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浮浪霊の日記

2010年05月






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詩人名 : 浮浪霊
詩人ID : strayghost
年 齢 : 23歳

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荒書
2010/05/22(Sat)

 
痛い人目指してます。


☆★☆

*読む前の注意
 作中に登場する呪文はモノホンの呪(アートク)なので、
 良い子の皆はくれぐれも声に出して読んだりはしないでね!
 変なものが召喚されても知らないよ!


※※※


「もう一人」
「もう一人」三人の反濡膏(アンチキリスト)が動いた。
「居るってのか!?」

 ばある之御名に於いて。
 暗い尽くす黒光が神殺しを呑み込んだ。


「ちッ、貧弱だ。やはり匈土は駄目だ、異教徒共奴」威誉(ロラン)が嘆息する。
「やっちまったよ!」
「けど、利点も有るわ。ばあるの喰闇も濡膏圏を外れると神性が滲んで中々神々しいじゃない。私は好きよ」擲鑓(フラン)がニコニコしながら応える。
「確実にパパに殺されるwwww」
「たしかに闇にいかづちが奔(ハシ)るのはいつ見ても好いものだ」
 立上る殺塵に戦列を組み、頭を抱え身体を捻らせ悶えている濡膏子(クリスティン)を挟んで、絶大な悪意を立上らせる威誉と擲鑓。邪悪な視線を朦朦と立ち込める埃壁の一点に集中している。彼女達には明らかに何かが見えていて、それを警戒していた。
「どうも面白くないな。異教の地で、殺神騎(ディーサイダー)を相手にこちらは僅か三人とは。おい濡膏子、いつまでも頭沸いてんじゃねえっ!」
「はひ!?」
「ヘリを離陸させて対人砲で援護して、でないと親父の手を煩わすまでもなくなるんだから!」
「来るぞ!」

 立ち込める煙碍のうち声がした。

「『無神/ Nincsen Isten』。」 = 神はい無い

 びりびりという劈(つんざ)くような異音と共に、ばあるの神域が端から端まで破れ去って破綻した。喰闇の呪われた食い残しが固定され中空に静止し、殺神騎を見失い反濡膏たちの視線が動揺する。

「無神論で来るか」
「好いわね、私大嫌いよ、無神論者」
「いくか?」
「いこう!」


 双子の反濡膏(アンチクリスティナ)の冒涜的な詠唱が始まった。


「「耳有らば呼びかけに応えよ、
  貴方を呼び召し来たれば祝い、
  見得ざる様に慄き拝もう!
  虚ろな御座に巣食う鬼、
  汝霊的太陽よ!
  仇(サタン)よ、眼(マナコ)よ、欲望よ! 
  張り上げよ! 轟け! 声を大にして叫べ!! 
  車輪を巡らせろ父ばある、この落魄(おちぶ)れた太陽め!!」」



    アーメン!!



 見得ない獣が前方一帯を根こそぎ食潰し、空に釘付けられていた塵芥が霧消するように呑み尽され視界が拓けた。更には既に先ほど一舐めされ剥き出しに成った地面がまるで液体が沸騰するように貪られてゆき、見る見る が下がっていく。 

「さすが」舌を巻く威誉。
「流石だね」あきれ返る擲鑓。

 その絶体絶命の死地の中心に、殺神騎は立っていた。
 ばあるの暴食する車輪さえ食い尽くせない煮え滾るような鬼気を漲らせ、今や台のようになった食い残しの地片の上に立っていた。

「『全失眼汝前/ Minden Vesszen a Szemed Elől』。」=汝眼前より全てはみ失われよ

 神殺しの呟きで周囲土壌が起爆するように弾け飛び、束の間一掃された煙碍が復元される。

「「っ撃(て)えッ!」」

 がらららら、という転がり落ちるような音と共に、対人バルカンが火を吐く。射線が二人の頭上を掠め、神殺しが一瞬露わになった辺りを抉り掃い、ガラスを引っかくような鋭い音が響いた。

『擲鑓! 威誉! 当ったか!?』
「命中だ。干渉音がした」
『打神撲了(Guta Ütné meg)、熱探知機がノイズで真っ黒だ!』
「だが仕留めては居ないわ、排神圏が健在だもの。クックッ」
『今ぜぶぶ之視界を詠唱完了、神域展開・神源捕捉…… おい! 神源が増えてるぞ!!』

 瞬間、威誉が旋回・後退・抜刀するのと同時に、真っ黒い塊がその一瞬前の位置を掠めていった。斬撃は硬い音を響かせ撥ねのけられ、彼女の肩からは血が迸りその口が歪み声が漏れた。
「ちッ……」
「威誉っ!?」
「ぃたぃっ・・・!」




