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浮浪霊の日記

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プロフィール
詩人名 : 浮浪霊
詩人ID : strayghost
年 齢 : 24歳

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メモ
2011/01/01(Sat)


 いいか 良く覚えておけ

(二宮曀ニノミヤカゲルは宣った)
 
 知らなくていい事など 存在しない






 fölösleges beleélnünk magunkat a helyzetükbe?

 Fölösleges a boldogságuk?


浮浪霊

弐號試滅 【実動風紀】 鉄之章 メモ
2011/01/02(Sun)

「その辺にしときなよ」

 戸が開けられる音と女の声がし、小野谷満留は弾かれたように振り返る。

「どうやったって、あんたじゃその女に届かない」

 浜川天下(ハマカワアマカ)だった。
 鄭日美と榎木秀次を引き連れている。三人ともが武装し、校服に身を包んでいた。後者二人が敵意をこめた眼差しを満留に向けているのに対し、浜川はあくまでへらへらとしたふざけた笑みを浮かべている。
 
「生徒総聯構成校油井市第三校都、生徒会指導局風紀委員会実動部三番班班長代理、浜川天下」
「同じく、班員鄭日美(チョンイルミ)」
「榎木秀次(エノキヒデツグ)だ」
「小野谷満留(このやみる)君で間違い無いかな? 大人しく御縄を頂戴するか、もしくは」

 浜川天下が、抜刀する。

「死ぬまで抵抗するか。選べ」

 小野谷は自分が総毛立つのを感じた。逃げる機会を伺い後ずさる。
 生死の境。これこそ、欲しかった修羅場だ。バットで浜川を指し、断る、と言い放った。
 天下の無意味な微笑みが剥れ落ちる。呆れた様な鼻白んだような表情が浮かび上がり、その口が開かれ、そして



「  {號}  」



 呶轟(ドゴウ)、聲絶(セイゼツ)。『思い知れ』− 音写不可能、破格の気合が密室に充満し、ビルがびりびりと震える。天下の規格外の声量は満留を叩き打ち、意識を揺さぶるような衝撃を以って打ちのめした。
 


☆★☆



月(ルナ)と擦違い際、耶賀瀬ミツウラが口を開く。

「浜川」
「はい?」
「こいつはもう良い」

 月は思わずえ、と間抜けな声を発し遠ざかる耶賀瀬ミツウラの背を目で追う。月は視界の隅で浜川天下がフッと動くのを見た。

 駿馳抜刀、剣撃切断、一閃斬殺玉砕散華。

 浜川天下の振り抜いた凶剣円華が邪悪な閃きを見せ、月の上体と下半身が別れる。『支え』を失った上半身がゆっくりと落ちてゆく…沈んでゆく?…永遠にも思える時間、まだ生きていた月と浜川の目が合い、月は初めて笑っていない浜川を見た。
 次の瞬間月の世界は白く染まり、そして月は肉になった。
 


 全ては、耶賀瀬ミツウラ生徒会長猊下の御心の儘に。
 円華にこびり付いた月の粕を拭い取りながら、浜川天下は呟いた。





浮浪霊

弐號試滅 【実動風紀】 肉之章C 推敲中
2011/01/04(Tue)

風紀委員会の井浦基樹副委員長とその護衛を務める保呂瑪瑙(ほろひかり)委員、田安劉真(タヤスリュウマ)委員は武装した化学部員達の余り愉快でない歓迎を受けた。
井浦基樹一同は化学兵器で武装した部員たちに専用のマスクを着けさせられ、やっと科学部部室に入室を許可された。

「よおう」

白衣を羽織り顔面をマスクで覆った空田誅如(ソラタセゴト)化学部部長だ。

「物々しいですね」
保呂が気持ち悪そうに呟く。
「なんだ、あの大砲は」
 井浦が問う。
「零式撒絶(サンゼツ)の事かな?」
「報告に無いぞ」
「してないからな。お前には少なくともな。委員長には話を通してあるよ。あれは凄いぞ、廊下とか校内での使用を想定したものだ。一艇で一クラス水酸風呂に変えられる事を目標に今一式の完成を目指している」
「僕は蚊帳の外か」
「そういうことだ。何しに来たのかな?」
 保呂はギリと歯を食いしばるが、井浦はさり気無くそれを制して言う。
「…野犬群の事だ。町に人食いの獣が溢れている。知らないのか?」
「知っているとも、外のあれは野犬対策の自衛だよ。失礼だったのかもしれない、だがしょうがないだろう? 敷地の隅にこんな張りぼての部室しか宛がわれていない不遇な俺たちは、こうやって自衛するしかないのだよ」
 にやにや嘲いながら空田が無茶を言う。事故を起きれば人が死ぬ危険な空間を校舎内に置くわけにもいかない。
「実動部三番班の班長代理から依頼だ。犬が好んで食うような毒入りの餌を作ってほしい」
「浜川君か。井浦君、あの子は本当にいい子だよ。もっと待遇を良くして上げなさい。がださいとぼやいていたなあ。装飾品の類の支給を」
「副委員長は毒入りの餌の話をしているんだ」
 押し殺したような声で、田安が言った。ちっ、と空田は不満そうに舌を鳴らした。
「頼まれたがな」空田誅如の白衣の下に組まれていた手が、物乞いがするように伸ばした。「サンプルが必要だな」
「サンプル」井浦が繰り返す。
「そう、サンプル。犬とはどういった種類の毒をどのくらい盛れば死ぬのか。どういった毒を使えば犬に感づかれないのか。実験するから、モルモットに野犬を捕まえて来て欲しい」
「何匹要る」
「三百匹と言いたいところだが、そうだな、とりあえず三十匹ほど」
「多いな。まあ、善処する」
「そうしてくれ」


浮浪霊

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