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浮浪霊の日記

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詩人名 : 浮浪霊
詩人ID : strayghost
年 齢 : 23歳

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メモ 似非遺伝学的詩作 他
2010/05/02(Sun)


★☆★

 誰かあたしに触れてくれ。
 愛してると、言ってくれ。

★☆★

「姉様(ズィーヤン)、私のために死んでくれますか」
「考えないことも無いね」

「では、私と一緒に死んでくれますか」
「無理かなあ。人間、死ぬときは一人だよ」

★☆★

自殺という、生物的に限り無く反生産的な行為を進化論的解釈に則って考えた時、何故その行為が生存競争の内に淘汰されてしまわなかったのかという疑問が生ずる。

自殺志向を持つ個体が時と共に死滅しなかったのはどうしてなのだろう。

それは恐らく、自殺がなんらかの形で遺伝子の継承に貢献しているからではないだろうか。
生殖能力を持たない働き蟻の存在や細胞レベルでの自死から明らかになるように、遺伝子の目的とは種の次元での存続であり、決して個体レベルでの遺伝子継承可能性の最大化では無い。
特定の個体の生存が種に対して著しい損害を齎し、種としての遺伝子の全体的な存続が好ましくない影響を被る時、遺伝子はその個体を削る。個体に搭載された遺伝子を犠牲にして。
自殺願望とは、各個体が生存に値するかを判断するために搭載された自己診断機能なのかもしれない。
存続非貢献者を自死させることで社会的な負担を減らし、他の生存可能性が高まるのだ。


個は全のために。
さて、以上から得られる知見とは何か


解るかな?



つまりね、僕らが普段死にたい死にたいって思うのは、実はご先祖様が『お前みたいな役立たずがいつまでも生きてると皆が迷惑するんだから早く死ねよ』ってアドバイスしてくれてるんだよ。。
 


★☆★

ああ、なんだか今日は情緒不安定な感じやわ。
 

浮浪霊

めも。
2010/05/04(Tue)



★☆★

その牙は鋭い。

★☆★

牧岡ちゃんには、想像力がありません。

想像力が無いということは、死んだ方が好いと言う事だと牧岡ちゃんは思っていました。


★☆★

『ぼくのかんがえたかみさま』

かみさまはとても

★☆★

お前に好きになってもらう為、
唇で触れてもらう為、
僕に出来る事とは何だろうかと、
彼がそればかり考えてるのが分かるだろう。

お前が彼の隣に腰を下ろし、
軽く触れ僅かに寄掛るだけで、
彼は肌を赤く染め
お前のどんな要求にも応えてくれるだろう。

お前が彼を欲望し、掠奪することを躊躇わなければ
彼はお前を愛し、お前のために全て擲(なげう)つだろう事を知れ

★☆★

(中国旅行)

「つーか見た目白人で頭刈ってて男物の蒙古服着込んでて漢字新聞読みながら私と十矢(ハンガリー)語で話しながら日本風の先の尖った箸で弁当食ってるお前ってマジ国籍不明で不審なんだけど」
「アハハ♪」
「アハハ♪じゃない!中国語も話せないくせに漢字新聞読んでて意味わかんのかよ!」
「訓練されてますから!」
「大体なんで蒙古服なんだよ!!」
「えー、格好いくないすか」
「格好いいよ! でもそうゆう問題じゃないだろ!」
「はい姉様(ズィーヤン)、あーんしてください」
「甲斐甲斐しいんだよ! (あむ)…そしてコーヒーを調味料として使うな!」
「美味いのに」
「美味いよ!(モグモグ) 
 あと何なんだ姉様って!」
「姉様はですね、和製漢語で御姐という意……」
「知ってるよ! そうじゃなくて、貴方私より年上じゃん!」
「(目をそらす)」
「(ゴクン。ビシッ!)髪を生やせ! 女物を着ろ!」
「えー、アイデンティティーなのに〜
 姉様は女らしい娘が好みなんですか?」

「(キーッ!)好みもヘッタクレもあるかああぁっ!」


★☆★

性別年齢可変の魔神

★☆★
 
神が居ないというのは、分かる。

けれども、神が居れば世の中がこんなに悪い筈が無いというのは、良く分からない。

どうして神様が、貴方達みたいな糞蟲にかかずらうわけがあるの?
 