浮浪霊

メモ 失明
2010/05/24(Mon)

 
 音樹の発案で自在箒が即席の白杖として代用されることになり、人数分が急いで取り揃えられた。もっとも、螺子で固定されているブラシ部分は如何しても取る事が出来ず、鬱陶しく汚らしい事この上なかったが背に腹は代えられない。
 驚くべきことだが、必要ないと言い張る者もおり、そういった連中を音樹は
「絶対、要るよ!」
 と一人一人説得し、最初こそ使い方が分からなかったが、結果的にそれに非常に助けられた。
  最初は帰り着くまでに死者が出るのではないかと思われた私達一行だが、今では時折互いの脛を大いに打ち付ける以外は大した不便もない。

 市の中心を突っ切り、蒼葉区を目指す − それには自転車で約50分掛かる距離を踏破する必要があり、そして我々は愚かだった。
 冷夏とはいえ五月末の日射を負った強行軍になけなしの体力は著しく消耗し、判断能力と理性は早くも擦り切れつつあった。
 蒼葉区居住の私達十六人の道程、やっと二十分の一くらい。
 今日中に帰り着く希望などとうに潰えたが、当初の目標だった仙台駅にさえ、とても辿り着けそうに無かった。
 今は一体何時なのだろう。日光の触覚が失せる気配の無い事から、日没が未だ遠いことが辛うじて把握できた程度だった。
 認めたくは無いが、クタクタだった。皆疲れは神経に来るようで、モップの柄で打たれたいや打たないでつかみ合いの喧嘩が何回もあった。
 数時間かけて、未だ私達は幾キロも踏破できていなかった。

「だめだ、普通に死ねる」前進は結局、日美(イルミ)の掠れた提案で停止された。「どっかに身を寄せて、日が暮れるまで待とう」

 私達は道すがらに位置するコンビニの一店を占拠・略奪し、腹ごしらえをした。
 コンビニには既に先客が居り、当然向こうも不法占拠なのだが、当然同じ災難を共有するもの同士、歓迎してくれる。

 喰うものを寄越し、休ませろ! 

 渡す物など無い! 他所を当たれ!

 本当だね、
 冗談じゃない。

 埒があかなかったが、結局数の暴力が事態を打開してくれた。向こうも血迷ったもので、十六人もの疲労と空腹で気の立った青年と掴み合ったりするものだから、あっとゆうまにフクロにされて店から放り出された。戦慄である。私達はごく端的に言って暴徒であり、そしてそれは恐るべきことだった。

 だが私は祈ることも忘れ、大いに喰い、そして飲んだ。

 音樹は一言も口を利かない。
 日が暮れるまでを皆が身を寄せ合い浅い午睡を取って過ごす中、私は音樹の肩を固く固く掻き抱き彼の体温を感じることで、窒息を免れた。彼はがたがた震えていた。私もまた家で待ってるはずの従妹を想って微笑った。見えない目を瞑って彼女の面影を目蓋の裏に浮かべながら、憔悴しただ機械的に句を紡ぐ。


 神よ、世のものを皆御創りになった母よ、
 祝し賜え用い賜え
 願わくば我々を、
 そして我々の食した糧々を

 一切は主の恵みによってこそ
 一切は御業が栄えの為に

 感謝のうちにこの日を終わります。

 貴方の愛(いつく)しみを忘れず、全ての人の幸せを祈りながら
 私達の主、救神(イエス)濡膏(キリスト)の御名に於いて


 正定(アーメン)

 


 ……そして私は眠り、涙を流す悪魔の夢を見た。

 

浮浪霊

めも
2010/05/25(Tue)

  
 
貴方はこのような所でさえ自分を偽らずには居られない

僕に嫌われるのはいやだから


★☆★


今死ね すぐ死ね 此処で死ね 独りで

それはきっと すばらしいこと 

(多分皆で生きることの、次くらいに)


★☆★


お前服を脱がせるのが下手だなあ。ほら、御開帳
文ちゃんは脱がなくていいの 男の裸なんて見たくないし (ええ!?)
どうかな?

