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浮浪霊の日記

2010年06月


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詩人名 : 浮浪霊
詩人ID : strayghost
年 齢 : 23歳

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めも 自炊・あいのうた・曬昧府
2010/06/02(Wed)

 
自炊ってすばらすぃ。
自分で御飯作るようになってから食費が七分の一に成ったし、温野菜が!温野菜が!温野菜が!食べれるようになったし。

ほんの数年前までは某肉親が私が包丁を持ったといってはヒステリーを起こし鍋に火をかけたといってはヒステリーを起こし味が成ってないといってはヒステリーを起こしていたので、料理など考えることも出来なかったが。

お陰で高校時代は肉(焼いただけ。いわゆる肉のみ、内臓は無し)と生野菜(刻んだだけ。ドレッシングなし)と御飯(炊いただけ。死ねば好いのに)ばかりを何年も何年も食い続けるはめになった。そりゃ貧血にもなるさ! 拒食症も発症するさ!

親子の縁を切られたとき私が喜んだ気持ちがわかるだろう?
 

☆★☆
 

 駅前の塾の窓から外を見晴らすと見えるもの。
 昼も夜も盛況な鉄と偽石(ベトン)のパラダイス。
 人と車で今日も昨日も一杯一杯、
 明日も明後日もずっとずっと。

 そんな春の日。
 
「お嬢様」
 げ。
「憂鬱でございますか。如何ですか今宵は一つ街の方へと繰り出されては」
「……。」
 猪原この野郎気安くお嬢様とか呼びやがって猪原な顔してニヤニヤすんな身の程を弁えろこの畜生が汁物にするぞ。
 うう。僕は辟易した。いじめっ子の猪原はなぜか酷く僕のことをお気に召したようで、最近つと付きまとってくるのだ減量しろ。
 なんとかしてぎゃふんと言わせてやりたいものだが。
 上手い切り返しは無いか無いか。
「そうだね」脳内で忙しく罵詈を吐きながら出来るだけ事も無げに言い放つ。「エスコートしてくれるなら考えないでもないかな」
「……。」
「………。」
「……ぶはっ!」
「……っ!!!」
 猪原がげらげら笑い出すのと周囲で腐女どもの黄色い歓声が上がるのはほぼ同時だった。恥ずかしさに顔が赤くなる。なんたる屈辱、しかもてめえきめえ顔して唾飛ばしてくんじゃねえ!
 恥ずかしさの余り穴があったら猪原を殺して埋めたい。ありがたいことに後席で友人の瀬戸川慶(けい)が憤ったような深刻な顔をして加勢に来てくれたようだ。彼に幸あれ!
「うっそ、今のってデートのお誘い? 嬢哉(ジョウヤ)は猪原みたいなのがタイプなん?」
 前言撤回死ね! 今死ね直ぐ死ね此処で死ね!
「……分からないかな、俺は外見で判断しないんだよ」
 もう引っ込みがつかない。
「「…………グハっ!!」」
 ああ、やっぱり!  
 二人してひいひい笑いやがって! そ知らぬ風を装ってつんとしてなきゃなんない俺の身にもなってみろ! あと女共手前らキャーキャー騒ぎやがってウゼエんだよ…ってどうして歓声に男が混じってんだよ大丈夫なのかこの国!?
 だめだもう収拾がつかない。早く樹(シュウ)と帰りたい。

 
☆★☆


おーし、見えたぞ。

 ☆物語の舞台

時は西暦二千二十年代。我らが主人公牧岡神與(みよ/Matyás)はバーチャル学園都市『曬昧府(レイメイフ)』に在学している。
三次現実(基定現実と仮想現実が錯綜する拡張現実のこと)に存在する曬昧府は衛星軌道上に設定されたお洒落な仮想建築物で、見晴しし最高な高所恐怖症者にとっての地獄である。
牧岡黎都が構想し東洋先進諸国と欧州連合が出資して、グローバル化が後戻りできないところまで進行してしまった以上いっそ未来を担う各国の次世代をごっちゃにして教育を施し、世界市民的意識を醸成しようという割と夢見がちな意図を以って設計された。

 ★舞台背景

直接民主主義への復古運動の成果、大韓民国発民主カトリック運動・法王選挙の制定化・キリスト教の強大化・常設十字軍の設立・キリスト教権威主義・平州語(ラテン語)の復権、情報化の完成と空間のインターフェース化、旧字体の再使用及び漢字文化圏の回復と拡大、漢文の復権、民間宇宙開発の進行
西洋に於ける宗教的帰属意識の強化と民族的国民的帰属意識の減退
視覚言語使用の拡大
 『曬昧府生徒会』によるキャラクラシーの実験、生徒総聨による直接民主主義、学府自治の希求と曬昧府独立運動
智の超国家機関学際連盟
琉球民国の成立、東洋共産圏の民主化と華国の成立、朝鮮半島の統合
曬昧府設立十周年記念学園祭
牧岡の家習、22歳までに相手が見つかればウィーンパレスでの結婚式を贈呈
インターネット神道

 ※主題

文化の並存と衝突は致命的な分化と反目を招くか。
牧岡神与は結婚相手を見つけることができるのか
 

第一章 『空間は翻訳される』

一話 曬昧府

翻訳空間の定義。

曬昧府は十年で随分大きくなった。
曬昧府の前身は生徒総聨:国際共学ネットワークサービスという牧岡財閥が運営する国際交流SNSに毛が生えた程度の民間サービスだった。教育補助ツールの一種として系列の国際企業Civilizacio.netが開発。
作中時間の十五年前にWeb4.0サービスとして仮想学園の提供を開始。商業的に失敗しかけるも教育の新たな(そして有効な)モデルとして支援を取り付け、曬昧府として再スタートする。
 