★☆★


母「お前が自分のことをどう思ってるか知らないけど、本当はお前には何の価値も無いんだよ」


★☆★




死ね、私の為に

私の 代わりに

 

浮浪霊

めも
2010/05/06(Thu)

  
思ったんだが、日本は国民国家で、日本とは国民のことだよな。

すると、市民が日本を気に入らないならそれはつまり日本が日本を気に入らないと言うことで、日本を気に入らない市民が気に入らないやつはやっぱり日本が気に入らないってことになんじゃねーの。

以上を踏まえると、「この国が気に入らないやつはこの国から出てけばいいと思うよこの売国奴!」という主張は以下のように翻訳できることになるぞ。

日本が気に入らない日本は日本から出て行けこの日本野郎!


☆★☆

 
『黒衣の女症候群』

「『何故、俺はまだ生きている?』 
 この疑問が俺の持つ最も古い記憶だ」 

「『まだ』?」

「その通り」

「すると、お前は死んで迷った魂なのかな」


☆★☆


いやだな、怖い。

私は独りだ。

Or

いやだな、怖い。

私は、独りじゃないのに。

☆★☆

「『愛してる』」

「なんだ、いきなり」

「姉様(ズィーヤン)、愛って何でしょう。姉様は僕(プゥ)を愛してくれますか」

「(絶句)
 ……あのな。いや、うん、まあいいや。好きだよ、勿論」

「僕も姉様のことが好きですよ」

「そうかー、あはははは」

「嘘です」

「オイ」

「愛が分かりません。一体僕は誰かを好きになったことなどあるのでしょうか? 父は僕を愛さず、母は愛を語りながら僕を殴り、そして僕は愛も無く人を可愛がる。」

「……黎都は難しく考えすぎなんだよ。そうゆうときは思考停止だよ」

「達観してるんですね」

「そうでもないと中国市民なんてやってらんないアル」

「器用だなあ」

「他人をだますにはまず自分からだよ、愛妹。」

「姉様」

「ん?」

「愛してます」

「でも嘘だろ?」

「嘘じゃありません。愛してる」

「とーっても光栄だね」

「愛してるんです、信じてください!
 僕は姉様を愛してる、愛してる、愛してる、愛してる」

「黎都……。
 わかった、信じるよ。でも私は……」

「本当ですね……」

「はい?」

「人をだますにはまず自分から」

「…そこになおれッ! 歯を食いしばれ!!」

☆★☆

自殺願望というのは、やはり相当に面白い。
 

浮浪霊

2010/05/10(Mon)

風邪、引きたいな。

私の友人たちは優しいから、きっと誰かは看病に来てくれるはず。
んで、ご飯とか作ってもらうの。泣いてごねれば添い寝だってして貰えるかも。

まあ、今なぜか隣室でハハオヤが生活してるから、そんなの無理だけど。
おそらく恐慌を来たしたハハオヤに口汚く罵られることで一日が暮れる事であろう。

私が病気や怪我をするのはあいつの忙しいのを知った上での確信犯的嫌がらせで、私は彼女の親として看病せざるを得ない温かな優しさ(笑)に付け込む悪意に充ち心根の腐り切った淫売親不孝野郎なんだとよ。


★☆★


楽しいときに、死にたいよね?


★☆★


嗚呼。
世界は美しいもので一杯だ


★☆★


弧獄と題して孤独を詩うシリーズでも始めようかな。


★☆★


何故、私は自殺を想うのか。
其の理由は、Wikipediaにも載っていなかった。

★☆★


ああ、触れて欲しい、口付けて欲しい。

そう頼めば、おそらく友人の何人かは望みを叶えてくれるのだろうけど。

生憎、私は彼女達をぜんぜん信用していないのだ。


★☆★


ぶっちゃけお前みたいなのはいつ死んでも好いんだよ

(振り返ると、そこにご先祖様が光臨していた)

