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メモ 国家擬人化 日露戦争朝鮮争奪戦編 他
2010/05/16(Sun) 「先生!」 沈黙して待つも、応えるは泣き咽ぶ声ばかりだった。 「先生、返事をして!」 啜り泣き。部屋一杯の恐怖の声。 「先生! うう、 あああっ! 応えてッ!」 不思議なことだが、注意を引こうとより惑乱した声を発すると、実際の精神状態も呼応して均衡が乱れるようだった。 音樹のしがみつく手に力が入る。 私は気分が急速に高揚していくのを感じた。 「応えて! 応えろ! 畜生、主よ!」 先生! かわいそうな私を助けて! 「先生ッ!」 先生!! 「せんせえっせんせ……」 「居ないよ」 静かな声だった。気持ちに水を注され、私の高揚は宙に浮いた。 居ないのかよ。この声は……。 「真紀さん…… いや、日美(イルミ)さんかな」 「後者」 「日美さん、一応聞いておくけど、目は見える?」 私の問いはハッ、と一笑に付された。私もばかばかしくなって笑いだす。訳も無く無性におかしくなり、しばらく二人してゲラゲラ笑った。私にしがみ付く音樹の手に力が込もる。 「聞いてみただけだよ。先生は居ないの?」 「助けを呼びに行った」 音樹が歓声を上げる。 「救援が来るのっ?」 「助け? いつ? どこに?」 「馬鹿だな、逃げたんだよ」訝しげな私の問いに、日美は事も無げに告げる。「一時間以内に帰って来るとか言ってたな、三時間くらい前に」 裏切り? そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。多分、どこかで迷っている可能性のほうが高いだろう。 「何か言ってた? 此処を動かないようにとか」 「それらしきことは言ってたな」 彼女は苛立ちを隠し切れて居なかったが、それは私に向けられたものではないようだった。 「日美さんは今何をしていて、これからどうするつもり? 何であれ、この状況で待つ意味など高が知れていると思うけど」 「壬邦ちゃん……」音樹が上ずった声で口を挟んでくるが、日美に遮られる。 「私は帰る」日美は言い放った。「もう十分待ったし、どっかの教室に転がってる譲(ユズル)と吉名(ヨシナ)を回収して出発する。親が心配だ。私は帰る」 口調で強がっては居ても、やはり彼女も相当に参っているようだ。 「譲君?」 「帰る方向が同じなんだ」 銀(シロガネ)譲君は、確か私と同じで河内の方に住んでいた筈。 「三人とも、普段はバス通学?」 「? ああ」 「ひょっとして、蒼葉区のほうに?」 「ああ。ひょっとして」 「そう、私も。ただ、自転車通学」 「っ!! 道、分かる!?」 「大体なら」 「是非、着いて来て! ええと……!」 「渡辺壬邦と日比野音樹」 「まってよ」 音樹が口を開いた 「どうやって? 手探りで? 家まで自転車で何十分もかかるんだよ?」 「けど帰らなくちゃ、従妹が待ってるから。腹拵えをして出発する」 「……はっはは、ナイスジョーク。どうしたの壬邦ちゃん、いつからそんな冗談覚えたの」 ほざいてろ。 「おい悪魔、お前も見えないんだよな」 「残念ながら。記憶頼みになるね」 「……壬邦ちゃん、誰と話してるの?」 「うん、じゃあ音樹、私は行くから。好きなように生きて、好きなように死ぬと好いよ」 日比野音樹は絶句した。 「そうと決まったら、日美さん、急ごう。他の教室も見て回って、目的地が同じ連中を集めようよ。ほら、三人寄れば文殊の智恵ってね。お弁当の残り、一緒に食べてよ」 「船頭多くして船山に登るとも言うけどね。お弁当は受け取れないよ、有り難いけどとても」 あたしはじゃあね音樹、と言い残して去ろうとする。 ついて来い。 ついて来てくれ。 音樹は、狂ったようにしがみ付いて来た。 「壬邦ちゃん……! 僕も、僕も行く、どうか……!」 「……なに言ってんだよ、助けが来るんだろ?」 「だってこ、来ないかも・・・!」 私は救援の来る可能性についてもう一度考えてみる。 だがもう一度考えてみても、平時であれば一人が目に激痛を覚えただけでも数分でやってくるであろう救急車に、数十人の急患が一晩放置されているこの事態は異常極まると言って差支えない気がした。 「まあ、来ないだろうねえ」 急に辺りが静まり返る。