浮浪霊

メモ、練習文 秦式神判、禱の級友観察記
2010/06/04(Fri)

 
「黎都(リツ)、お前の思考と行動の様式がおかしな物になるのは、キリストを対等な論敵と看做すことが許されて居ないからだ。『右の頬打つものあらば左の頬を差し出せ、汝の敵を愛せよ』。これらの教句は説得するものに非ず。命令、そう、あなたとの議論を求めるものではなく服従を欲するものだ。善人たることを命令され強要への屈服を教育された哀れなお前の善行は服従の発露即ち単純な偽善である可能性に常に呪われている。いまやあなた自身自らの善行が義務と遵則から来るものなのか良心に根ざすものなのか判るまい、お前は自らの感情にさえ不信と疑念が掃えない」

「あなたの愛と犠牲はゆがんでいる。おお子羊よ、お前の愛と犠牲はゆがんでしまった!」

「キリストが命令者としてあなたに接したことが、あなたの尊敬を勝ち取る努力を否定したことが、あなたを主体として人格として敬う事をせず侮辱したことが、黎都、お前をゆがめたのだ」

「お前が愛を行うのはわたしがお前の愛に値するからではない。お前にとって愛が貴いからでさえない。キリストの命令が、キリストへの服従が尊いからに過ぎないではないか。おお子羊よ」

「あなたは 醜い」
 

※※※


キリスト教の大ファンな無神論者の書いたキリスト教入門書


※※※


十矢人の女の子が殴り合いのけんかをしないことについて
 

☆★☆


(キャラを使いまわしてるけどストーリーは無関係)

四月一日 月

 どうなることかと思ったけど、無事に高校生に成れた。この感激(嘘)を記念して、今日から日記を再開しようと思う。
 さあ、今日から新しい学校、新しいクラスメイト。 また、振り出しだ。一人の友達も居ない。
 友達百人できるかな? なんてね…… 百人は無理でも、せめてクラスの皆位とは仲良くしないとね。
 中一のときみたいに、クラスで一人ぼっちなんて二度とごめんだ。
 おや、登校の時間だ。続きは帰って来てから。

 つかみはオッケー! 手応え有り!
 後ろの席の成見蛍(なるみけい)さんと、左隣の江藤幌(えとうあきら)君と話が出来た。好い感じだ。
 
四月二日 火

 蛍さん可愛いなあ。
 小物とか小洒落てるよね。洒落てることって大事だと思うんだ。私服姿はどんなんなんだろ、ファッションのことは、私にはよく分からないけど。
 好(よしみ)からメールが来てた。玲紀とは上手くやっているんだろうか。最初のころはうるさいほど玲紀の話ばかりしていたのに、最近は親の悪口ばっかりだ。全寮制の高校に入れて有頂天になってるみたい。
 今日は蛍さんと、あと氷見要(ひみかなめ)って子と一緒に御飯を食べた。学食って皆あんな不味いのかな。

四月三日 水
 
 今日は西紀覓征(にしきみゆく、と読む)さんと話せた。
 彼女は休み時間余り教室に居ない。クラスに友達がいないっぽい。
 お昼を食べに蛍さんと学食に行ったら、他のクラスらしい人たちと駄弁ってた。
 男の子が一人、女の子が一人。女の子の方が美人の白人なので凄い目立ってた。男の子も豪く可愛い子で、華の有る集まりだなあって思わず注目してしまった。何の話をしてるんだろうと思って耳をそばだててみたら、日本語じゃなくて二度吃驚した。
「凄いね、あの子。なんて子だっけ」
「あんまり係らないほうが好いよ」
 驚いて蛍さんのほうを見ると、無表情にA定食をつついていた。
 なにやら因縁が有るらしい。

 放課後下駄箱のところで偶然覓征さんと出くわしたので、ちょっと話しかけてみた。
「学食で見たんだけど、凄いね。外国人の友達が居るんだ?」
 覓征さんはにっこり笑って、「いないよ」、と一言だけ答えた。眼がぜんぜん笑ってなかったのが私には興味深かった。
「え、んと、誰と話してたのかな?」
「三組のノエー・ヒルと一組のリン・ディアラ」
「へえ、じゃあ二人とも… えっと、あれって何語?」
「私のは韓国語。また明日ね(私の名札を一瞥して)、笹谷禱さん」
 再びニッコリと笑うと、覓征さんは踵を返しスタスタと去っていった。
 得体の知れない人だと私は感心した。

 インターネットで確認したら、例の二人は励丘(ノエーヒル)さんというオーストラリア人と林惹蝶(リン・ディアラ)君という華人らしく、西紀さんとは中等部時代からの友人同士ということで、ネットは彼女らが林を取り合う三角関係にあるというゴシップで持ちきりだった。
 

浮浪霊

ポエム/ノベル・コミュニケーション・サービス 
2010/06/05(Sat)


pixivに対応するような、詩や小説に特化したソーシャル・ネットワーキング・サービスが無いのは惜しいことよ。

無いものは造ってしまうのが一番だ。同志募集。

http://www.pixiv.net/

浮浪霊

メモ 自分年表 秦式格調:飢えと喜捨と良心と偽善、姉様の哲学
2010/06/08(Tue)

 
何かやりぬくということが出来ない私は、結局このまま何一つ成し遂げられないまま終って行くのだろうか? 
本当は起業したり、政党作ったり、他人と好き合ったり、映画撮ったり、小説を書き上げたり、宗教興したり、子作りしたりしたいんだ。
私は自分は天才だと思いがちだけど。実際の私は大口ばかり叩いて駄目な子だなあ。

自分年表でも書いてみようかな?