ていうか、早く死ねよ

(ご先祖様は、余り頭が良くない。それはこんな賢くて才気の有る私に死ねとか言うことからも明らかだ)



★☆★


母「明日うちで友達と私のお誕生会するから。一晩どっか行ってくれない?」


★☆★


嫌だな、寒い。

そして眠い。苦しい どうしてだろう。

ちゃんと、愛してくれる人だっているのに。


浮浪霊

めも
2010/05/13(Thu)

興味が有るなら読めば好い。無いなら読まなきゃ好い。どちらも迷惑だ、

浮浪霊

メモ
2010/05/15(Sat)

 
空間に反転圧搾がかかり、一秒に100平方キロメートルずつ世界が滅んでゆく。
まず宮崎が無くなり、やがて大阪も呑まれて消えて、
数日で日本が、一年余りで世界が、暗黒い運命に追い抜かれ終わる。

一秒に100平方キロメートルずつ滅んで行くこの世界を、女と男は連れ立って駆ける。
反転し圧搾され死に絶えた街を、手を取り合い二人して黙々と歩く。

まだ生きている世界を目指し滅びの前線を越えるため、人一人居ない無生物の世界をひたすら線的に進んでゆく。


キリスト教の教会は何処も人間だったものでいっぱいだねと、ある日男は呟いた。
不思議だね、仮に死に臨んだとして、果たして君が最後に神に祈ることを望む?
少なくとも僕なら末日に神道の神に祈ったりはしない、
世界が終わろうというとき、我々にも神々にも他にする事があるだろう。

それは我々の神が他人だからだと答えて女は囁いた。


一秒に百平方キロメートルずつ滅んで行くこの世界を、女と男は連れ立って駆ける。


★☆★



 昏迷し眠ったようにも、実は一睡もしなかったようにも感じられた春の目覚め。
 私がすっかり温くなったタオルを退けても、一切は闇だった。苦労して起き上がり、辺りを見回す。何も見えない。

「うん」

 頷いて見る。 取り合えず、一晩寝ても何も解決しなかったらしい。

 血と糞尿の異臭、そして啜り泣きが空間に満々て、悪夢的危機は夢でも妄想でもなく確かに其処に在った。

 今は朝なのか昼なのか夜なのか、どの教室なのか教室のどこなのか、何をするべきなのか何をしたいのか、課題・疑問が不安を煽り立て、酷く惨めな気分になる。朝から心が折れそうだ。

「あれが熱に浮かされて見た幻覚でなければ、私たちは昨日校舎まで帰りつけたはず」

 独り言を呟くのは経験的に、こういう非日常に放り込まれた時は何か、どんな小さなことでも取っ掛かりを見つけることが助けになる事を知っているからだ。例えば… そう、世界の変容にも左右されない自分自身の確実性連続性の確認とか。紙に現状を書き出していったり、大事なことを声に出して挙げたりすることは精神の落ち着きを取り戻し、自分のパフォーマンスを確認する効果がある。

「私は渡辺壬邦で此処は教室。趣味は陶芸とパソゲー、好きなアーティストはBoA。家族構成は下宿してる従妹と犬と両親と犬と母親とよろしく!」

 ……自分が軽く錯乱していることは分かった。

「クラスの皆で修学旅行中、なぞの病気で皆次々と血の涙を流して失明してって、とうとう私まで血涙と高熱で倒れて、クラス一丸錯乱して家を目指して、学校まで行き着いたところでこれは体育のマットかな?クラスかどっかで寝かされて夜を明かした、と。ふうん?」
「凄いことに成ったなあ、おい?」
 私は耳元のささやきを無視する。
「音樹! 居る!?」
「うん!」
彼の声はしゃがれ切っており恐らくは愚かにも為す術なく泣いていたのだろうが、返事の有ったことは私を酷く安心させた。
「音樹! 状況は!?」
「目が、目が見えないようっ」
「そんなこた……」酷い怒りに駆られそんなこたどうでもいいんだよと怒鳴りかけたが、危ういところで飲み干した。音樹は私が倒れた時点ですでに失明していた。
「知ってるよ!……」深呼吸をして乱れた気を落ち着ける。

 ひいい、いいひひい、ひいぃえひひいぃ
 ああ、あああああ、ああああああああああああああっ!
 いやだ、いやだ、だれか、いやだ、いや、ああ、だれかあぁぁあっ
 ごふっ、ふ、が、がはぅ、はがは、あああぐぐぐぐっ!