(ソファに預けられた南の肢体は小さくて細っこくて酷く綺麗だった。僕は彼の肌がしなやかで白いことを上手く言葉に出来ず、柄にも無くどもって生唾を飲んだ)

俺、女の子には好評だからちょっと自信あるんだけど、ほら、男の子に見せるのは初めてだから 文ちゃんの気に入るといいんだけど

(彼は僕を手をとって引き寄せて、細腕を伸ばして手馴れた様子で僕の顔面というか頭部をゎわわわ、口とか手とか使って愛撫しだした。圧倒された)

男の子は勝手が分からないから悪いけどもう女の子と同じように扱うよ

(彼の肌はやや上気し、声も上擦っていた。南はいつもニコニコしてて今もそれは変わらないのだけれど、なんだかいたずらっぽい、明るい色気に染まっていた。為すがままは嫌なので、負けじと南のうなじに唇を寄せる。あは、と彼の口から笑いが零れた。無駄毛処理の徹底した南の足が僕の腰に回され、くすくす笑いながらしがみ付いてきた)

初々しいなあ。文ちゃんは可愛いね
好きだよ、文ちゃん
ごめんね


ごめんね、文ちゃん……



BGM :
柏大輔 - Coto

★☆★


試験前日には恐怖で反吐が出るくせに恋人の囁きに心は動かず
死の淵をさ迷っても亡びより試験のほうが怖いだなんて

どうせ苦しむなら、
愛とか夢とかに敗れて散りたかった。
同じ死病を患うなら、
生と死の意味とかに思い煩いたかった。

死ねばもうレポートを提出しなくて済むなんて思いたくて今日まで生きてきたわけじゃない

下らない 情けない 悔しい 嫉ましい 嗚呼

同じ
同じ生の苦界なら

僕は貴方のように、





 

浮浪霊

めも
2010/05/27(Thu)

 
祈れ 私のお前への憎しみを記念して


★☆★

「あのさ」大宮光華の注目と発声は高梁理之をぎくりとさせた。人の視線になれていない人間は人に見られているというだけで均衡を見失う。
「高梁さん、刺されてるよ」
「え」
「……だから。高梁さん、刺されてるよ。ここを。蚊に」
 いかにもあきれたように、一語一語しっかりと発音しジェスチャーを交えながら、光華は説明する。高梁は動揺し視界さえ揺れた。
「ど、ありがとう」
「どうもありがとうだってさ」
 取り巻きの友人たちに目配せすると、くすくすという笑いが起こり、そしてそれは嘲笑だった。
 高梁の世界が赤くなる。息苦しさが絶頂に達する。
「げっ、飛んだ」
「あ」高梁の血で満杯になった蚊は、よろよろと大宮たちの方へと飛び立った。漂っていく昆虫。大宮が動き、拍音がして、高梁の心臓が跳ねた。
 大宮の手のひらに、赤い染みのようなものが出来た。
「汚〜」へらへら笑うその顔を、高梁は反射的に張っていた。

★☆★

 料理をするのが、好きだった。
 最初、それはただの趣味だった。中学時代、私は家庭科の授業が得意で、家で練習したり、お弁当を作ったりするようになった。
 作ったものはママにも食べてもらった。最初、文句を言いながらも食べていたママはやがて残すようになり、終には手も付けなくなった。それは私の腕前の上達と並行していた気がする。
 自分で料理するようになってから、実質生野菜と肉だけだった以前の自分の食事が如何に貧弱だったかを知った。貧血と窒息感は間もなく無くなった。栄養不足が解消されたから。
 中学三年の秋の終わりごろ、母は食事を出さなくなった。
「お母さんの作るものなんか食べたくないんでしょ?」それが彼女の言い分だった。彼女は食材用の金を私に与え、お互い自分のためだけに料理するようになった。

★☆★

 井浦穂の実は友人が突如襲われたことに驚愕し、殆ど反射的な暴力を以って応えた。彼女の右拳にみぞおちを捉えられ、電流に貫かれたような感覚に打ちのめされ高梁は屈服する。
 崩れ落ちる高梁を前に構え、大宮を後ろに庇いながらも、穂の実はしたことにもされたことにもひどくショックを受けていた。
「ちょっ、穂の実」
「うん。どうしよう。やりすぎたかな」
「いや、貴方は悪くない。多分私がまた無神経なことをやったんだ。どいて」
 大宮光華は跪き空気を求め苦しんでいる高梁に近づき助け起こそうとしたが、出来なかった。
「高梁さん、大丈夫?」

※※※


 机の下から這い出て溜息をつくと、私の八つある奇病の一つ、『耳を塞いでも 聞こえてくる声がある』が去ったことを確認する。

 

※※※


何度戻しても、嘔吐に慣れない。酷く惨めな気分に成るのは勿論、親の視線にも最近怒気が混じってきた気がする。

 彼女の八つある奇病の一つ、『目覚めは反吐の華の香り』である。 深く息を継ぐ。\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

 大抵は二時か三時ごろ、理之が憂鬱な夢に悩まされている頃合に発作に襲われ、

 いやだな、この感じ。
 まるで、世界中から見捨てられたような。


浮浪霊

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