詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
机の上にある
茶色の箱を移動し
空いたところに植物を置く。
瓶にさした
ポトスとベゴニア…
黄緑と緑の葉…。
朝の光の中で
彼らはつぶやく。
「満つ喜びは今に」。
「足る喜びはここに」。
瓶にさした
ポトスとベゴニア…
清しく輝く
黄緑と緑の葉…。
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光る涙と
満面の笑顔の中に
勝利の喜びだけなく
周りの人に
支えられることの大切さを
教えてくれる選手たち。
けれど彼らは
誰より孤独を知っている。
だから彼らは
自ら孤独に立ち向かう。
強さは
愛と孤独が紡ぐ
星のごとく
花のごとく…。
見るものの胸をも熱くする。
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ひんやりした空気に起こされ
長袖を着て水やりをしていると
板塀の向こうに
ワンピースのあの子。
隙間から覗いて
「おはよう」と言うと
「今日はだいぶ寒いね」と
ノースリーブの腕を
ぶるんと震わせた。
オリンピックが始まって
あの子は一人でラジオ体操へ。
それももうすっかり慣れた
大会13日目の朝。
庭の秋明菊に小さな蕾。
また少し秋の気配。
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「暑いね」と言うと
「暑いの好き」と言う。
この夏
数え切りないほど
「暑いね」と言って
初めてもらった返事。
「だから、夏が好き」と
彼女は笑顔で続けた。
その爽やかな笑顔に
元気のおすそ分けをいただく。
炎天を
涼やかに飾る
百日紅のごとく…。
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夏の初めに出会い
ともに幾時間かを
過ごしたキミは
もうすぐ再び遠い国へ。
「さようなら」を言うために
通りかかった空き地に
コスモスの花。
季節の移り変わりを告げる
季節(とき)告げ花。
自らの中に
新しい季節を咲かせようとする
キミのような花。
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今年は
あきらめていた花火見物。
友の気遣いで
思いがけず会場へ。
夕日が半島に沈み
星が瞬き始めた
夏空に咲いた
7000本の光の花々。
一瞬の煌めきならば
いっそう切なく美しく。
宇宙に咲く
いのちのごとく…。
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農家の方から
売り物にできないという
トマトをたくさんもらう。
以来、毎日
ミキサーにかけて
自家製トマトジューズをいただく。
さっぱりした味で
ほどよい酸味。
手に取れば
太陽の熱が伝わってくるような
真っ赤に熟したトマト。
熱をもって熱を制す。
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ガラス壜に入れ
仕事場の机に迎えた
バラの乙女たち。
アプリコット色の
匂えるような彼女たちに
似合うようにと
机の上を片付ける。
文具や本で
ごちゃごちゃしていた
机上がすっきり片付く。
あっさりと…。
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「あっちゃんが出てこない」。
あの子はつぶやく。
あっちゃんと
一緒に行っていたラジオ体操。
けれどその日
あっちゃんは出てこなかった。
しばらく待っていたが
あきらめてあの子は
ラジオ体操の会場へと向かった。
そして今日も一人で。
ロンドンオリンピックが始まって
あの子には
ちょっぴり寂しいラジオ体操。