 教室が、怒号と悲鳴に充満している。
 夜通し上のような呻喘慟哭に悩まされていた記憶は無い、すると私はやはり眠って居たのだろう。
「……音樹、今からそっちに行くから、話し続けろ」
「話すって、何を……」
「何でもいいっての九九でも数えてろ!!」
「ひ!」
 友人を怒鳴りつけて自分の不安を紛らわす、こんな弱さが私に有ったのか。私は酷くイライラしていて、恐ろしく恐怖していた。

 一々は一、一二は二・・・・・・
 
 怯え切っている。声で分かるよ、そう思いながら間に合わせのマットを這い降りる。
板張りの床に手を突いたその時。

(ぬちょりっ)
「(っひいっひっ!?)」
 
 おぞっとして振り離す。
 床が血で滑(ヌメ)っているのだ。途端、震えが来る。
 思わず悲鳴を上げた自分が腹立たしい。
 糞。私は、気が高ぶってるんだ。呼吸が、どんどん荒くなる。良くない兆候だ、パニックの発作を起こしたら失神してしまう。
 畜生! 神様・・・ 天にいます我らが父よ……

御名をあがめさせください。
御国が来ますように祈らせください。
御心に天が適うように地も又適いますように。
主がわたしたちの日々の糧を今日も与えられ、
わたしたちの罪を赦されますように。
主よ、わたしたちも人をゆるしますように。
わたしたちを誘惑におちいらせず、
悪からお救いくださいますように。

「アーメン 」
「壬邦(ミクニ)ちゃん!」
 音樹がしがみ付いて来た。
 人間の体温の感覚。ああ。
 息が、出来る。

「壬邦ちゃん、見えない!」
「ああ」
「目が、目が、見えないっ!」
「ああ!」

 私は考える。音樹をあやしながら。
 音樹は明らかに錯乱していたが、体温や反射は正常に思えた。私もまた酷く空腹だったが、不思議と体力はあまり落ちている気がしなかった。そういえば、あれだけあった熱も、音樹同様、引いている。
 胸ポケットに、ガムが入っていることを思い出す。一つ取り出し、手探りで銀紙を剥ぎ取って、食え、と音樹の唇に押し付けた。音樹が泣き止む。まるで子供だな。
「喉に詰らすなよ……」
 ガムを彼の口に押し込んで、咀嚼を始めたのを確認し、抱き締めた。彼の強張った筋肉の感触に、そういえば私たちはまだ子供だったなと思い出す。
「歯磨きガムだよ、歯にいいんだ……」
「……」
「キシリトールってフィンランドの発明なんだよ、知ってた? 国を挙げて食後のガムを普及させて、虫歯抑止に成功したんだ」
「……」



 そもそも旅行を『病欠』した幸運な旧友達を除けば、大内哲美が、最初だった。
 たまたま生理痛に重なったお陰で、発見が遅れた。彼女は初日すでに落涙していたらしい。申告しなかったのは、単純に恐ろしかったからだろう。
 修学旅行三日目には、海馬良秋、李日美、瀬戸川里奈、そして日比野音樹が発症し、翌朝には其の全員が失明し、更に私を含む数人の落涙が始まった。
 八日間が予定され九州をまわる筈だった私たちの旅行は恐慌状態のうち終わりを告げ、恐らく五日目の今日、私たちは仙台郊外、第四高等学校に帰還している。

「健常者は!?」私は、怒鳴ってみた。「居るんでしょう、目の見える奴は!? 返事をして! 居ないの!?」
 反応さえなかった。
 誰も、啜り泣きを止めようとさえしない。
 本当に居ないのか、居ない振りをしてるのか、はたまた逃げたのか。
 私なら絶対確実に三つ目の選択肢を採用していただろう。伝染病かも分からない奇病に冒された級友一同の世話? 愉快なアイディアだな、震えが来るぜ。
 そういえば、私たち一行には立場上そうした義務を負わざるを得ない気の毒な大人達が居たんだった。
「先生!」 
「先生、返事をして!」



