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防塁跡
2015/01/16(Fri) 文永十一年 ー 神無の月 十九日 津波のごとく 元の軍団 今津の浜に 押し寄せる 朝野の論 喧然たり 征伐の船 幾百艘(そう) 火の国の党 意気遠大にして 自ら進みて わが土を護る 大敵強く わが軍また剛(つよ)し 勝負一決なく 進退数十里 いつか天空怒りて 颱風あり 巨艦沈み 将兵(へい)また伴侶(とも)なりと 万有四方に 流転し 光遠(こうおん)ここに 幾星霜 秋(いま)旅人 幻想を胸に 今津(この)浜辺に 起(た)つ 空 紺碧にして 海原 青し 玄界灘 波白く 砂丘 静かなり 幔幕の緑 松濤の 隅を飾る 左手(ゆんで)に 遺跡あり 防塁の 玄武岩 延々 長里の畷 二十粁(キロ) 起点なりき 横笛を吹く 女人あり 刈り干し切りを 奏(うた)う 妙なる 琴の音(ね)あり 荒城の月 天に舞う 野点(のだて)の人 寂々(じゃくじゃく)とゆく 天女の 歩みなるか 袴正装の 弓人 厳かに 神技を射てり 転(うた)た 防塁 秋の陽 つよし 人流涕(りゅうてい)なく 火燃えず 老松 歴史に静かなり おお 旅人征きて 一幅の絵に 動く (1970.10) 詩 山本伸一 レモン
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