

あなただけスキ、のスキ
あのひともスキ、のスキ
だれでもよかった夜、のスキ
あなたでないとダメな朝、のスキ
それに気づかないあやまち、のスキ

いけないことだよ、って教えてくれたのは
大好きなひと
いけないこと、って
ずっと知ってた、
知ってた、
知ってたけど、わかんない
わかんない、今も


スキ、はぜんぶ嘘で
スキ、はぜんぶ本当だから
スキ、は困る


2004/08/16 (Mon)
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