浮浪霊

メモ 国家擬人化 日露戦争朝鮮争奪戦編 他
2010/05/16(Sun)

 
「先生!」 沈黙して待つも、応えるは泣き咽ぶ声ばかりだった。
「先生、返事をして!」

 啜り泣き。部屋一杯の恐怖の声。

「先生! うう、 あああっ! 応えてッ!」

 不思議なことだが、注意を引こうとより惑乱した声を発すると、実際の精神状態も呼応して均衡が乱れるようだった。
 音樹のしがみつく手に力が入る。
 私は気分が急速に高揚していくのを感じた。
「応えて! 応えろ! 畜生、主よ!」
 先生! かわいそうな私を助けて! 
「先生ッ!」
 先生!!
「せんせえっせんせ……」
 
 
「居ないよ」


 静かな声だった。気持ちに水を注され、私の高揚は宙に浮いた。
 居ないのかよ。この声は……。
「真紀さん…… いや、日美(イルミ)さんかな」
「後者」
「日美さん、一応聞いておくけど、目は見える?」
 私の問いはハッ、と一笑に付された。私もばかばかしくなって笑いだす。訳も無く無性におかしくなり、しばらく二人してゲラゲラ笑った。私にしがみ付く音樹の手に力が込もる。
「聞いてみただけだよ。先生は居ないの?」
「助けを呼びに行った」
 音樹が歓声を上げる。
「救援が来るのっ?」
「助け? いつ? どこに?」
「馬鹿だな、逃げたんだよ」訝しげな私の問いに、日美は事も無げに告げる。「一時間以内に帰って来るとか言ってたな、三時間くらい前に」
 裏切り?
 そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。多分、どこかで迷っている可能性のほうが高いだろう。
「何か言ってた? 此処を動かないようにとか」
「それらしきことは言ってたな」
 彼女は苛立ちを隠し切れて居なかったが、それは私に向けられたものではないようだった。
「日美さんは今何をしていて、これからどうするつもり? 何であれ、この状況で待つ意味など高が知れていると思うけど」
「壬邦ちゃん……」音樹が上ずった声で口を挟んでくるが、日美に遮られる。
「私は帰る」日美は言い放った。「もう十分待ったし、どっかの教室に転がってる譲(ユズル)と吉名(ヨシナ)を回収して出発する。親が心配だ。私は帰る」
 口調で強がっては居ても、やはり彼女も相当に参っているようだ。
「譲君?」
「帰る方向が同じなんだ」
 銀(シロガネ)譲君は、確か私と同じで河内の方に住んでいた筈。
「三人とも、普段はバス通学?」
「? ああ」
「ひょっとして、蒼葉区のほうに?」
「ああ。ひょっとして」
「そう、私も。ただ、自転車通学」
「っ!! 道、分かる!?」
「大体なら」
「是非、着いて来て! ええと……!」
「渡辺壬邦と日比野音樹」
「まってよ」
 音樹が口を開いた
「どうやって? 手探りで? 家まで自転車で何十分もかかるんだよ?」
「けど帰らなくちゃ、従妹が待ってるから。腹拵えをして出発する」
「……はっはは、ナイスジョーク。どうしたの壬邦ちゃん、いつからそんな冗談覚えたの」

 ほざいてろ。

「おい悪魔、お前も見えないんだよな」
「残念ながら。記憶頼みになるね」
「……壬邦ちゃん、誰と話してるの?」
「うん、じゃあ音樹、私は行くから。好きなように生きて、好きなように死ぬと好いよ」
 日比野音樹は絶句した。
「そうと決まったら、日美さん、急ごう。他の教室も見て回って、目的地が同じ連中を集めようよ。ほら、三人寄れば文殊の智恵ってね。お弁当の残り、一緒に食べてよ」
「船頭多くして船山に登るとも言うけどね。お弁当は受け取れないよ、有り難いけどとても」
 あたしはじゃあね音樹、と言い残して去ろうとする。
 ついて来い。
 ついて来てくれ。
 