 うんじゃ、そうさね。とりあえず風呂に入って勉強する。
 上がったら、世界が滅ぶようにお祈りしてから試験勉強。
 試験まであと一週間あるから、内三日社会学学説、二日社会進化論を勉強する。余りの一日は卒論の資料集め。
 小説は毎日書く。試験の日まで短編のひとつも書き上げる。
 月末までに網上京の企画書仕上げて送信。中編小説を一つ上げる。
 七月一杯卒論書いてあと英語の勉強。
 年末までに長編小説書いてどっか応募。企画書を各社に持ち込んで職探し。


☆★☆


小説はどうしようかね。中二っぽい異能物でも書くか?
それとも大人の死滅した世界で不良を殺戮する風紀委員会実動部の話とか?
寂れたホームページを愛好するクラブの話はどうよ。
霧が侵略してきて皆死んじゃう話、
無限に続く建築物の住人が『窓』のそとを見たい一心で『窓硝子清掃人』と呼ばれる能力者を探して右往左往する話とか、
月経が来ないなーと思ってたらまだ生まれもしないうちに生まれてくる子供の全てを親が鬼に捧げてた事実が判明して解呪に躍起になる女の子の話、
人外で人食いの化け物と付き合うための手引きなんてもあるぞ。
校内でキリスト教原理主義者が陰謀を働かせることを阻止するために生徒総聨が運用するアンチキリストのエージェントの話や
頭のたわけたBLだって書いてみたいし、
インターネットが無限に拡散していくことでページあたりのネチズン密度が過剰低下する話や、
重力の代わりに斥力が支配する地球の下垂都市で飛び降り自殺の流行る話、
祖母から獏憑きを継承して毎晩夢の中で食い殺されるのと引き換えに生理中のみ具現化した人食い獏を使役できる少女の話、
空に浮かぶ月が増えていくと思ったら実は伝染性の集団幻覚な話も捨てがたい。
今米ルナエンバシー社が無責任にうりまくってる地球外不動産が実質的土地運営を実現できないおかげで法的に何の意味も持たないことを救済することを目的にした国籍不明の民営宇宙開発会社がクライアントの『私有物件』を侵害するものを(国家機関含めて)かたはしから攻撃しまくって大いに顰蹙を買うなんて話もある。

原稿用紙三十枚分くらいを想定することにしよう、とりあえず。



☆★☆


「ばかばかしい。私が仮に文革時代の餓えた困窮児童だったとするぞ。そして日本人でブルジョアなお前にパンを恵んでもらったとする。そのとき、お前がそれをナルシスティックな偽善からしたか、聖人然とした自己犠牲からしたかなんて、私の腹が膨らんで飢え死にしないで済んだという事実や私が感じたろう安堵や感謝には『まるで』関りがない。逆に恩恵を踏みとどまったとして、お前が喜捨を断念した事に崇高な良心の裏づけが有ったのかそれとも確信的な悪意の帰結だったかなんざ餓えて死んでいく私にはやはり関係の無い事さ。早い話が、ナイーブな連中が善意を重視するのは分かるが、善意の確立を目指すばかりでは他者利益を目指したことにはならないし、従って善だろうと偽善だろうと他者利益に自身の善意の確立を優先することは結局エゴイズムだってことさ。相手に恩恵を与えることは偽善を脱却し善へ到達することの前提なんだよ」
 

浮浪霊

メモ 詩徒詠唱録 (執筆及び推敲中)
2010/06/09(Wed)

現代、ハンガリー共和国 首都ブダペスト カロイ環道
メディタカフェ

「宇宙が国力の有る大国の物であるという発想は致命的な慢心です」
「でも20世紀後半において宇宙開発は大国に限定されていたじゃん。スウェーデンや韓国みたいな小国じゃ、一人当たりの総合力が高くたって宇宙に打って出るには到底足りないと思うけれど」
 牧岡黎都は鼻で嗤った。
「姉様(ズィーヤン)、貴方は古い発想を引きずってらっしゃる。それは旧世紀の宇宙計画が利益度外視のお祭りで、国庫くらいしかそんな馬鹿げた酔狂に金を出す者が居なかったからですよ。そして最大の列強でさえ宇宙を征服するには貧弱すぎる。だから停滞した。だから宇宙開発は停止したのですよ、姉様」
「……宇宙開発が利益のでるものになれば、民営企業に駆逐されるって言いたいのか?」
「その通りです、やはり姉様は頭がよろしいw そして民営企業が主導する宇宙時代が到来したとき、そこに小国のネックは霧消します。アメリカ他先行諸国の有するわずかばかりのリードは減滅するでしょう」
「ムカつく褒め方だなあ」
「サムスンが来ます、LGが来ますよ、姉様! くっくっく」

※※※



「中華神道の神様も「おいこら」道教の神々も宇宙進出の時代ですから!」

中華民国

「台湾同胞!!?」
 開拓するんです。


 その宇宙船は不恰好だったが、それの意味するものは巨大だった。
 その細長い船体には、翼を広げ に る猛々しい鷲の国章(エンブレム)と、国号が雄雄しく辣印表示されている。即ち、

  了
  合   
  諸 
  州 
  之
  務
  導
  國
     / United States of America

 務導(アメリカ)合州国航空宇宙局の宇宙開発計画、『据星体議文(Constellation Program)』の目指す有人火星飛行の露払い。火星軌道上の宇宙ステーションを建設するため、火星表面や近隣の小惑星群の資源を発掘していた。
 そしてそれは市民が領有を主張する火星・小惑星不動産への度重なる侵入と無断採掘を意味していた。
 務導ルナエンバシー社が二十世紀初頭無責任に売って回った星外不動産が結局国際的認知を受けることなく終った理由の一つに、不動産私有の前提条件に件の不動産の活用や物理的代理的な所在などが設定されていた。

 我々の経典詩徒詠唱録の御句の基

「株主総会で決議されたんだからしょうがない」
少なくとも二十八年後のことだった。

地球外開拓代理会社 衞☆局



☆★☆


いやだなあ。
僕は怖がって、逃げ回ってばっかりだ。
私は弱い。弱すぎる。
 
ふー、怖いな怖いな。頭ががんがんする。
 

☆★☆


死病の一つも患えば、こんな私でも限りある命の大切さに気づける。そんな風に思っていた時期が、私にも有りました。

けど全然そんなこと無かったよ!


