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弐號試滅 【実動風紀】 鉄之章 メモ
2011/01/02(Sun) 「その辺にしときなよ」 戸が開けられる音と女の声がし、小野谷満留は弾かれたように振り返る。 「どうやったって、あんたじゃその女に届かない」 浜川天下(ハマカワアマカ)だった。 鄭日美と榎木秀次を引き連れている。三人ともが武装し、校服に身を包んでいた。後者二人が敵意をこめた眼差しを満留に向けているのに対し、浜川はあくまでへらへらとしたふざけた笑みを浮かべている。 「生徒総聯構成校油井市第三校都、生徒会指導局風紀委員会実動部三番班班長代理、浜川天下」 「同じく、班員鄭日美(チョンイルミ)」 「榎木秀次(エノキヒデツグ)だ」 「小野谷満留(このやみる)君で間違い無いかな? 大人しく御縄を頂戴するか、もしくは」 浜川天下が、抜刀する。 「死ぬまで抵抗するか。選べ」 小野谷は自分が総毛立つのを感じた。逃げる機会を伺い後ずさる。 生死の境。これこそ、欲しかった修羅場だ。バットで浜川を指し、断る、と言い放った。 天下の無意味な微笑みが剥れ落ちる。呆れた様な鼻白んだような表情が浮かび上がり、その口が開かれ、そして 「 {號} 」 呶轟(ドゴウ)、聲絶(セイゼツ)。『思い知れ』− 音写不可能、破格の気合が密室に充満し、ビルがびりびりと震える。天下の規格外の声量は満留を叩き打ち、意識を揺さぶるような衝撃を以って打ちのめした。 ☆★☆ 月(ルナ)と擦違い際、耶賀瀬ミツウラが口を開く。 「浜川」 「はい?」 「こいつはもう良い」 月は思わずえ、と間抜けな声を発し遠ざかる耶賀瀬ミツウラの背を目で追う。月は視界の隅で浜川天下がフッと動くのを見た。 駿馳抜刀、剣撃切断、一閃斬殺玉砕散華。 浜川天下の振り抜いた凶剣円華が邪悪な閃きを見せ、月の上体と下半身が別れる。『支え』を失った上半身がゆっくりと落ちてゆく…沈んでゆく?…永遠にも思える時間、まだ生きていた月と浜川の目が合い、月は初めて笑っていない浜川を見た。 次の瞬間月の世界は白く染まり、そして月は肉になった。 全ては、耶賀瀬ミツウラ生徒会長猊下の御心の儘に。 円華にこびり付いた月の粕を拭い取りながら、浜川天下は呟いた。 浮浪霊
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