 音樹は、狂ったようにしがみ付いて来た。

「壬邦ちゃん……! 僕も、僕も行く、どうか……!」
「……なに言ってんだよ、助けが来るんだろ?」
「だってこ、来ないかも・・・!」

 私は救援の来る可能性についてもう一度考えてみる。

 だがもう一度考えてみても、平時であれば一人が目に激痛を覚えただけでも数分でやってくるであろう救急車に、数十人の急患が一晩放置されているこの事態は異常極まると言って差支えない気がした。

「まあ、来ないだろうねえ」

 急に辺りが静まり返る。何時の間にか、私たちの会話にみなが聞き耳を立てていたのだろう。
 異様な沈黙に戸惑って、私は自分の失言に気付いた。
 救援が、来ない。
 それは、つまり……?

「…行こう、日美さんもほら」
「……ああ」
 私は日美に声をかけ、音樹の手を掴み引っ張り促して急いでその場を離れた。そそくさと、盲者が這って急げる限りに。
 唐突な、死の予感に追われて。


★☆★


なんか今日占い師に気になることを言われたんだが。
悪い冗談みたいな手相ってどんな手相だよ


★☆★


「なに愛欲に漲ってんだ」


★☆★


人間のくずって何? 定義しろ


★☆★


文化なんて一世代で挿げ替わってしまうんだ


★☆★


多彩さは金。

人間社会は、たとえ北朝鮮のように貧困を極めても存続していけるが、北欧のように頂点に達することも有る。
全球化が完成すると、世界的な黄金期を迎えるかも知れないが、全面的な低迷が長期保存されてしまう(konzelválódik)可能性も有る。

複数種類の制度が競合していれば、特定の指向が駆逐されてしまう可能性を下げることが出来はするが……

ただ、人間の場合異文化並存てダイレクトに殺し合いに発展しちゃうからそうも言ってられないんだよね。


★☆★


文化の原理主義的継承の志向、自己愛的文化観


★☆★


「全く、女冥利に尽きる話だな」私は半ばやけくそ気味にそう呟き、キセルを離してイライラと煙を吐いた。「結構な修羅場じゃないか」

 私を挟み、武装した二国が臨戦している。

「手を引け」漕艪(ロシア)は嗤っていた。嬉しそうに蠱惑的に嘲笑っていた。「闘っても何もいいことはない。死ぬだけだ。挽き潰れて死ぬだけだ、日本国(ヤポニヤ)。
 高麗(コレヤ)は誰にも渡さない。彼女は海だ、僕の、僕だけの海だ。僕にはもう彼女しか居ないんだ。手を引け、日本国」

私が見止めるに、漕艪と名乗る少年の携えるその剣は、まるで鉄骨だった。
腿ほども厚く背丈より長く、それを子供が軽々と掲げる様は思うに全く正気の沙汰ではなかった。日中韓の三国がかりでも果たして持ち上がるだろうか。
なぜだ。あれはまだあどけない子供ではないか。この傷だらけの美少年が微笑み、
あの剛剣を一振りするだけで、一国が肉になって転がるだろう。 

この世の光景とは思えない。現実感が急速に引いていく。
極客観的に、これは亡国の危機だった。

「高麗よ」
「聞こう」
 漕艪(ロシア)に呼びかけられ、私は努めて平静を装い答えた。一瞬何もかも逃げ出して逃げ出したい思いに駆られたが。
「僕とおいでよ。
 東洋を離れ、没日郷(ヨーロッパ)に加わるんだ。楽しいことが一杯だよ」
「もう一声」
「シベリアやクリームみたいに豊かな土地になれる」
「 う わ あ 」
 よし、パス。日本が何か言いたそうなので話を促す。
 もじもじしていた日本だが、はにかみながら口を開いた。

「ねえ姉様」
「言ってみろ」

綺麗な国だな。性別とかあんのか? 