☆★☆


うちの元母が最近いよいよ凄いことになってる件について。
子供は親の所有物だから好きに殴る権利があるとか、殴ろうと思えばもっと殴れたんだから感謝しろとか。人間じゃねえ。

 

浮浪霊

メモ (推敲中)
2010/06/10(Thu)

それは、灼熱

☆★☆


『最近、祈ることを覚えた』っていうフレーズが最近頭を離れない


☆★☆


四月四日 木 

 黄色い清潔な建物が何処までも何処までも続いているの夢を見た。
 其処では窓は曇ってて、私達は建物の外を見たい一心でガラス窓掃除人て言う伝説の救世主を待ってるんだ。

 おかげでノートが取れなかったぜ。

 四日目の授業中早くも爆睡とかどんだけ神経太いんだ私。

 休み時間に缶コーヒーでも飲むかと蛍さんを誘って校舎を出たときだった。
「百円くらい貸してくれたっていいじゃんか」
「そうですねえ」
 林蝶惹君が先輩と思しき二人組みと話しているのだった。私にはそれが絡まれているように見えて顔が強張った。
 林君は薄笑いを浮かべて
「ご氏名住所電話番号と用途、それを証明する書類とあとサインをいただければ日率5%の利子でお貸ししますよ」
 すげえな。
「なに、また絡まれてんの、彼?」
「え、やっぱ絡まれてるんだ、あれ?」
「絡まれ上手だよ、彼は」
 たしかに可愛い顔して随分人を馬鹿にした口を利く子のようだ。
 だがいかんせん脂汗が浮いてるぞ。目も泳いでる。
 二人組みを見てみる。
 ……お近づきに成りたくない雰囲気が漂わせた感じの人たちだ。
「助け舟出してくる」
「え? ちょっとやめなよ余計な」
「林君」
 三人が同時にこっちを見た。ひい
「覓征さんが探してたよ」
 林君はそれを聞いてニッコリと笑った。
「ありがとう」
「いいよなあ可愛い彼女が呼んでるかあ」
「可愛い(笑)?」
 見苦しい連中だ。私は眉を顰めた。
「そのようです。今度お会いするときは書類くらい用意してから来てくださいね」
「「!!」」
 ひい

 


 よく見るとこの子も結構可愛いじゃないか
 
 
四月五日
 どこかへ向かっていると思いたいものだけど。

浮浪霊

メモ 
2010/06/14(Mon)

「繋がるよ」


☆★☆


『私』は夢
『貴方』は影
世界は砂
心は移ろい

 生きることは 灼熱だ


☆★☆


文化とは囚われるのでは無い。御すものだ。



歌が聴こえる。
人生の素晴しさを謳った歌だ。
世界が美しいことを、愛が愛おしいことを、神がことを歌った歌だ。




嘗てお前が恐れと疚しさの虜だったのを憶えているか
確かなものなど何も無く、人はお前を愛さず、お前も人を愛さず、お前は与えられない救いをいつまでも甲斐なく求め苦しみ、また只傷つけあい傷つきあう世衆が哀れで堪らなかった、呻喘嗚咽するこの世界を救済したかった

神はお前ら哀れな人間どものため降って沸いた救いだ

『お前』を愛せない人の代わりに。そしてお前が愛せない『人』をもまた代わりに。神に愛してもらおうというわけだ。


だがそれは不毛だ!


『私』は夢
『世界』は砂
生きることは灼熱だ
そんなことは分かりきったことだ! そして此処が此処こそが救いだされるべき人間の孤獄だ!
 だがお前の救いを必要としていたこの世界にお前が与えたのは神の救いだった! お前は世界を愛せなかったのだ!

「でも」
(私は必死だった。こぶしを握り叫んだ)
「でも! 信仰で人は救われる! アメリカを見ろ! インドネシアを見ろ! 皆幸せじゃないか! 神を愛し神に仕え、私よりも誰よりも幸せじゃないか!」

瞞しだ そんなもの!

「まやかしだと! まやかしと言ったな、無責任な! 私たちのその下らない拘りで誰が一体救えたっていうんだ!」

(私はなおも叫ぶ。叫んでしまう)

「お前はまやかしでない愛があるとでも言いたいのか!」

(私は口を押さえた。『』は満足したように沈黙すると失せ消えた)


☆★☆


彼女は毎日のように子供を殴らなければ気がすまない異常者だったが、それと同じくらい毎日愛を語った。
愛してるといわれては殴られるのを繰り返されて育ったあの子は、
暴力と両立する愛を信じるようになっただろうか?

皆も、あんまり考えなしに子供をたこ殴りにしてると私みたいなのが育っちゃうから気をつけてね!


