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メモ 壱號驗體の譚
2010/05/21(Fri) やだなあ、友達が怖い。 会ったり、一緒に遊んだりするのが怖かったり億劫だったり、嫌だ。好きだって言ってくれる人たちなのに。 誰にでもいい顔して、誰とでも友達になって、 でもそのくせ全然心から好いてない。 時々、何処ででもすぐに友達が出来る自分が、 旅先で半日居ただけなのに友達が出来てしまう自分が キモチ、悪い。 ★☆★ 『實驗用球體一號【天土】の譚』 (ジッケンヨウキュウタイイチゴウ【あまつち】のはなし) ある徹夜明けの土曜の朝のことだった。 昨日発売の市街神話ラグナリスがキリのいい所まで進んだので、一つ黄色い太陽でも拝んでやるかと考えたあたしが伸びをして二階自室のカーテンを引くと、庭に下がる桜の木の枝に少女が引っかかって泣いていた。 ヒュー♪ あたしは感激する。そうそう見れるものじゃない。 彼女は全身を擦り傷だらけにして満開の華にしがみ付き、実に情けなさそうにべそを搔いてガタガタ震えていた。私と目が合うと外見に似合わない嗄れ声でのたまってくれた。 「死に損った」 「そのようだね」 「畜生」 「うん」 「助けて」 さて、どうしたものか。 しばらく考えていると、ビユウと突風が吹いて桜を揺らし花を散らし、飛び降り自殺に失敗したらしい少女はぎやああと悲鳴を上げた。 どうも余り宜しくない。このままじゃ花も少女も長くはなさそうだ。儚く散るのは花の運めだからいいとして、もう一方の少女は天の奈落へと真っ逆さまである。 だが好都合なことに、窓と少女は二メートルも離れていない。飛び移らせるのは無理な相談でも、何とか成りそうだ。 「しっかり掴まってろよー」 一階に上がり、寝室の押入れから練り紐を持って下りてくる。 「まだ生きてるかー」 「早く助けろおおっ!」 「ほれ」 直径一センチメートルくらいあるぶっとい練り紐の一方を投げ与える。 「どうするの?」 「桜の枝の余り細くないところにしっかりと縛り付けたまえ」 「付けた!」 「んじゃ、引っ張るぞー。えっせ、ほいせ」 「お、おお、しなる、木がしなる、やめれ怖い超怖、と、あれ?」 「まだ動くなよー」 すぐ少女を載せた樹枝が窓の所まで引き寄せられる。 私は紐のもう一方をベランダの柵に結びつけた。 「いらっしゃーい」 一丁上がりだ。私は少女を迎え入れる。私の伸ばした手を、彼女はすこし躊躇い気味に取った。役得とばかり部屋に抱き入れる。 可愛い子だった。 ※※※ 「風呂沸かしてるよ、寒かったろ」 「寒かったよう」 少女は温めたミルクを切った口でひいひい言いながら飲んでいる。肺炎とかにならなきゃいいが。 地から降ってきた彼女は名を一城三神(イチジョウミカミ)と言い、高校三年生十七歳、私と同い年であった。 漫画のような話だが、大した外傷は無かった。まあ目に見える受傷が無くても頭とか打ってて今に死ぬかもしれないが。 「災難だったね先輩、風が強くて」 でなけりゃもっと上手く墜ちて行けたろう。 「次が有るさ」物置から引っ張り出してきた季節はずれのストーブに嚙じり付き、胡坐を搔き罰当たりなことを呟いてズズっとマグカップを啜る。 三神は可愛い子だった。まつげが長く顎が細く目付きが鋭く、私より大分大人びて見える。長い髪がよく手入れされていたが、色々なものが絡まってて見る影も無かった。 体中引っかき傷や切り傷で一杯で、血だらけだった。其のうち幾つかは、恐らく痕が残るだろう。 「月を目指して?」 「よく分かるね」 「社会問題だよ。何処から飛んだの」 「天蓋公園から」 「また派手にやったね」 「帰りたくないなあ」 黙ってしまった。 「先輩は可愛いね」 手持ち無沙汰なので、口説いてみる。少女に何だ何の出し物だ的な目で見られて少々照れた。まじまじと見詰められ、 「まてよ、私あんたの事知ってるぞ」 少女は顔を顰めた。 「お前、あれだろ。同性愛で有名な一年坊」 「どうせなら美人で有名になりたかったものだけどね。にわかレズの笹谷禱(ささやいのり)で御座います、以後お見知りおきを」 私は肩を竦める。ちなみに春に進級しました。 「私もえらい処に舞い込んだもんだ」 「ご挨拶ですね。風呂入って来い」 「……凄いな、入る前から沁みる」 「背中流そうか」 「馬鹿! いや、待てよ」足を止め、振り返る。「週末、置いてくれるなら考える」 あたしは笑った。冗談だと思ったのだ。 浮浪霊
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