「…俺はね、姉様が居ないと生きていけないんだ。姉様が絶対的に必要なんだ。姉様は俺の生命(イノチ)なんだ。姉様の為なら死ねる。姉様が居ないとだめだ。
 俺と一緒になってよ。大事にするよ。可愛がるよ。愛してる、愛してるんだ、姉様。。。」
(きゅん)「日(イル)……お前って奴は。。。 ……念のため聞いておくけど、私のメリットは?」
「逆らったりしなければ殺したりはしないよ」
「ひいいッ!?」
「日本この野郎、そんな甘言で高麗を惑わすなんて」
「甘言!? お前私に何する気だよ!?」
「逆らわなくても殺してみせる(キリッ。」
「アホかぁああぁああぁああぁぁぁッ!!!」
 もうだめだこいつら、誰か早く何とかしてくれ!
 両国が私を挟んで互いににじり寄り始め、私は彼らが笑っているのに気付く。
 日艪間に渦巻く緊張が強く強く張り詰めてゆき、思わず身が竦む。
 背後で日本がぼそりと呟くのを聞いた。

「切断してやる」

 日本が全く唐突に抜刀し一閃、漕艪の体を覆う傷が又一つ増え、血肉が飛び私の顔を濡らす。
 日本が駿足で距離を詰め、漕艪は血まみれでゲラゲラ嗤いながら例の大剣を振り上げる。


「泳いで上げる! 泳いで上げるよ、高麗! きゃははははっ!」
「失せ消えろ露助、姉様は俺が飼う」

 狂笑する両国が斬り合いぶつかり合い、
 戦争が、始まった。
 

浮浪霊

メモ
2010/05/17(Mon)

 
ねえ、僕が沢山詩を詠いて、
それを聴いた貴方の心がひび割れたり潤ったりすれば、
貴方は僕を愛してくれるの?

浮浪霊

メモ
2010/05/18(Tue)

 
あたしは最近此処で誰へとも知れず、
いや、むしろだれかれ構わず求愛している気がする。

まあ、そう言う時期なんだろう。
 
★☆★

母「黎都、お前癌だってさ。良かったね、小説の肥しになるよ」

★☆★

駄目だ、出来ない
 死は、私の能力を超えてるんだ

★☆★

 首筋に歯を立てられ、娘は私を酷く突き放した。私は驚き、また腹を立てた。彼女の頬を張った。正気に戻すためだった。黎都は崩れ落ちた。わざとらしいものだった。

「二度と殴るな 畜生 どうして分からないんだ」

 怒鳴りだす娘に、私は酷く驚き、また彼女が泣きだしたのに気付いて、ギョッとした。
 宥めるべきだろうと考え、いいことを思いつく。だが、私が手を伸ばすと、黎都は悲鳴を上げた。

「触るな 其処に触るな!」

 恐怖を偽る黎都に私は動揺し、また怒りに駆られ吠え立てた。糾弾するため、彼女を罵った。恥ずかしくないのか私に申し訳なくはないのか何様のつもりかまるで淫売だお前が悪いんだお前がお前だけがお前が私を愛そうとしないから!

 すると彼女は頬を押さえて絶叫した

「僕を否定するな、被害者ぶるんじゃない 罵詈も要らない 淫売呼ばわりを止めろ!」

 

「僕の愛が欲しいなら」

 

★☆★

畜生 誰か殺せ うちの母親を殺せ
 嗚呼
嗚呼ッ!

浮浪霊

メモ 壱號驗體の譚
2010/05/21(Fri)

 
やだなあ、友達が怖い。
会ったり、一緒に遊んだりするのが怖かったり億劫だったり、嫌だ。好きだって言ってくれる人たちなのに。

誰にでもいい顔して、誰とでも友達になって、
でもそのくせ全然心から好いてない。

時々、何処ででもすぐに友達が出来る自分が、
旅先で半日居ただけなのに友達が出来てしまう自分が
キモチ、悪い。

★☆★


『實驗用球體一號【天土】の譚』
(ジッケンヨウキュウタイイチゴウ【あまつち】のはなし)


 ある徹夜明けの土曜の朝のことだった。

 昨日発売の市街神話ラグナリスがキリのいい所まで進んだので、一つ黄色い太陽でも拝んでやるかと考えたあたしが伸びをして二階自室のカーテンを引くと、庭に下がる桜の木の枝に少女が引っかかって泣いていた。

