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めも
2010/05/27(Thu) 祈れ 私のお前への憎しみを記念して ★☆★ 「あのさ」大宮光華の注目と発声は高梁理之をぎくりとさせた。人の視線になれていない人間は人に見られているというだけで均衡を見失う。 「高梁さん、刺されてるよ」 「え」 「……だから。高梁さん、刺されてるよ。ここを。蚊に」 いかにもあきれたように、一語一語しっかりと発音しジェスチャーを交えながら、光華は説明する。高梁は動揺し視界さえ揺れた。 「ど、ありがとう」 「どうもありがとうだってさ」 取り巻きの友人たちに目配せすると、くすくすという笑いが起こり、そしてそれは嘲笑だった。 高梁の世界が赤くなる。息苦しさが絶頂に達する。 「げっ、飛んだ」 「あ」高梁の血で満杯になった蚊は、よろよろと大宮たちの方へと飛び立った。漂っていく昆虫。大宮が動き、拍音がして、高梁の心臓が跳ねた。 大宮の手のひらに、赤い染みのようなものが出来た。 「汚〜」へらへら笑うその顔を、高梁は反射的に張っていた。 ★☆★ 料理をするのが、好きだった。 最初、それはただの趣味だった。中学時代、私は家庭科の授業が得意で、家で練習したり、お弁当を作ったりするようになった。 作ったものはママにも食べてもらった。最初、文句を言いながらも食べていたママはやがて残すようになり、終には手も付けなくなった。それは私の腕前の上達と並行していた気がする。 自分で料理するようになってから、実質生野菜と肉だけだった以前の自分の食事が如何に貧弱だったかを知った。貧血と窒息感は間もなく無くなった。栄養不足が解消されたから。 中学三年の秋の終わりごろ、母は食事を出さなくなった。 「お母さんの作るものなんか食べたくないんでしょ?」それが彼女の言い分だった。彼女は食材用の金を私に与え、お互い自分のためだけに料理するようになった。 ★☆★ 井浦穂の実は友人が突如襲われたことに驚愕し、殆ど反射的な暴力を以って応えた。彼女の右拳にみぞおちを捉えられ、電流に貫かれたような感覚に打ちのめされ高梁は屈服する。 崩れ落ちる高梁を前に構え、大宮を後ろに庇いながらも、穂の実はしたことにもされたことにもひどくショックを受けていた。 「ちょっ、穂の実」 「うん。どうしよう。やりすぎたかな」 「いや、貴方は悪くない。多分私がまた無神経なことをやったんだ。どいて」 大宮光華は跪き空気を求め苦しんでいる高梁に近づき助け起こそうとしたが、出来なかった。 「高梁さん、大丈夫?」 ※※※ 机の下から這い出て溜息をつくと、私の八つある奇病の一つ、『耳を塞いでも 聞こえてくる声がある』が去ったことを確認する。 ※※※ 何度戻しても、嘔吐に慣れない。酷く惨めな気分に成るのは勿論、親の視線にも最近怒気が混じってきた気がする。 彼女の八つある奇病の一つ、『目覚めは反吐の華の香り』である。 深く息を継ぐ。\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\ 大抵は二時か三時ごろ、理之が憂鬱な夢に悩まされている頃合に発作に襲われ、 いやだな、この感じ。 まるで、世界中から見捨てられたような。 浮浪霊
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