☆★☆


歌が聴こえる。
人生の素晴しさを謳った歌だ。
世界が美しいことを、愛が愛おしいことを、神がことを歌った歌だ。

悪魔だ。
悪魔が賛美歌を、
革服(レザースーツ)に身を固めた悪魔が、神を讃えて謳っている。
血を涙し諸手をひろげ歌っている。
恍惚と目を瞑じて。悪意ある笑みを浮かべて。悪魔が
悪魔が目を見開き



私は目を見開いた。
歌が遠ざかる。


 一切は闇だった。



☆★☆


「此れでも高校時代はもてたんだぞ」
「姉さん高校時代は女子高だったよね」



浮浪霊

めも 悪母について
2010/06/16(Wed)

ヤハウェの良心、罪悪感、生きる意味、夢、愛憎

☆★☆


 三年ほど前のことだ。

「お前の生きている音とか聞きたくないんだ♪」
 母はそうほざいてベニヤ板と絶音板(!)を買ってくると、男友達と私(!!)を動員して私の部屋と母の私物化している居間を繋ぐ扉を封鎖させた。

 私はうれしかった。私の生きている音は、いつも母を凶暴にさせたから。


☆★☆


私がここでこんなんなのは、やっぱオフで明るい人やってる反動なのかな。
生身の人間にこんな話できないもんなあ


☆★☆


結局さ。

うちの元母親は、私を殴ったことも私を傷つけたことも私に嫌われたこともまるでなんとも思っちゃいないんだよ。

わたしはこのこととこの先一体どうやって向き合っていけばいいんだろう。


☆★☆


母があそこまで私を虐待した背景には、おそらく彼女が幼少期順応した狂った環境を脱皮できなかったことが背景にある。

親子間の信頼のような曖昧な基盤に基く関係は母の常識では対処不能であり、彼女のそうした状況に非常な不安を覚える人格となった。

だからこそ、『あやふやな不安』の解消のため、家庭内暴力や近親憎悪といった彼女が慣れ親しんだ関係性が家庭内で支配的になるまで母は錯乱と虐待を続け、彼女の罵詈と暴力と強迫で建設的な繋がりが一掃され根絶されて行くにつれて、彼女の精神は急速に安定していった。私の負った傷の深さに反比例するかのように。

私たちの親子関係が相互的な好意という彼女にとって未知の物によって裏付けられていたころ、彼女は常時不安に悩まされ憤怒の発作を起していた。一方私が彼女を憎悪し始め害意の応酬が支配的なものとなるや暴力行為は無くなり、今や彼女の精神的自己像は一方的な敵意に晒される被害者だ。

彼女は、私に一方的に憎まれるという彼女にとって正常な状況を再現したいがゆえに、憎くも無いのに私を殴り辱めたのだ。


☆★☆



思い出した
私は、幸せになりたかったんだっけ



☆★☆



蠢く闇は夜行性 夜闇に紛れる夜行性

もぞまぞ  のとぬと  ずるぶる  じょろん

夜闇に雑じれて人を狩る

ざわぞわ  にょろぎり  がりごり  ぶちん
ぐちぶち  めきみぇき  がりがつ  ぐりん


☆★☆


網民密度は無限に減少してゆく
インターネットは限りなく無人に近づいてゆく


☆★☆


始まりは、奇妙な焦げ臭い臭いと茶色い雲、そして鳥の屍骸。

空が燃えている。


☆★☆


理想の恋と理想の死は似ている

実行しろといわれても困るし、

概念 美学的作品に過ぎず 実在しない

浮浪霊

メモ 硝子の珠、日矢神判
2010/06/20(Sun)

貴方の瞳って、虚ろでまるでガラス玉みたい。そういって笑って、彼女は私の頭をワシャワシャとなでた。私はその詩的な表現に感心した。その夜私達は寄り添って眠り、翌朝彼女は荷物をまとめ去っていった。 私は一人残された。

狭い住居だったが、一人になった私には厭に広く感じられた。散らかし魔の彼女がいないと部屋も片付くから余計にそうだ。恋が終わっても、人生は続くことを痛感する。 八時間が過ぎ、午後四時になる。何をするでもなく、全くの無為の内に。 

それはあまり例の無いことだった。普段は落ち着き無く、常に何かしら立ち回っているように思う。最後にこんなふうに無意味な時間を過したのは一体いつだったろう? 陽気にうつらうつらしながら考える。私はちゃんとショックを受けれているのだろうか?

それとも、嘗て言われたように、フリをしているだけなのだろうか?眠ってしまうのは厭だった。私は起き上がり窓際を離れ、台所でお茶を沸かせる。見ると、急須のお茶ガラと三角コーナーの生ごみが処分されずに残っている。「駄目だなあ、発つ鳥跡を濁さずって言うのに」私はその両方を処分する。

感慨は無く、そしてそれはいつもの事だった。人生が味気ないのではない。私の味覚がイカレてるだけなのだ。彼女も味はしなかった。ただ傍にいると、少し、よく眠れる気がする。それは確かに替え難いことだったが、居ない所で不眠が酷くなるだけだった。私はお茶を手に、居間の机に突っ伏した。

再び眠気に襲われる。眠るのは厭だ、怖い夢を見るんだ。眠るのは……


私は大学も半ばになってやっと、真似事では本物の感情の代りにならないということを理解した。友情の醸成にはともに過す時間が、運営には此方からも働きかけることが必要で、他人なら悦びを覚えるその両方が私には異質な作業だった。

定期的に接触して優しい言葉を繰り返さないと愛しては貰えない事に私は気づかされ、そして私が他人というものにたいし如何に無関心かを知った。強制的な共同生活ならば誰にでも好かれる私だっが、わざわざ拒絶される危険を冒してまで興味も無いのに他人と関わるのは酷いストレスだった。

他人の苦痛が、歓喜が、どうでも良かった。苦しみを分かち合いたいとも喜びを与えたいとも思わなかった。私は求めるだけだった。相手の与えてくれる善意や温もりが欲しいだけだった。旧知の友人達や家族とは疎遠になり、私に一二年以上付き合いの長い人間はいなくなった。