何時の間にか、私たちの会話にみなが聞き耳を立てていたのだろう。 異様な沈黙に戸惑って、私は自分の失言に気付いた。 救援が、来ない。 それは、つまり……? 「…行こう、日美さんもほら」 「……ああ」 私は日美に声をかけ、音樹の手を掴み引っ張り促して急いでその場を離れた。そそくさと、盲者が這って急げる限りに。 唐突な、死の予感に追われて。 ★☆★ なんか今日占い師に気になることを言われたんだが。 悪い冗談みたいな手相ってどんな手相だよ ★☆★ 「なに愛欲に漲ってんだ」 ★☆★ 人間のくずって何? 定義しろ ★☆★ 文化なんて一世代で挿げ替わってしまうんだ ★☆★ 多彩さは金。 人間社会は、たとえ北朝鮮のように貧困を極めても存続していけるが、北欧のように頂点に達することも有る。 全球化が完成すると、世界的な黄金期を迎えるかも知れないが、全面的な低迷が長期保存されてしまう(konzelválódik)可能性も有る。 複数種類の制度が競合していれば、特定の指向が駆逐されてしまう可能性を下げることが出来はするが…… ただ、人間の場合異文化並存てダイレクトに殺し合いに発展しちゃうからそうも言ってられないんだよね。 ★☆★ 文化の原理主義的継承の志向、自己愛的文化観 ★☆★ 「全く、女冥利に尽きる話だな」私は半ばやけくそ気味にそう呟き、キセルを離してイライラと煙を吐いた。「結構な修羅場じゃないか」 私を挟み、武装した二国が臨戦している。 「手を引け」漕艪(ロシア)は嗤っていた。嬉しそうに蠱惑的に嘲笑っていた。「闘っても何もいいことはない。死ぬだけだ。挽き潰れて死ぬだけだ、日本国(ヤポニヤ)。 高麗(コレヤ)は誰にも渡さない。彼女は海だ、僕の、僕だけの海だ。僕にはもう彼女しか居ないんだ。手を引け、日本国」 私が見止めるに、漕艪と名乗る少年の携えるその剣は、まるで鉄骨だった。 腿ほども厚く背丈より長く、それを子供が軽々と掲げる様は思うに全く正気の沙汰ではなかった。日中韓の三国がかりでも果たして持ち上がるだろうか。 なぜだ。あれはまだあどけない子供ではないか。この傷だらけの美少年が微笑み、 あの剛剣を一振りするだけで、一国が肉になって転がるだろう。 この世の光景とは思えない。現実感が急速に引いていく。 極客観的に、これは亡国の危機だった。 「高麗よ」 「聞こう」 漕艪(ロシア)に呼びかけられ、私は努めて平静を装い答えた。一瞬何もかも逃げ出して逃げ出したい思いに駆られたが。 「僕とおいでよ。 東洋を離れ、没日郷(ヨーロッパ)に加わるんだ。楽しいことが一杯だよ」 「もう一声」 「シベリアやクリームみたいに豊かな土地になれる」 「 う わ あ 」 よし、パス。日本が何か言いたそうなので話を促す。 もじもじしていた日本だが、はにかみながら口を開いた。 「ねえ姉様」 「言ってみろ」 綺麗な国だな。性別とかあんのか? 「…俺はね、姉様が居ないと生きていけないんだ。姉様が絶対的に必要なんだ。姉様は俺の生命(イノチ)なんだ。姉様の為なら死ねる。姉様が居ないとだめだ。 俺と一緒になってよ。大事にするよ。可愛がるよ。愛してる、愛してるんだ、姉様。。。」 (きゅん)「日(イル)……お前って奴は。。。 ……念のため聞いておくけど、私のメリットは?」 「逆らったりしなければ殺したりはしないよ」 「ひいいッ!?」 「日本この野郎、そんな甘言で高麗を惑わすなんて」 「甘言!? お前私に何する気だよ!?」 「逆らわなくても殺してみせる(キリッ。」 「アホかぁああぁああぁああぁぁぁッ!!!」 もうだめだこいつら、誰か早く何とかしてくれ! 両国が私を挟んで互いににじり寄り始め、私は彼らが笑っているのに気付く。 日艪間に渦巻く緊張が強く強く張り詰めてゆき、思わず身が竦む。 背後で日本がぼそりと呟くのを聞いた。 「切断してやる」 日本が全く唐突に抜刀し一閃、漕艪の体を覆う傷が又一つ増え、血肉が飛び私の顔を濡らす。 日本が駿足で距離を詰め、漕艪は血まみれでゲラゲラ嗤いながら例の大剣を振り上げる。 「泳いで上げる! 泳いで上げるよ、高麗! きゃははははっ!」 「失せ消えろ露助、姉様は俺が飼う」 狂笑する両国が斬り合いぶつかり合い、 戦争が、始まった。 浮浪霊
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