ホーム > 詩人の部屋 > 望月 ゆきの部屋 > 新着順表示

望月 ゆきの部屋  〜 新着順表示 〜


[254] シロップ
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

扇風機に向かい
アー、と風をふるわす昼下がり
花すべりひゆは
だいだい色の花弁を閉じ
今日の仕事を早々と終える

台所から
氷のけずられてゆく音が
涼しくひろがる
夏さなか

あの頃
ぼくはちっぽけで
早く大人になりたかった
世界はとてつもなく大きくて
広く果てしないと思っていた
それに負けない
大きなものを持っていると

真っ白な氷の山
にせもののイチゴの赤は
たっぷりと

大人になった今も
変わらずにぼくはちっぽけなのに
世界はとても窮屈で
さっき吐き出した息を吸っては生きる
それでもなお
ぼくは
大人になってゆく
大人になってゆく

2004/07/21 (Wed)

[253] 宇宙逃避行
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

チョコリットもつんだ
燃料も じゅうぶんだ

さて。
火星へ行くことにしたよ

彼女があんまりうるさく
ぼくをがんじがらめにするから
もう、ぼくは

タコの足で
ぎゅうとされる方が
ずっとましだ
(ただし タコはメスに限る)

火星に行ったならきっと
スーパーで
野菜から順にまわらなくたって
お風呂場で
洗面器をさかさまに置かなくたって
なーんにも言われないんだよ


2004/07/15 (Thu)

[252] メダカ風鈴と縁側 U
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

「はい、あなた。ご飯ですよ。」
「いただきます。」
ままごとが繰り広げられる縁側
出された茶碗には
まーるくまーるくなった
だんご虫が5粒入っていた

その後もだんご虫は
味噌汁にもなったし
ハンバーグの皿にも転がった

すぐ隣には
メダカがうじゃうじゃ泳ぐ水槽があったのに
なんでぼくらは
メダカをご飯や味噌汁に
しなかったのかな

なんでだろ
なんでだ


チリン、チリン、

軒下で答えたのは
金色のメダカが泳ぐ
風鈴だった

2004/07/14 (Wed)

[251] メダカ風鈴と縁側
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

風が見たいの、と
きみが言ったから
縁側に座っててごらん、と
言ったんだよ
本当はそこじゃなくたって
いいんだ

吊るされた青銅は
お寺の鐘にも似て
思わずぼくは
しあわせ、とかを
願ったりする

その間もずっと
風が見たいの、と
言いながら座るきみ
の黒髪はさらりさらりと揺れ
投げ出した足先を通り過ぎる
雲の影

もたれかかる柱には
もう名前すら消えた
いくつもの横線
隣には
孵化したばかりのメダカが泳ぐ
金魚鉢が

いつしか目を細め
うとうとと首をもたげる
さっきから風の中のきみ
のカーディガンが揺れるたび
一番下のボタンが鉢にあたって
カラン、カラン、と
涼をよぶ

2004/07/13 (Tue)

[250] シュガースポットU
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

夕暮れの熱を
ポリエチレン越しに感じながら
運び込まれたボク

「急患です」とは
誰も(もちろんボクも)
叫ばなかったので
薄暗いベッドの上に放置される
意識もうすら遠のいて
そのままボクも眠ってしまったらしい

「かなり転移してますな」
遠くで声がして目をさます
上から見下ろす影はつづける
「もう長くない」

ああ、これというのも
運び込まれて数日間
ベッドに放置された結果ではないか
こんな時どうしたらいいのだ
まずは弁護士に相談だろうな

と電話帳に手をのばした
と同時にボクは服を脱がされる
と次の瞬間にはあとかたもなかった

たぶん
手のほどこしようがなかった
のだ

それにしても
美味かったのだろうか
と シュールを置いて

2004/07/12 (Mon)

[249] なみだ
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

いっそ
流せばよかったんだ

流せたなら。


溜めすぎて
ココロにカビがはえました

2004/07/12 (Mon)

[248] シュガースポット
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

霧の森をぬけると
朝朱の陽が射し
湖はゼリーで
きらきらと波打っていた

向こう側へ行きたいの
今がたぶんその時だって わかるから

手をつないでね
ほら、
標識だって あるわ

わたしの胸には
かすかに
あなたにも見えないくらいの穴があいていて
ゼリーの先から風が吹くと
そこをすーすーと通りぬける

あなたがそれを埋めてくれたら
向こう側にも渡れるわ
ここにはまだ
スミレが咲いていないの
ほんの少ししか

あなたは一粒
氷砂糖をひろって
やさしく つめたく
わたしの穴をふさいだ

向こう側に行きたいの
スミレがきっとたくさん咲いて
今がたぶん
その時だって わかるから
そしたらきっと
あれを作るの

向こう側には
いつもたくさんあるように思う

2004/07/10 (Sat)

[247] リトマス紙の夏
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

右曲がりの坂道を
30歩のぼったところ

雨上がりには
アジサイが
酸性やアルカリ性に色づくので
それならば涙は、と
通りすがりのにわか雨を
ふたたび

つま先に 
ひとつぶの氷
ひろってそれをポケットに

透けてみえるほど近くに
夏は在って
ポケットの中で
氷は揺れている

にわか雨もやんで
アジサイは
名残りのアルカリ性

ポケットの中では
相変わらず
氷が揺れている

どうしても 氷が騒ぐので

もう 夏は
あきらめなければ、と
思った。


2004/07/09 (Fri)

[246] 湿気る。
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

うだうだ うだってんなよ
うだうだ。

水、やりすぎてやしないかい?

根腐れには 
注意しろよな、おい。

自分。

2004/07/08 (Thu)

[245] あなたが恋をしているあいだ
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

四角い出窓にひじをついて
わたしは お空をみてました

ときどき 桃色の雪が
紛れこんではちらついたりして
世界は彩られたりしましたが
わたしは お空をみてました
ひじをついたまま

そのうち 水しぶきがいく粒か
窓の外にはりついて
東の彼方の海の真ん中で
魚が跳ねたのだろうなと思いましたが
わたしは お空をみてました
ひじはついたまま

こんこんと小さく赤い手のひらが
ガラスをノックします
返事をしようと窓を開けましたが
落ちた手のひらは
カサカサと重なってわたしを見上げておりました
それでわたしはまたお空をみてました
ひじをまたつきなおして

だんだんと目の前は白くにごり
お空もかすんでおりましたので
ほっぺをガラスにくっつけて
右へ左へ動かしますと
視界はキョロキョロ開けました
が 窓の外にもまた白は広がっておりました
思わず飛び出したくなりましたが
わたしは お空を忘れられず
ほっぺの形のガラスから
わたしは お空をみてました
ひじもそろそろ痛みます
わたしは お空をみてました


あなたが恋をしているあいだ

2004/07/10 (Sat)
370件中 (131-140) [ << 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 >> ... 37
- 詩人の部屋 -