私は彼女等の温もりだけが恋しかった。彼女等が友達甲斐の無い私のせいで感じている筈の孤独や苦痛は、どうでもいい事だった。

私は可笑しくもないのに笑うこと、愛も無く人を可愛がることを識っていたので、大学時代底の浅い友達が沢山できた。彼女らは皆私が見返りのみを求める確信的無関心の権化、怪物的欺瞞であることに気付かないか、気付いて離れていくかした。

ただ優しさに餓え渇き、人を欺き友を誑かし、無責任に惑わした挙句私は彼女らを離れることが多かった。居心地のよい距離感というものを見失うわけにはいかなかった。近づきすぎるのは恐ろしいことだった。私は責任感という概念を知らなかったので、友情の代価を負うことも考えられなかったのだ。

私は急速に夢に堕ち込んで行く。視界が雲濁し、自我が崩律し、再構築され晴渡る。夢が始まり、私の世界は再び鮮やかに存在を始める。私の経てきたあらゆる時代と空間が混在するのがわかった。そこは学校だった。あらゆる時代の友人たちが一同に帰す教室で、私は前に出てその視線を一身に浴びている。

哂い声が聞こえる。私は何が起こるのかを知っている。人間の悪意を喰って地獄がぞわりと立ち上り、数百人が整然と着席する教室を一種の冒涜的な絨毯の様に覆って行く。私は口を半開きにしてその様を観察する。それは蟲だった。人面の、歪な蟲の奔流が、人食いの人罰が迫ってくる。哂い声が聞こえる。

或る者は縮こまり狂ったように祈りながら、或る者は怒り狂い罵声を張り上げながら、又或る者は泣き笑いながら、狂奏するように地獄に挽き潰されて行く。私はそれを呆然と見ている。哂い声が聞こえる。

唐突に、私はぎくりとする。私の恋人はどこにいるのだろう。地獄に喰われてしまうのではないか。地獄に喰われてしまったのではないか。私が呆としてる間に、精肉され悪鬼の養分になってしまってはいないか。私は何千何万という人間が、のたうつ地獄から逃れようと雪崩を打って逃げ惑ってくるのを見る。

溶合う万色の人声が怪神の咆哮のようになり、練り上げられた悲鳴で世界は崩れ空へ向けて落下を始めた。私は恋人の姿を見つけることが出来ない。名前を呼ぼうとした時、彼女の名を思い出すことが出来ない事に気付く。哂い声が聞こえる。

何時の間にか天地は地獄に喰らい尽くされて、緑色に発光する蟲どもの暗室に私はいた。薄暗いそこで、大きさが人の頭蓋ほども有る美しい蟲が私を見ている。それは人面を私に向け口を開いた。「何か探しているの?」「『何か』じゃない、『誰か』だ」私は答えを求める「私の恋人はどこにいる」

「私を愛しているあの女はどうなった!」暗室にくすくす笑いが起こり、私はそれを不快に思う。「居ないよ」「なんだと?」まったくの無音だった暗室に、哂い声が充満した「あなたに恋人なんて居ないよ」げらげらという下品な笑いに私は打ちのめされた「あなたを好きだった人なんて」

「居たことも無いよ」

サーッと血の気が引いていき、気管が閉塞するのがわかった。何時の間にか、恋人の顔さえ思い出せなくなっている。暗室が解けて散り、地獄の構造が展覧する。無数の蟲によって築かれたその惑星規模の空間に、億兆という人間の死体が並べられていた。哂い声が聞こえる。

「お前を愛してくれる人間なんて、何処にいるというの?」


夢我が張り裂け、私は現に舞い戻った。ひょっとしたら悲鳴も上げたかも知れない。心臓が割れんばかりに打っていた。時計を見ると、三十分も寝ていない。悪い冗談だ。私は口元を拭う。恋人と別れるなり久々の発作に見舞われるとは、私も分りやすいやつだ。可愛いじゃないか。

急に夜が、一人で迎える夜が怖くなった。夜はもうすぐそこまで迫っている。飛び起きて自宅を右往左往し、私は精神の均衡を徐々に失っていった。人は夜が、闇が、夢が、孤独が重なるのを恐れる。何故夜が怖いのか?夜を恐怖し逃げ惑った者は夜闇の孕む数々の危険を回避でき、多くの子孫を残せたからだ。

なぜ人は孤独な夢を恐れ、眠りに就く時身を寄せ合い、温もりを求めるのか? それは例え外襲の時眠りに堕ち夢に捕われていても、愛する者と共に在れば生き残れる可能性があり、その生存の助けとなれるからだ。では私が恋人の傍らでさえ夢を恐れるのは何故か?哂い声が聞こえる。

「いないよ」「だまれ」私は耳を塞ぐ「居たことも無いよ」「うるさいっ!」「身を寄せたところで、お前なんかを助けてくれる人なんて」哂い声が聞こえる「誰も」視界が狭塞まり、私の世界は破綻した。


# 2010年6月22日 21:39:28 webから

* 削除

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八歳くらいだったろうか。私を溺愛していたおばあちゃんは居なくなり、預け先の無い私を父が家に置き去りにして出張したあの夜(澄はしっかり者だから好い子でお留守番できるよな?)。私は誤ってクーラーを切らないで電子レンジを付けてしまい、家のブレーカーを落としてしまったことがあった。

当時私は配線用遮断機の概念を持っておらず、徐々に暗くなる夏の宵を発狂するほどの恐怖と戦いながら、部屋の隅で縮こまり体を揺すり震えて過ごした。『しっかり者』でなければならなかった私には、誰かの助けを求めることなど考えられない。やがて帳が落ち暗黒が充ち、悪夢が現を汚染した。 2010年6月22日 21:20:49 webから