 ヒュー♪

 あたしは感激する。そうそう見れるものじゃない。
 彼女は全身を擦り傷だらけにして満開の華にしがみ付き、実に情けなさそうにべそを搔いてガタガタ震えていた。私と目が合うと外見に似合わない嗄れ声でのたまってくれた。

「死に損った」
「そのようだね」
「畜生」
「うん」
「助けて」

 さて、どうしたものか。

 しばらく考えていると、ビユウと突風が吹いて桜を揺らし花を散らし、飛び降り自殺に失敗したらしい少女はぎやああと悲鳴を上げた。

 どうも余り宜しくない。このままじゃ花も少女も長くはなさそうだ。儚く散るのは花の運めだからいいとして、もう一方の少女は天の奈落へと真っ逆さまである。
 だが好都合なことに、窓と少女は二メートルも離れていない。飛び移らせるのは無理な相談でも、何とか成りそうだ。 


「しっかり掴まってろよー」
 
 一階に上がり、寝室の押入れから練り紐を持って下りてくる。

「まだ生きてるかー」
「早く助けろおおっ!」
「ほれ」

 直径一センチメートルくらいあるぶっとい練り紐の一方を投げ与える。

「どうするの?」
「桜の枝の余り細くないところにしっかりと縛り付けたまえ」
「付けた!」
「んじゃ、引っ張るぞー。えっせ、ほいせ」
「お、おお、しなる、木がしなる、やめれ怖い超怖、と、あれ?」
「まだ動くなよー」
 すぐ少女を載せた樹枝が窓の所まで引き寄せられる。
 私は紐のもう一方をベランダの柵に結びつけた。
「いらっしゃーい」
 一丁上がりだ。私は少女を迎え入れる。私の伸ばした手を、彼女はすこし躊躇い気味に取った。役得とばかり部屋に抱き入れる。

 可愛い子だった。


※※※


「風呂沸かしてるよ、寒かったろ」
「寒かったよう」

 少女は温めたミルクを切った口でひいひい言いながら飲んでいる。肺炎とかにならなきゃいいが。
 地から降ってきた彼女は名を一城三神(イチジョウミカミ)と言い、高校三年生十七歳、私と同い年であった。
 漫画のような話だが、大した外傷は無かった。まあ目に見える受傷が無くても頭とか打ってて今に死ぬかもしれないが。

「災難だったね先輩、風が強くて」
 でなけりゃもっと上手く墜ちて行けたろう。
「次が有るさ」物置から引っ張り出してきた季節はずれのストーブに嚙じり付き、胡坐を搔き罰当たりなことを呟いてズズっとマグカップを啜る。
 三神は可愛い子だった。まつげが長く顎が細く目付きが鋭く、私より大分大人びて見える。長い髪がよく手入れされていたが、色々なものが絡まってて見る影も無かった。
 体中引っかき傷や切り傷で一杯で、血だらけだった。其のうち幾つかは、恐らく痕が残るだろう。
「月を目指して?」
「よく分かるね」
「社会問題だよ。何処から飛んだの」
「天蓋公園から」
「また派手にやったね」
「帰りたくないなあ」

 黙ってしまった。
 
「先輩は可愛いね」
 手持ち無沙汰なので、口説いてみる。少女に何だ何の出し物だ的な目で見られて少々照れた。まじまじと見詰められ、
「まてよ、私あんたの事知ってるぞ」
 少女は顔を顰めた。
「お前、あれだろ。同性愛で有名な一年坊」
「どうせなら美人で有名になりたかったものだけどね。にわかレズの笹谷禱(ささやいのり)で御座います、以後お見知りおきを」
 私は肩を竦める。ちなみに春に進級しました。
「私もえらい処に舞い込んだもんだ」
「ご挨拶ですね。風呂入って来い」
「……凄いな、入る前から沁みる」
「背中流そうか」
「馬鹿! いや、待てよ」足を止め、振り返る。「週末、置いてくれるなら考える」

 あたしは笑った。冗談だと思ったのだ。
 
 

浮浪霊

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