壁を這い引き出しに潜り込む不定形な物、発光し群生する醜怪な小人、窓や鍵穴や隙間から覗き込む歪な人面、異様な長さを持つ人の腕に似たもの、テレビやパソコンや鏡に移り込む有り得べからざる物、それらの物の息遣いや視線が、私を一晩かけて壊していったのを覚えている。

私は母がいなくなった日のこと、祖母のいなくなった日のこと、あの暗かった夜の明ける瞬間のことを憶えていない。夜を徹しているとほんの時々、ひょっとして祖母はまだ生きており、あの夜はまだ明けておらず、母など私にはそもいなかったかのような想像に捕われることも有った。

永遠の夜に祖母と共に孕まれ、母は存在したことは無くそして父も助けに来る必要はない。私は温もりに包まれ護られながらまどろみ、死者のみが私にやさしくしてくれるのを知る。それは病的な錯覚に過ぎないかもしれないけど。私は友情や恋情を与えてくれる人間を無差別に受け入れる一方、

私は友情や恋情を与えてくれる人間を無差別に受け入れ彼ら彼女らにしがみ付く一方、愛を与える能力の無い自分がいつでも棄てられ得る事に奇妙な確信を持っていた。それは不信と恐怖の澱だ。私が彼ら彼女らに対して感じるのは、一方的な愛の給与についての感謝と欺瞞の成功への満足感に過ぎなかった。

夜毎傍らで束の間眠りを貪れたところで、朝起きたときにはもう居ないに決まってる、居る筈が無いという観念を隠し笑う私は、孤独を確信する余り去るものにしがみ付く事さえ出来ない。私の如き人外と共に居てくれる酔狂者に感謝を。 去るものにはその無駄だった犠牲に謝意を。

私には、声が聞こえる。お前は人間を擬態し獲物に近づき、愛情を演じて誘惑し、心を肢体を開かせ犯す獣、愛される価値など無くそれを自覚しながらなお愛を騙し取る獣、愛を貪る獣だ。蟲どもは哂う。騙し取った愛は瞞しだ、お前に向けられた物ではないのだから。獣であるお前を愛する者など居るものか、

お前は愛されうる者を騙っているだけだ、お前に向けられたように見える温もりは結局お前の演じる愛すべき何者かが持って行ってしまうのだ。あの女はお前を愛していないしお前を愛していたことも無い、お前が騙っていた別人を愛していたのだ。彼女はお前に失望したのではない。

なぜならお前と共に居たことなどないからだ。人違いだったことに気付いたに過ぎないのだ。お前と共に居るように見えて、実際には別の誰かと過ごしていたのだ。実際にはお前は最初から最後まで一人だった、お前は、始終一人で他人が愛し合う様を視聴していたにすぎないのだよ。

唐突に能天気な旋律が私を現実へと連れ戻した。彼女の設定した着信音だ。そういえば、もう数週間はこの着信音なのに、私はこの局の作者の名も知らない。もし私が彼女を本当に愛していたら、或いは彼女の好みにももっと興味を示していたかもしれない。私は電話を取る。

「もしもし」ああ、誰か私を好いてくれる人でありますように。「紺野澄、です」「……澄? え、澄だよね?」 「回線が悪いのかな、澄の声じゃないみたい」

「随分散らかってるね、澄の部屋じゃないみたい」私の部屋を見渡して、京野美智は言った。「今朝振られたばかりでね」私は疲れを前面に押し出して言った。「まだ片付ける時間が無かったんだ」「道理で声が掠れてると思った」「飲み明かそうぜ」「澄お酒飲むようになったんだ」そんな事実は無かった。

私の作戦は単純だった。傷心の私に同情する友人の善意に付込み、潰れるまで飲ませて一晩だけでも『温もり』を確保して安眠する。私は、酔うだけでは眠れないのだ。「どんな人だったの」「暖かい(体温的な意味で)、人間の出来た人だったよ。淡々と別れた」「どうして別れたの」

「…… 私の目が虚ろで」「え?」「なんでもない。閏は今誰か付き合ってる人はいないの?」「丁度いないなあ。私も別れたばっかでさあ、ほんの三週間前。何、サークルの活きのいい小僧でも紹介しろっての?」「いいねえ。てかさあ、もう閏が付き合ってよ」「うおお、いつからそんな危ない人にっ!?」

友人とくっちゃべっていると考える。私はこうした時間が退屈だと。私にとって閏の恋愛事情など、限りなく如何でもいい事柄だった。遠く哂い声が響く。彼女を欺いて近付き、情の深い人間を擬態する獣。身も心も開かせ強姦する獣。「どうしたの?澄、顔色悪い」「何でもない。お酒、ちょっと久しぶりで」

蟲どもの哂い声が、閏の笑いに重なる。怖気が私を捉える。私も笑う。神様。

私は彼女がすっかり酒に呑まれた頃合を見計らい、布団を敷いて彼女を寝かし、その傍らに寝そべり、その胴に手を回した。(…)翌日私が目を覚すと、見知らぬ女が私を見下ろしているのと、あと澄にしがみ付かれているのにぎょっとした。澄は寝惚けるか酩酊し昨日別れたと言う恋人と間違えでもしたか。

謎の女鼻白んだ表情で私たちを見下ろしている。二秒ほど見詰め合ったあと、彼女の方から目を逸らした。無言のまま、私たちのことなど無視して箪笥の引き出しの中を調べたりしている。「…あんた、誰」「はあ?」いや、はあ?って。私のほうなど見もせず、その無造作に束ねられた長い髪を揺らしている。

「… 押入り?」「ハアっ!?」いや、ハアっ!?って!「ちょ、ねえ澄」「……」「起きてよ変な人が居るよ」「……」二日酔いでコンディションの酷い澄は私に揺起こされ、半分だけ拉げた蛙みたいな緩慢な動作で頭を上げ闖入者を見、驚いて口を開いた。「久、ちゃん?」『久ちゃん』は不快そうに笑った。

「忘れ物を取りに来ただけだよ、あと合鍵を置きに」久ちゃんは地面に転がる酒瓶を足先で小突いいて続けた「何飲んでんだ、弱い癖に。好きでもない癖に」私は事情が分り始めて青褪めた。「……きそう」「?」澄は顔を伏せて何事か呟いた。私たちは聞き取れず問うようにして見やる「吐きそう」「「げ」」

時計を見ると、まだ八時だった。私は息を吐く。澄は吐くだけ吐くと再び布団に倒れ込み死んだ。私に謝りながら。私は急に疲れて、居間のテーブルに腰かけ煙草に火を点ける。澄の新しい彼女(?)が私のほうを見ているのに気付いた。如何したものか迷うが、結局聞くことにした。「吸ってもよかった?」

「あ、ははい」「吸う…います?」「え?あ、いや。じゃあ、ええと。はい、頂きます」一本だけ受け取った。二人して沈黙し、気まずく煙をくゆらせる。「あの」彼女が口を開いた。「私、京野閏って言うんですけど、その、ええと…」「射水久那」「その、射水さんが誤解されてる気がして」「はあ」

なんだなんだ。彼女は私を意識しすぎてしどろもどろだった。目も合わせない。「その、私、澄の友達ですけど、その、それ以上じゃないです。彼女多分、酔払って分んなくなって、射水さんの積りで抱きついたとか、そういう事だと思うんです。昨日、振られたって凄い落込んでたし」私は黙って聞いていた。

「もう起きてきた」(…)私が射水さんに促されて振返ると、相変わらず半死半生の澄が寝室につながる戸の所に立っていた。「よく眠れた?」錆びた声色で射水さんが問う。「蟲が」私は驚いた。澄が顔を覆って泣いている。「哂って…」澄がぐずぐずと泣いている「久ちゃん、戻って来て」

だが射水さんは頭を振った。その酷く残酷な無表情が、私の胸を打つ。「久ちゃん」私は初めて聞く澄の縋る様な声に動揺した。「好きだよ、澄」射水さんは無感情に言い放ち、次の瞬間希望を打ち砕く。「澄の事が好きだからこそ、澄にとって私が換えの利く存在であることに耐えられない」

「久ちゃん、どうか…」なおも懇願する澄に、射水さんは疲れた様子で、だが明確に話は終りだと言った。「だめだよ澄、諦めは良くなくちゃ駄目だ。御仕舞いの時が来たんだよ、澄」その時だった。澄は唐突に泣きやみ、冷めた表情を浮かべだろうね、と誰へとも無く呟いた。三十秒程の沈黙の後、

今度は射水さんが涙を流している事に私は気付いた。「ご免ね」彼女は掠れ声で言った。「一緒に居てあげられない、もう耐えられないんだ。私は」彼女は立ち上がり、荷物を取る。「私はあんたの愛が欲しかった」(…)

極単純に友人として、私は澄の事がとても好きだった。いや、私だけでなく、大学時代彼女は先同後輩に酷く人気だったように思う。彼女があらゆる人間に頼られ、彼等彼女等にかまけて私に構ってくれない事に、私は滑稽にも嫉妬すら覚えていたのではなかったか。

☆★☆

二人で愛し合いましょう お互いさえ居れば、もう誰も要らない、そう思い合える関係を持ちましょう 唯一永遠の絆を結び永久に 死が二人を別つまで。 (そう呼びかける声に応えて覓征は嘲笑んだ) それは違うよ 愚かなひと
愛し愛される事は強く生きていく為の支え それが究極的には手段に過ぎない事を否定しあたかも生に代わる根源として目指す事は瞞しだ。自分を騙せ人を騙せても、いずれ避け難く破綻するだろう、伝子の復讐に遭うだろう。その終りが一年後なのか百年後なのか はたまた一万年後なのかは分らないけれども
☆★☆
キリスト教徒の従妹が、キリスト教を好きな無神論者なんてものはありえないと言い出した。これまでこんなことはなかったんだけれど。これはつまり、彼女が無神論者のキリスト教徒に対する敵意という構図を必要としだしたことを意味する。世界観が動揺して、維持に敵が必要になったのかもしれない。
でもそれは非常に有害なことだ。そもそも人間はキリスト教徒だから誰かを愛するのではなく、愛するに値するから愛するに過ぎない。キリスト教がシンパシーを感じさせる宗教なら無神論者でも好ましく思うし、逆もまた同様だ。
彼女が無神論者はキリスト教を嫌うことを前提に生きていくなら、知り合っていく無神論者の面々にもそれを踏まえて接していくことになる。それは無神論者たちの多くにとって不愉快なことだろう。また全く好ましくなく、彼女がそれをキリスト教に結びつける以上キリスト教に対する心象も悪くなるだろう。
それは相手にとって好ましい存在になろうという努力の放棄だ。そして無神論者達を異質なものとし友好を拒絶する思考だ。自分に愛される価値は無いかもしれないという不安を、キリスト教徒だから愛されないのだとすり替える欺瞞だ。また、人としてではなくキリスト者として愛してもらおうという弱さだ。



浮浪霊

メモ クロノトリガー
2010/06/21(Mon)


「お前が愛していたあの娘ももう居らぬ……」
「それをこの上」
「たった一人で」
「一体何を戦うというのだ!!」

浮浪霊

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